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STARTTLS(スタートティーエルエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

STARTTLS(スタートティーエルエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

スタートティーエルエス (スタートエルエス)

英語表記

STARTTLS (スタートティーエルエス)

用語解説

STARTTLSは、インターネット通信において、既存の非暗号化(プレーンテキスト)通信路を、安全な暗号化通信路であるTLS(Transport Layer Security)にアップグレードするためのコマンドである。主にSMTP(メール送信プロトコル)、POP3(メール受信プロトコル)、IMAP(メールサーバー上のメール管理プロトコル)といったアプリケーション層のプロトコルで利用される。この仕組みの目的は、通信開始時には通常の非暗号化通信ポートを使用しつつ、必要な段階でセキュリティプロトコルであるTLSを確立することで、データの盗聴や改ざん、なりすましといった脅威から通信を保護することにある。これにより、ユーザー名、パスワード、メールの内容などの機密情報が、ネットワーク上を平文で流れることを防ぐ。STARTTLSを使用することで、特定のプロトコルが元々使用しているポート番号(例えばSMTPの25番や587番、POP3の110番、IMAPの143番など)を変えることなく、暗号化通信を導入できる点が大きな特徴である。

STARTTLSの動作は、クライアントとサーバー間の特定のプロトコルセッション内で進行する。まず、クライアントはサーバーに対して、通常用いられる非暗号化通信用のポート番号で接続を確立する。この段階では、まだ通信内容は暗号化されていない。接続が確立された後、クライアントはサーバーに対して「STARTTLS」という特定のコマンドを送信する。サーバーがこのコマンドを受信すると、TLS通信への切り替え準備を開始し、クライアントに応答を返す。この応答を受けた後、クライアントとサーバーはTLSハンドシェイクと呼ばれる一連のプロセスを開始する。TLSハンドシェイクとは、クライアントとサーバーが相互に認証を行い、暗号化通信に必要な鍵の交換や暗号化アルゴリズムの選択などを行う手順のことである。このハンドシェイクが無事に完了し、TLSセッションが確立されると、以降のすべての通信データはTLSによって暗号化され、セキュアな状態で交換されるようになる。

STARTTLSの導入は、従来のImplicit TLS(またはSSL/TLS over Implicit TLS)とは異なるアプローチをとる。Implicit TLSは、最初からTLS暗号化通信を前提として設計されており、専用のポート番号(例えばSMTPSは465番、POP3Sは995番、IMAPSは993番)を使用する。この方式では、接続確立の最初からTLSハンドシェイクが開始されるため、非暗号化通信のフェーズが一切存在しない。一方、STARTTLSは既存の非暗号化ポートを再利用し、必要に応じて暗号化に切り替える。このため、サービス提供側は既存のインフラストラクチャやファイアウォール設定を大幅に変更することなく、セキュリティを強化できるという利点がある。例えば、長年運用されてきたメールサーバーが、新たに暗号化対応を求められた際に、ポート番号の変更や追加なしにTLSを導入できるため、運用上の手間を軽減できる。

しかし、STARTTLSにはセキュリティ上の潜在的な脆弱性も存在する。STARTTLSコマンドが送信される前の初期通信段階は非暗号化であるため、この段階で中間者攻撃(Man-in-the-Middle attack)を受けるリスクがある。中間者攻撃とは、攻撃者がクライアントとサーバーの間に割り込み、両者になりすまして通信内容を盗聴・改ざんする攻撃のことである。例えば、攻撃者がSTARTTLSコマンドをブロックしたり、改ざんしたりすることで、クライアントとサーバーがTLS通信へのアップグレードに失敗し、意図せず非暗号化されたままの通信を継続させられる可能性がある。この攻撃が成功すると、ユーザー名やパスワードなどの認証情報が平文で漏洩する恐れがある。このため、クライアント側では、STARTTLSが失敗した場合に通信を中断したり、ユーザーに警告を表示したりするなど、「TLS必須」の設定を適切に行うことが非常に重要である。また、サーバー側も、信頼できる認証局から発行された有効な証明書を使用し、最新のTLSプロトコルバージョンと強力な暗号スイートを設定することで、セキュリティを最大限に高める必要がある。加えて、古いプロトコルバージョンや脆弱な暗号スイートの使用は、セキュリティリスクを高めるため避けるべきである。

現代のインターネット環境では、通信の安全性を確保することが不可欠であり、STARTTLSは多くのアプリケーションプロトコルにおいて、セキュアな通信を実現するための標準的な方法の一つとして広く採用されている。特に、電子メールの送受信においては、ユーザーのプライバシー保護の観点から、STARTTLSまたはImplicit TLSによる暗号化通信の利用が強く推奨されている。これらの技術によって、インターネット上での情報交換がより安全に行われる基盤が提供されているのである。