アプリケーションデリバリコントローラ(アプリケーションデリバリコントローラ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アプリケーションデリバリコントローラ(アプリケーションデリバリコントローラ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アプリケーションデリバリコントローラ (アプリケーションデリバリコントローラ)
英語表記
Application Delivery Controller (アプリケーションデリバリーコントローラー)
用語解説
アプリケーションデリバリコントローラ(ADC)は、Webサイトや業務システムといったアプリケーションを、利用者に対して安定的、高速、かつ安全に提供(デリバリ)することを目的としたネットワーク機器である。元々は、サーバーへのアクセス集中を防ぐために通信を複数のサーバーへ振り分ける「ロードバランサ(負荷分散装置)」が発展したものであり、その負荷分散機能を中核としつつ、セキュリティ強化や通信の最適化など、より高度で多岐にわたる機能を統合している。アプリケーションとそれを利用するユーザーとの間に設置され、両者間のすべての通信を仲介することで、アプリケーション全体のパフォーマンス、可用性、セキュリティを向上させる重要な役割を担う。現代の複雑なITシステムにおいて、快適で信頼性の高いサービス提供を実現するための司令塔のような存在と言える。
ADCの最も基本的かつ重要な機能は、ロードバランシング、すなわち負荷分散である。これは、単一のサーバーにアクセスが集中して処理が遅延したり、最悪の場合サービスが停止したりすることを防ぐため、受信したリクエストを複数のサーバーに設定されたルールに基づいて適切に振り分ける仕組みである。ADCは各サーバーの稼働状況や処理能力を常に監視しており、この監視活動をヘルスチェックと呼ぶ。ヘルスチェックによって、応答がない、あるいはパフォーマンスが低下しているサーバーを検知すると、そのサーバーを振り分け対象から自動的に除外し、正常に稼働している他のサーバーにのみリクエストを送信する。これにより、一部のサーバーに障害が発生した場合でも、システム全体としてはサービスを継続することが可能となり、高い可用性(システムが停止することなく稼働し続ける能力)を確保できる。
次に、サーバーの負荷を軽減し、パフォーマンスを向上させるための機能としてSSL/TLSオフロードがある。今日のインターネット通信では、セキュリティを確保するために通信内容を暗号化するSSL/TLSが広く利用されている。しかし、この暗号化と復号の処理はサーバーにとって計算負荷が高く、本来のアプリケーション処理能力を圧迫する一因となる。SSL/TLSオフロードは、この負荷の高い処理をサーバーに代わってADCが肩代わりする機能である。利用者はADCとの間で暗号化通信を行い、ADCがその通信を復号した後、暗号化されていない状態でサーバーへ転送する。これにより、サーバーは暗号化処理から解放され、アプリケーションの応答処理にリソースを集中させることができるため、システム全体の処理能力が向上する。
また、ADCはアプリケーションを保護するための高度なセキュリティ機能も提供する。代表的なものにWAF(Web Application Firewall)がある。WAFは、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃特有の通信パターンを検知し、不正なリクエストがサーバーに到達する前に遮断する。これにより、アプリケーションコード自体の脆弱性を補強し、情報漏洩やサイト改ざんなどの被害を防ぐ。加えて、大量の不正なトラフィックを送りつけてサービスを停止に追い込むDDoS攻撃を検知し、その影響を緩和する機能を持つ製品も多い。ADCがシステムの玄関口でこれらの脅威に対処することで、背後にあるサーバー群を安全に保護する。
さらに、利用者の体感速度を向上させるための通信最適化機能も備わっている。頻繁にアクセスされる画像やCSSファイルなどの静的なコンテンツをADC内部に一時的に保存しておくコンテンツキャッシュ機能は、同じリクエストが来た際に、サーバーへ問い合わせることなくADCが直接応答することを可能にする。これにより、サーバーの負荷を軽減すると同時に、利用者への応答時間を大幅に短縮できる。また、サーバーから利用者へ送信されるデータを圧縮して転送量を削減するデータ圧縮機能も、Webページの表示速度向上に貢献する。
このように、アプリケーションデリバリコントローラは、単なる負荷分散装置の枠を超え、SSL/TLS処理、セキュリティ対策、パフォーマンス最適化といった複数の機能を一つの機器に集約することで、アプリケーション配信の効率と品質を総合的に高める装置である。物理的なハードウェアアプライアンスだけでなく、仮想マシン上で動作するソフトウェア形式や、クラウドサービスとして提供される形態もあり、システムの規模や環境に応じて柔軟に導入できる。システムエンジニアにとって、このADCの役割と機能を理解することは、信頼性と性能に優れたシステムを設計、構築する上で不可欠な知識となっている。