VDSL(ブイディーエスエル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
VDSL(ブイディーエスエル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
超高速ディジタル加入者線 (チョウコウソクデジタルサニュウシャセン)
英語表記
Very-high-bit-rate digital subscriber line (ベリハイビットレートデジタルサブスクライバーライン)
用語解説
VDSLは、Very high-bit-rate Digital Subscriber Lineの略で、既存の電話回線で用いられているメタルケーブルを利用して、高速なデジタルデータ通信を実現するDSL(Digital Subscriber Line)技術の一種である。主に集合住宅において、各部屋へのインターネット接続手段として広く普及した技術である。
概要として、VDSLは従来のADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)技術と比較して、より広帯域の周波数を利用することで、大幅な高速化を達成した点が特徴だ。ADSLが主に電話局から各家庭までの比較的長い距離をカバーするのに対し、VDSLは一般的に、光ファイバーを建物や電柱などの比較的近い場所まで引き込み、そこから各部屋や住宅まではメタルケーブルを利用するというハイブリッドな構成で使われることが多い。このため、光ファイバーを各戸まで直接引き込むことが物理的・コスト的に困難なマンションやアパートなどの集合住宅で、高速インターネットサービスを提供する上で重要な役割を担ってきた。VDSLの導入により、集合住宅の住民は、既存の電話回線を活用しつつ、光ファイバーに準じるレベルの高速インターネット環境を手に入れることが可能となった。
詳細にわたってVDSLの技術的側面を見ていく。VDSLの最大の特徴は、ADSLと比較して、より高い周波数帯域をデータ伝送に利用する点にある。ADSLが2.2MHz程度の周波数帯域を使用するのに対し、VDSLは最大で30MHz程度の広い周波数帯域を利用することが可能であり、これにより、より多くのデータを一度に送受信できるため、通信速度が向上する。ただし、高周波数帯域は信号の減衰が大きく、伝送距離が長くなると速度が著しく低下するという物理的な特性を持つ。そのため、VDSLは短い伝送距離で高い性能を発揮するように設計されている。これが、前述の「光ファイバーを建物や電柱の近くまで引き込み、そこからメタルケーブルで各戸へ」という利用形態と密接に関連している。
集合住宅におけるVDSLの具体的な利用形態は「FTTB (Fiber To The Building)」方式、または「FTTC (Fiber To The Curb)」方式と呼ばれ、特にVDSL方式と呼ばれることが多い。これは、プロバイダの通信設備から集合住宅の共用スペースまで光ファイバーケーブルを引き込み(ここまでがFiber To The Building)、共用スペースに設置されたVDSL集合装置(VDSLモデムやVDSL-OLTなどと呼ばれることもある)で光信号を電気信号に変換する。そして、その電気信号を各部屋へ敷設されている既存の電話回線(メタルケーブル)に乗せて伝送する仕組みだ。各部屋には、その電気信号を受け取り、パソコンなどが理解できるデジタル信号に再度変換するためのVDSLモデムが設置される。この方式では、光ファイバーを各戸まで引き込むための大掛かりな工事が不要となり、既存の配線を有効活用できるため、導入コストや工事期間を大幅に削減できるというメリットがある。
VDSLは、下り最大100Mbps、上り最大100Mbpsといった高速な通信速度を実現できるが、これはあくまで理論上の最大値であり、実際の通信速度は、伝送距離、ケーブルの状態、建物内の配線環境、そして同じ集合装置に接続しているユーザー数など、様々な要因によって変動する。特に集合住宅では、VDSL集合装置を複数ユーザーで共有するため、時間帯によっては回線が混雑し、速度が低下する可能性がある。また、電磁ノイズの影響も受けやすく、他の電気機器からのノイズや、近隣のケーブルからの干渉によって通信品質が損なわれることもある。
VDSLの登場と普及は、インターネットの高速化が求められる中で、光ファイバーがまだ十分に普及していなかった時期における重要なソリューションであった。特に、新しい配線工事が難しい既存の集合住宅において、住民に高速インターネット環境を提供するための現実的な選択肢として広く採用された。しかし、近年では光ファイバー網の整備がさらに進み、各戸まで直接光ファイバーを引き込むFTTH(Fiber To The Home)方式が主流となりつつある。FTTHはVDSLよりもさらに高速で安定した通信が可能であるため、新規のインターネット接続サービスではFTTHが優先される傾向にある。
一方で、現在でも多くの集合住宅でVDSL方式が利用されており、その安定稼働は重要である。VDSL2と呼ばれる後継規格も存在し、これはVDSLよりもさらに高速な通信速度(理論値で下り200Mbps以上)を実現するが、基本的な原理はVDSLと共通している。システムエンジニアを目指す上では、現在も利用されているこれらの既存技術がどのように機能し、どのような制約を持つのかを理解することは、ネットワークインフラの設計やトラブルシューティングにおいて非常に役立つ知識となるだろう。VDSLは、光ファイバーへの完全移行までの過渡期において、日本のインターネットインフラを支えた重要な技術の一つとして認識しておくべきである。