Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

VHD(ブイエイチディー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

VHD(ブイエイチディー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

仮想ハードディスク (カソウハードディスク)

英語表記

VHD (ブイエイチディー)

用語解説

VHDとは、Virtual Hard Diskの略であり、マイクロソフト社が開発した仮想ハードディスクイメージのファイル形式を指す。この技術は、物理的なハードディスクドライブの機能をソフトウェア的に再現し、それを単一のファイルとして保存することを可能にする。これにより、オペレーティングシステムやアプリケーションからは、あたかも実際のハードディスクが接続されているかのように認識され、仮想化環境の構築において不可欠な要素となっている。VHDファイルは、物理ディスクのパーティション情報、ファイルシステム、ブートセクタ、およびユーザーデータといったすべての内容をカプセル化し、仮想マシンが利用できる形に変換する。このため、仮想マシンにとっての「ハードディスク」の実体は、ホストマシン(仮想マシンを実行する物理コンピュータ)上の一つのVHDファイルとなる。

VHDは主に、マイクロソフトの仮想化製品であるHyper-Vや以前のVirtual PCなどで、仮想マシンのストレージとして広く利用されてきた。仮想マシンは、実際のハードウェアとは独立したソフトウェアベースのコンピュータ環境であり、そのOSや各種データはVHDファイルに格納される。このファイル形式の採用により、仮想マシンの環境全体を単一のファイルとして扱うことが可能となり、バックアップやリストア、別の物理マシンへの移行といった管理作業が非常に容易になる。システム管理者にとって、仮想環境の展開、複製、破棄といったライフサイクル管理の柔軟性を高める上で、VHDは極めて重要な役割を担う。

VHDファイルにはいくつかのタイプがあり、それぞれディスク領域の管理方法が異なる。一つ目は「固定サイズ(Fixed Size)」VHDである。これは、VHDファイルを作成する際に指定した容量分のディスク領域を、物理ストレージ上に事前にすべて確保する方式だ。例えば、100GBの固定サイズVHDを作成すると、たとえ仮想ディスク内部の使用量がごく少量であっても、物理ストレージ上には即座に100GBのファイルが生成される。この方式の利点は、ディスクの読み書き性能が安定しており、ファイルが断片化しにくいことにある。一方で、未使用の領域も物理的に占有するため、ストレージの消費量が大きくなるという欠点がある。

二つ目は「可変サイズ(Dynamically ExpandingまたはExpandable)」VHDである。このタイプは、初期状態では最小限のディスク領域しか占有せず、仮想ディスク内部にデータが書き込まれるのに応じて、VHDファイルのサイズが物理ストレージ上で動的に拡張されていく。物理ストレージの節約に大きく貢献するため、特にストレージ容量が限られている環境や、仮想ディスクの使用量が予測しにくい場合に有用だ。しかし、ディスクの書き込み性能が固定サイズVHDに比べて若干劣る可能性があり、またファイルが断片化しやすくなる傾向もある。

さらに、「差分(Differencing)」VHDという特殊なタイプも存在する。これは、既存の親VHDファイルを基盤とし、親ファイルへの変更点のみを記録するVHDファイルである。差分VHD自体は、親ファイルとの差分データのみを保持するため、ファイルサイズが非常に小さくて済む。この仕組みは、開発やテスト環境の構築で特に威力を発揮する。例えば、クリーンなOSイメージを格納した親VHDを作成し、その親VHDを参照する複数の差分VHDを生成すれば、各差分VHDは個別の開発者やテストシナリオに対応した変更を記録できる。テスト終了後に差分VHDを削除するだけで、元のクリーンな環境に簡単に戻せるため、環境のリセット作業を効率化できる。

VHDは仮想マシン以外にも多様な用途で活用されてきた。Windows 7以降のクライアントOSでは、VHDファイルにオペレーティングシステムをインストールし、物理マシンから直接起動する「ネイティブブート」機能がサポートされている。これにより、物理ディスクをパーティション分割することなく、複数の異なるOS環境を容易に切り替えることが可能になる。また、Windowsのシステムバックアップ機能では、システム全体のイメージをVHDファイルとして保存し、必要に応じてOSやデータを復元する際にも利用される。Windowsのディスク管理ツールを使えば、VHDファイルをマウントして、あたかも物理ディスクのようにファイル操作を行うことも可能だ。

VHDの主な利点としては、その「可搬性(Portability)」が挙げられる。VHDファイルは単一のファイルであるため、これをコピーして別の物理マシンに移動させるだけで、仮想マシン環境全体を容易に移行できる。これは、開発環境やテスト環境の配布、あるいは災害復旧計画の一部としても非常に有効だ。また、「管理の容易さ」も特筆すべき点である。複数の仮想ディスクをファイルとして一元的に管理できるため、物理ディスクの複雑なパーティション管理に比べて柔軟性が高く、運用コストの削減にも繋がる。さらに、「スナップショット」機能と組み合わせることで、特定の時点の仮想ディスクの状態を保存し、いつでもその時点に復元できるため、システムに問題が発生した場合の迅速なロールバックが可能になる。

しかし、VHDにはいくつかの制約も存在する。最も顕著なのは、その最大サイズが2TB(テラバイト)に制限されている点だ。現代の大規模なデータセンターやエンタープライズ環境では、この容量では不十分となるケースが多く、特に巨大なデータベースやファイルサーバーの仮想ディスクとしては限界がある。この最大容量の制限やその他のパフォーマンス上の課題を解決するために、マイクロソフトはVHDの後継となる「VHDX(Virtual Hard Disk v2)」フォーマットを開発した。VHDXは、最大64TBまでのディスク容量をサポートし、障害発生時のデータ破損に対する強固な保護機能や、パフォーマンスの向上など、VHDの弱点を克服している。そのため、Hyper-Vなどの最新の仮想化環境では、VHDXの利用が推奨されている。

VHDは、物理ディスクの機能をソフトウェア的に再現し、仮想化技術の発展を支えてきた基盤となる技術である。そのファイル形式としての柔軟性、可搬性、および管理の容易さは、現代のITインフラを構築し運用する上で不可欠な要素となっている。システムエンジニアを目指す者にとって、仮想化技術は必須の知識であり、VHDのような基本的な仮想ディスクフォーマットの理解は、将来のキャリアにおいて極めて重要となる。VHDXへの移行が進んでいる現状においても、VHDの基本的な概念と仕組みを学ぶことは、仮想化技術全般を深く理解するための堅固な基礎を築くことに繋がる。

関連コンテンツ