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PAP(パップ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

PAP(パップ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

パスワード認証プロトコル (パスワードニンチウプロトコル)

英語表記

PAP (ピーエーピー)

用語解説

ネットワークに接続する際に、アクセスを要求しているユーザーやデバイスが正当な存在であることを確認するプロセスを「認証」と呼ぶ。この認証は、情報セキュリティを確保する上で不可欠であり、もし認証がなければ、ネットワークは不正アクセスや情報漏洩のリスクに常にさらされてしまう。PAP(Password Authentication Protocol)は、この認証を行うためのプロトコルの一つで、特にPPP(Point-to-Point Protocol)と呼ばれる接続方式において利用される。

PPPは、かつてダイヤルアップ接続やISDN接続といった電話回線を通じたコンピュータ間接続で広く使われ、現在でも一部のVPN接続や光ファイバー接続で利用されているPPPoE(PPP over Ethernet)の基盤技術となっている。PAPは、このようなPPP接続において、接続を試みるクライアントが、接続を受け入れるサーバーに対して自身の身元を証明するために使われる、初期の認証方式である。

PAPの認証プロセスは非常に単純である。クライアントがネットワークへの接続を開始する際、自身のユーザー名とパスワードを、何の暗号化も施されていない「平文(ひらぶん)」の状態でサーバーへ送信する。平文とは、誰でも読める形式のデータのことである。サーバーは、このクライアントから受け取ったユーザー名とパスワードを、自身が持つユーザーデータベースや連携する認証サーバーの情報と照合する。情報が一致すれば、認証は成功と判断され、クライアントはネットワークへのアクセスを許可される。情報が一致しなければ、認証は失敗し、アクセスは拒否される。

PAPの最大の利点は、その実装の容易さとシンプルさにある。複雑な暗号化アルゴリズムや計算処理を必要としないため、システムへの組み込みが比較的容易であり、認証時の処理負荷も非常に低い。また、このプロトコルは歴史が古く、多くのネットワーク機器やオペレーティングシステムで広くサポートされているため、互換性が高いという特徴も持つ。

しかし、このPAPのシンプルさは、同時に重大なセキュリティ上の脆弱性を招いている。最大の欠点は、認証情報であるユーザー名とパスワードが平文のままネットワーク上を流れることである。これにより、悪意のある第三者が通信を傍受した場合、それらの情報を容易に盗聴できてしまうリスクが非常に高い。例えば、ネットワーク上に不正な機器を設置したり、パケットキャプチャツールを使用したりすることで、データ通信を盗み見ることが可能になる。もし認証情報が盗聴されれば、それらが不正アクセスに悪用される可能性は極めて高く、情報漏洩やシステムへの侵入といった深刻な被害につながりかねない。

さらに、PAPは「リプレイアタック(Replay Attack)」に対しても脆弱である。リプレイアタックとは、盗聴した認証情報(この場合は平文のユーザー名とパスワード)を、後日あるいは別の機会に、再度サーバーへ送信することで不正に認証を突破しようとする攻撃手法である。PAPには、一度使用された認証情報を無効化する仕組みや、通信ごとに異なる認証情報を生成する仕組みが備わっていないため、盗聴された情報がそのまま再利用されてしまう危険性がある。また、PAPは一方向認証であり、クライアントがサーバーの正当性を確認する仕組みがないため、クライアントが意図せず不正なサーバーに接続してしまうリスクも存在する。

このような重大なセキュリティ上の問題があるため、現代の情報セキュリティが重視されるネットワーク環境では、PAPはほとんど推奨されない。特に、インターネットのような不特定多数がアクセスする公開ネットワークや、企業の基幹システムなど機密性の高い情報を扱うネットワークでの使用は、極めて危険とみなされる。PAPが利用されるのは、通常、閉域網と呼ばれるセキュリティが物理的・論理的に完全に確保された限定的なネットワーク環境や、開発・テスト目的でセキュリティが不要な環境などに限られるのが現状である。

PAPが抱えるセキュリティ上の問題を解決するために、より安全な認証プロトコルとして開発されたのが、CHAP(Challenge-Handshake Authentication Protocol)である。CHAPは、PAPとは異なり、パスワードを平文でネットワーク上に送信することはない。CHAPの認証プロセスでは、まずサーバーがクライアントに対して「チャレンジ(挑戦)」と呼ばれるランダムなデータを送信する。クライアントはこのチャレンジデータと自身のパスワードを基に、ハッシュ関数と呼ばれる一方向の暗号化アルゴリズムを用いて計算を行い、その計算結果を「レスポンス(応答)」としてサーバーに送り返す。サーバーも同様に、自身が知っているクライアントのパスワードと送ったチャレンジデータを用いて同じ計算を行い、クライアントから送られてきたレスポンスと自身の計算結果を比較する。両者が一致すれば認証は成功となる。この方式では、パスワードそのものがネットワーク上を流れることはなく、またチャレンジデータが通信ごとに変化するため、リプレイアタックへの耐性も向上する。

システムエンジニアを目指す上で、PAPのような基本的なプロトコルを理解することは、ネットワーク技術の基礎を築く上で重要である。しかし、それ以上に、そのプロトコルがどのようなセキュリティリスクを抱えており、どのような状況で利用すべきではないかを正しく判断できる能力が求められる。現代のネットワーク環境では、PAPのような古い認証方式の代わりに、CHAPや、TLS/SSLといったより強力な暗号化技術、さらには多要素認証を組み合わせた、よりセキュアな認証プロトコルが利用されることが一般的である。将来的にネットワーク設計やセキュリティ対策に関わる際には、各プロトコルの特性、特にセキュリティ上の強みと弱みを深く理解し、適切なプロトコルを選択することが非常に重要となる。PAPは、セキュリティ技術の進化の歴史を学び、「なぜ安全な認証が必要なのか」を理解する上で、重要な出発点となるプロトコルと言えるだろう。

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