アベイラビリティゾーン(アベイラビリティゾーン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アベイラビリティゾーン(アベイラビリティゾーン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アベイラビリティゾーン (アベイラビリティゾーン)
英語表記
Availability Zone (アベイラビリティゾーン)
用語解説
アベイラビリティゾーンとは、クラウドコンピューティングサービスを提供するベンダーが、システムを高い可用性で運用するために提供する、物理的に独立したデータセンター群の論理的な集合体を指す。これは、特定の「リージョン」と呼ばれる地理的領域内に複数存在し、互いに数キロメートルから数十キロメートル離れて配置されているのが一般的である。各アベイラビリティゾーンは、独立した電源、ネットワーク、冷却システム、空調設備などを備えており、一つまたは複数のデータセンターで構成される。この独立性により、仮に一つのアベイラビリティゾーンで大規模な停電や自然災害、ネットワーク障害などの問題が発生しても、他のアベイラビリティゾーンで稼働しているシステムには影響が及ばないように設計されている。システム全体における単一障害点のリスクを極限まで低減し、高いレベルでの耐障害性と事業継続性を実現するための基盤となる重要な概念である。初心者システムエンジニアがクラウド環境で堅牢なシステムを構築する上で、アベイラビリティゾーンを理解し、適切に活用することは不可欠である。
アベイラビリティゾーンの最大の目的は、システム障害や災害が発生した場合でも、サービスの継続性を確保することにある。この目的を達成するため、各アベイラビリティゾーンは厳格な基準に基づいて設計・運用されている。
まず、物理的な分離が徹底されている点が重要である。同一リージョン内であっても、アベイラビリティゾーン間は十分な距離が確保されており、局所的な災害(例:地域の停電、洪水、小規模な地震、火災など)が同時に複数のゾーンに影響を与える可能性が極めて低くなるように考慮されている。それぞれのゾーンは、独立した電力供給源(複数の変電所からの受電や自家発電設備)、専用の冷却システム、独立したネットワークインフラを持つ。これにより、一つのゾーンでこれらのインフラに障害が発生しても、他のゾーンのインフラは健全な状態を保ち、システムが稼働し続けることを可能にする。
アベイラビリティゾーン間の接続も、高可用性を実現する上で重要な要素である。これらは低遅延かつ高帯域幅の専用回線で相互接続されており、データ転送の速度と信頼性が保証される。この堅牢なネットワークにより、複数のアベイラビリティゾーンに分散配置されたアプリケーションサーバーやデータベース間で、高速なデータ同期や通信が可能となる。
システム構築においては、この特性を活かしてアプリケーションやデータベースを複数のアベイラビリティゾーンに分散配置することが一般的なプラクティスとなる。例えば、ウェブサーバーやアプリケーションサーバーのインスタンスを複数のゾーンにまたがってデプロイし、ロードバランサーを用いてトラフィックを分散させる構成が考えられる。これにより、一つのゾーンのインスタンスに障害が発生しても、ロードバランサーが健全なゾーンのインスタンスへトラフィックを自動的に振り分け、サービスの停止を防ぐことができる。
データベースについても同様に、プライマリデータベースを一つのアベイラビリティゾーンに配置し、そのレプリカ(スタンバイインスタンスやリードレプリカ)を別のゾーンに配置する構成が推奨される。プライマリデータベースが稼働しているゾーンに障害が発生した場合でも、自動フェイルオーバー機能によってレプリカが新たなプライマリとなり、データの整合性を保ちながらサービスを継続できる。これは、データの損失を最小限に抑えるRPO(Recovery Point Objective)と、サービス復旧までの時間を最小限に抑えるRTO(Recovery Time Objective)の目標達成に大きく寄与する。
アベイラビリティゾーンはリージョン内に複数存在する。例えば、あるリージョンが3つのアベイラビリティゾーンを持つ場合、ユーザーはこれら3つのゾーンのいずれか、または複数を選択してリソースを配置できる。リージョンは、国や大陸といった広範な地理的領域を表し、アベイラビリティゾーンはそのリージョン内に隔離された独立した実体である。リージョン間は地理的に遠く離れているため、リージョン間の通信はアベイラビリティゾーン間通信に比べて遅延が大きく、一般的に災害対策として利用される。一方、アベイラビリティゾーン間は低遅延であるため、リージョン内の可用性向上や耐障害性向上を目的としたシステム設計に適している。
このように、アベイラビリティゾーンは、クラウド環境で信頼性の高いシステムを構築するための基本的な構成要素であり、予期せぬ障害や災害からシステムを守り、サービスの継続性を確保する上で極めて重要な役割を担う概念である。システムを設計する際には、どのリソースをどのゾーンに配置するか、どのように冗長化するかを慎重に計画する必要がある。