L2TP(エルツーティピー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
L2TP(エルツーティピー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
レイヤー2トンネリングプロトコル (レイヤーツー トンネリング プロトコル)
英語表記
L2TP (エルツーティピー)
用語解説
L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)は、仮想プライベートネットワーク(VPN)を構築するためのプロトコルの一つである。インターネットなどの公共ネットワークを介して、離れた場所からプライベートネットワークへ安全に接続するための「トンネル」を作成する技術だ。特に、IPsecと組み合わせて使用されることが一般的であり、その場合はL2TP/IPsecと呼ばれ、堅牢なセキュリティを提供するVPNソリューションとして広く利用されている。
L2TPは、TCP/IPモデルにおけるレイヤ2、すなわちデータリンク層で動作するトンネリングプロトコルである。このレイヤで動作するという特性は、L2TPの大きな利点の一つだ。IPプロトコルだけでなく、PPP(Point-to-Point Protocol)をはじめとするさまざまなデータリンク層のプロトコルをカプセル化し、公共ネットワーク経由で転送することを可能にする。これにより、ユーザーはまるで直接プライベートネットワークに接続しているかのように、IPアドレスの取得や認証といったネットワークサービスを利用できる。
L2TPが提供する「トンネリング」とは、あるネットワークプロトコルのデータを別のプロトコルで包み込み(カプセル化)、ネットワーク上を転送する技術を指す。これは、公共の道路(インターネット)を使いながら、自分専用の秘密の通路(トンネル)を通って目的地へ到達するようなイメージで考えるとよい。L2TPの場合、プライベートなデータを公共ネットワーク(インターネット)を通じて安全に送信するために、そのデータをL2TPヘッダで包み、さらにUDPヘッダ(ポート1701)で包み、最終的にはIPパケットとして送信する。受信側では、この逆のプロセスでデータが復元され、あたかも直接接続されたかのように処理される。これにより、遠隔地のデバイスが社内ネットワークの一部であるかのように振る舞うことが可能となる。
L2TPのシステムは主に二つの役割を持つ要素で構成される。一つはL2TPアクセスコントローラ(LAC)で、これはユーザーからの最初のVPN接続要求を受け付ける役割を担う。通常、リモートアクセスサーバーやVPNルーターがこのLACの役割を果たす。LACは、受信したユーザーのデータをカプセル化し、もう一方の終端であるLNSへ転送する。もう一つはL2TPネットワークサーバー(LNS)で、これはLACから転送されてきたL2TPトンネルの終端となり、ユーザーを目的のプライベートネットワークに接続させる役割を担う。LNSは、L2TPでカプセル化されたデータを受け取り、それを復元してプライベートネットワークへ送り出す。LACとLNSの間で、L2TPはコントロールチャネルとデータチャネルという二種類のチャネルを確立する。コントロールチャネルはトンネルの確立、維持、切断といった制御情報をやり取りするために使われ、データチャネルは実際のユーザーデータを転送するために使われる。
L2TP自体は、データの暗号化機能を持っていない。認証機能についても、L2TPに先立って確立されるPPP接続に依存している。そのため、L2TP単体で利用する場合、インターネット上での通信内容が第三者に傍受されたり、改ざんされたりするリスクが残る。このセキュリティ上の課題を解決するために、L2TPは通常、IPsec(Internet Protocol Security)と組み合わせて使用される。IPsecは、IPパケットレベルでデータの暗号化と認証を行うプロトコルスイートであり、これにより通信の機密性(データの内容が漏洩しないこと)、完全性(データが改ざんされていないこと)、認証性(通信相手が正当な相手であること)を保証する。
L2TP/IPsecとして利用する場合、まずIPsecによってセキュアな通信経路(SA: Security Association)が確立される。このIPsecが提供する安全な「外側のトンネル」の中で、L2TPの「内側のトンネル」が確立され、ユーザーデータがL2TPでカプセル化されて転送される。これにより、L2TPのレイヤ2トンネリングによる柔軟性と、IPsecが提供する強力な暗号化・認証という二重のセキュリティが実現される。例えば、企業のリモートワーク環境において、従業員が自宅からインターネット経由で社内ネットワークにアクセスする場合、L2TP/IPsec VPNを構築することで、機密性の高いデータを安全かつ効率的にやり取りすることが可能になる。
L2TP/IPsecは、Windows、macOS、Linuxといった主要なOSや、多くのネットワーク機器で標準的にサポートされているため、互換性が高く導入しやすいというメリットもある。他のVPNプロトコルと比較すると、例えばPPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)もL2TPと同様にレイヤ2トンネリングを行うが、セキュリティ強度が低いとされており、現代ではL2TP/IPsecの方が推奨される。また、SSL/TLSベースのVPNプロトコル(OpenVPNやSSTPなど)は、ウェブブラウザが利用するHTTP/HTTPSポート(80番/443番)を利用するため、ファイアウォールを通過しやすいという特徴があるが、L2TP/IPsecも広く使われている確立された技術として、その地位を確立している。
L2TPは、レイヤ2での柔軟なトンネリング機能と、IPsecと組み合わせることで得られる堅牢なセキュリティを特徴とする、現代のネットワーク環境において不可欠なVPNプロトコルの一つだ。システムエンジニアとしてネットワークインフラを設計・構築する上で、L2TPの仕組みと特性を理解しておくことは非常に重要である。