NCU(エヌシーユー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
NCU(エヌシーユー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ネットワーク制御装置 (ネットワークセイギョウソウチ)
英語表記
Network Control Unit (ネットワークコントロールユニット)
用語解説
NCUは、Network Control Unit(ネットワーク制御装置)の略称である。主に1980年代から1990年代にかけて、コンピュータが公衆交換電話網(PSTN)を介してデータ通信を行う際に使用された装置を指す。その主な役割は、モデムと電話回線の間の接続を確立し、維持し、切断する一連の制御を行うことにあった。具体的には、コンピュータからの指示を受け、電話回線を掴み、相手先へダイヤルし、接続が確立されたことをモデムに伝え、通信が終了すれば回線を切断するといった、物理的な回線制御を自動で行う機能を持っていた。当時のデータ通信環境において、NCUはコンピュータが外部と通信するための重要なインターフェースの一つとして機能した。しかし、インターネットの普及と共に、ISDN、ADSL、そして光ファイバーといったデジタル通信技術が主流となるにつれて、その役割は終息し、現在ではほとんど使われることのない歴史的な用語となっている。
NCUの登場背景と必要性は、インターネットが一般に普及する前のデータ通信環境を理解することで明確になる。当時のコンピュータは、別のコンピュータやホストコンピュータとデータをやり取りする際に、音声通話のために整備された既存の電話回線網を利用することが一般的だった。このとき、コンピュータが扱うデジタルデータと、電話回線が扱うアナログ信号を相互に変換する装置としてモデム(MODEM: MOdulator-DEModulator)が必要とされた。
しかし、モデム単体では、電話をかける、電話に出る、回線を切るといった電話回線固有の操作を直接行うことはできない。これらの物理的な回線制御をコンピュータからの指示に基づいて自動化するために開発されたのがNCUである。NCUは、コンピュータとモデムの間に位置するか、あるいはモデムに内蔵される形で存在し、コンピュータからのATコマンドなどの制御信号を受けて、電話回線のオフフック(受話器を上げる状態)やオンフック(受話器を置く状態)の制御、ダイヤルトーンの生成、相手先電話番号へのダイヤリング、着信信号の検出、回線の話中状態や無応答状態の監視といった多岐にわたる機能を提供した。
具体的にNCUがどのような動作をしていたかというと、例えばコンピュータが遠隔地のコンピュータに接続してデータ通信を開始したい場合、コンピュータはNCUに対して特定のコマンド(例えば「ATDT電話番号」のようなダイヤル指示)を発行する。NCUはこのコマンドを受け取ると、電話回線を物理的にオフフック状態にし、指定された電話番号をダイヤルパルスまたはトーンで電話網に送出する。相手側で着信があった場合、相手側のNCUが着信を検出し、そのモデムを介して接続を受け入れる。両者の接続が確立されると、NCUはモデムに回線を引き渡し、モデムはデジタル・アナログ変換を開始し、データの送受信が可能となる。通信が終了すると、コンピュータからの指示を受けてNCUが回線をオンフック状態に戻し、接続を切断する。
NCUが提供した主な機能は以下の通りである。第一に、ダイヤル機能である。これはコンピュータからの指示に基づき、自動的に指定された電話番号に発信する機能だ。第二に、着信応答機能がある。電話回線への着信を検出し、自動的に応答してモデムに回線を接続する。第三に、回線接続・切断制御機能が挙げられる。これは電話回線の物理的な接続状態(オフフック/オンフック)を制御し、通信の開始と終了を管理する。第四に、回線監視機能がある。電話回線の状態(話中、無応答、発信音、応答音など)を監視し、その情報をコンピュータにフィードバックする。多くのNCUは、データ通信の信頼性を高めるためのデータフロー制御機能も一部持っていた。
このように、NCUは電話回線を利用したデータ通信において、物理層とデータリンク層の一部の機能を受け持つ、非常に重要な役割を担っていた。しかし、通信技術の進化に伴い、NCUの必要性は薄れていった。デジタル回線サービスであるISDNでは、電話回線自体がデジタル化され、モデムもデジタル信号を直接扱うTA(ターミナルアダプタ)へと変化した。ADSLや光ファイバー回線では、既存の電話回線とは異なる専用のプロトコルやインフラを使用するため、NCUのような電話回線制御装置は完全に不要となった。現代のネットワークでは、ルーターやスイッチ、ゲートウェイといったIPベースのネットワーク機器が通信を制御しており、NCUという概念は過去の遺物となっている。
システムエンジニアを目指す上で、NCUという用語に直接触れる機会はほとんどないだろう。しかし、NCUが果たした役割を理解することは、現在の複雑なネットワークインフラがどのようにして発展してきたのか、そして物理的な回線制御がいかに重要であったかを深く理解するための一助となる。過去の技術を学ぶことで、現在の技術が持つ制約や可能性、そして未来の技術トレンドをより広い視野で捉えることができる。NCUは、まさに「電話回線を通じたデータ通信の橋渡し役」として、特定の時代においてITインフラを支えた重要な装置であったと言える。