HARファイル(エイチエーアールファイル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
HARファイル(エイチエーアールファイル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ハーファイル (ハーファイル)
英語表記
HAR file (エイチエーアールファイル)
用語解説
HARファイルとは、HTTP Archive formatの略称であり、WebブラウザとWebサーバー間で行われる通信内容を記録するための標準的なファイル形式である。このファイルは、WebサイトやWebアプリケーションのパフォーマンス分析、問題のトラブルシューティング、そしてセキュリティ監査など、多岐にわたる目的で利用される。基本的には、ユーザーがWebページにアクセスしてから表示が完了するまでの一連のHTTPリクエストとレスポンスのやり取りを、その詳細な情報とともに時系列で記録したログデータである。
HARファイルの内部構造は、人間にとってもプログラムにとっても判読しやすいJSON形式で記述されている。ファイル全体は一つの大きなJSONオブジェクトで構成され、その中には主に「log」というキーを持つオブジェクトが含まれる。この「log」オブジェクトがHARファイルの実質的な本体であり、バージョン情報、ファイルを作成したツール(ブラウザ名やバージョン)、そして通信記録の核心となる「pages」と「entries」という二つの重要な配列を保持している。
「pages」配列には、ユーザーが閲覧した各Webページの読み込みに関する情報が格納される。例えば、ページの読み込みが開始された時刻、ページのDOMコンテンツが完全に読み込まれたタイミング、ページ全体の読み込みが完了したタイミングなどが記録される。これにより、ページ単位での全体的な読み込み性能を評価することが可能となる。
一方、「entries」配列はHARファイルの中で最も重要な部分であり、個々のHTTPリクエストとレスポンスのペアに関する詳細な情報が一つ一つのオブジェクトとして記録されている。各エントリーには、リクエスト情報、レスポンス情報、そしてタイミング情報が含まれる。リクエスト情報には、メソッド(GET, POSTなど)、リクエスト先のURL、HTTPヘッダー、Cookie、送信されたデータ(フォームの入力内容など)といった、ブラウザがサーバーへ何を要求したかの全てが記録される。レスポンス情報には、サーバーからの応答を示すステータスコード(200 OK, 404 Not Foundなど)、HTTPヘッダー、レスポンスのコンテンツ本体のサイズやMIMEタイプなどが含まれる。
特にシステムエンジニアにとって有用なのが、各エントリーに含まれるタイミング情報である。これは、一つのリクエストが完了するまでの各フェーズに要した時間をミリ秒単位で詳細に記録したデータである。具体的には、DNSの名前解決にかかった時間、サーバーとのTCP接続を確立するまでの時間、SSL/TLSハンドシェイクの時間、リクエストを送信してからサーバーが最初の1バイトを返すまでの待機時間(TTFB: Time To First Byte)、そしてコンテンツ本体をダウンロードするのにかかった時間などが含まれる。これらの情報を分析することで、Webサイトの表示が遅い場合に、その原因がネットワークにあるのか、サーバーの処理にあるのか、あるいはコンテンツのサイズが大きすぎることにあるのかといったボトルネックを正確に特定することができる。
HARファイルの取得は、Google Chrome, Mozilla Firefox, Microsoft Edgeといった主要なモダンブラウザに標準で搭載されている開発者ツールを利用して簡単に行える。一般的には、開発者ツールの「ネットワーク」タブを開いた状態で対象のWebページを再読み込みし、記録された通信ログを右クリックして「HARとしてすべて保存」といったメニューを選択することでファイルとして出力できる。
このファイルは、Webアプリケーション開発におけるデバッグ作業において極めて強力なツールとなる。例えば、クライアントからサーバーへのAPIリクエストが期待通りに送信されているか、サーバーからのレスポンス内容が正しいかなどを、実際の通信内容を直接確認することで検証できる。また、ユーザー環境で発生した問題を開発者が再現する際にも役立つ。ユーザーにHARファイルを取得してもらうことで、リクエストヘッダーやCookieの状態などを含め、問題発生時の通信状況を正確に把握し、原因究明を迅速に進めることが可能になる。
ただし、HARファイルを取り扱う際には注意が必要である。ファイル内にはCookie情報やセッショントークン、フォームから送信されたパスワードや個人情報といった機密情報が含まれる可能性がある。そのため、第三者にHARファイルを共有する際には、事前に内容を確認し、機密情報が含まれていないか、含まれている場合はマスキング処理などを施すといった配慮が不可欠である。