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WIPS(ワイプス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

WIPS(ワイプス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ワイヤレス侵入防止システム (ワイヤレスニュウボウシシステム)

英語表記

WIPS (ウィップス)

用語解説

WIPS(Wireless Intrusion Prevention System)は、無線LAN環境におけるセキュリティ脅威をリアルタイムで検知し、その侵入や攻撃を能動的に阻止するシステムである。これは、有線ネットワークにおける侵入防御システム(IPS)の無線版と考えると理解しやすい。無線LANの普及に伴い、企業や組織のネットワークにおいて無線環境の利用が拡大する中で、無線ネットワーク特有のセキュリティリスクへの対策が不可欠となっており、WIPSはその中心的な役割を担う。

無線LANは利便性が高い一方で、電波が物理的な壁を越えて広がる性質を持つため、オフィスビルの外や隣接する場所からでも容易にアクセス可能となる。この特性は、外部からの不正アクセス、情報漏洩、サービス妨害(DoS)といった脅威のリスクを格段に高める。また、組織内部の人間が意図的あるいは非意図的にセキュリティポリシーに反する行動を取ることもあり得る。例えば、従業員が私物の無線LANルーターをオフィスに持ち込んで勝手に接続したり、セキュリティ設定の甘い無線ネットワークを構築してしまったりするケースがこれにあたる。WIPSは、このような多様な無線ネットワークの脅威から企業の情報資産とネットワークの可用性を守るために開発された。単に脅威を検知するだけでなく、自動的に防御措置を講じる点がWIPSの最大の特長である。

WIPSの具体的な機能は多岐にわたるが、主に以下の点が挙げられる。

第一に、不正なアクセスポイント(Rogue AP)の検知と排除である。Rogue APとは、組織が公式に設置を許可していない無線LANアクセスポイントのことで、悪意のある第三者が設置する「悪質なRogue AP」と、従業員が便宜上設置する「非意図的なRogue AP」がある。悪質なRogue APは、正規のSSIDを偽装してユーザーを誘い込み、認証情報や個人情報を詐取するフィッシングサイトへ誘導したり、ネットワーク全体への不正な侵入経路となったりする。非意図的なRogue APも、セキュリティ設定が不十分な場合、外部からの侵入経路となるリスクがある。WIPSは、周囲の電波を常時監視し、正規のアクセスポイントとの区別を通じて不審なAPを特定する。Rogue APが検知されると、WIPSは管理者にアラートを発するだけでなく、そのAPからの通信を遮断したり、妨害電波を発したりすることで、ユーザーが誤って接続するのを防ぎ、物理的に利用できないようにする措置を講じる。

第二に、不正なクライアントの検知と排除である。これは、組織のネットワークへの接続を許可されていない無線デバイスが接続を試みる行為や、既に接続している状態を監視し、対処する機能である。例えば、外部からのクラッカーがネットワークに侵入しようとする試みや、セキュリティポリシーに違反して従業員が個人のスマートフォンやタブレットを社内ネットワークに接続する行為などがこれに該当する。WIPSは、これらの不正なクライアントを検出し、そのデバイスのMACアドレスをブロックしたり、ネットワークからの接続を強制的に切断したりすることで、不正なアクセスを阻止する。

第三に、アドホック(Ad-hoc)ネットワークの検知と阻止である。アドホックネットワークは、無線デバイス同士が直接通信するP2P(Peer-to-Peer)型のネットワーク形態を指す。企業環境では、通常、セキュリティポリシーによって禁止されることが多い。なぜなら、アドホックネットワークは中央管理されたアクセスポイントを介さないため、管理者の監視が行き届かず、セキュリティポリシーが適用されない状態で情報が共有されるリスクがあるからだ。WIPSは、このようなアドホック通信を検知し、阻止することで、企業データの不正な共有や情報漏洩のリスクを低減する。

第四に、MACアドレススプーフィング攻撃の検知と防御である。MACアドレスはネットワークデバイスを一意に識別する物理アドレスだが、攻撃者はこのMACアドレスを偽装し、正規のデバイスになりすましてネットワークに侵入しようとすることがある。WIPSは、MACアドレスの異常な重複や、既知の正規デバイスとは異なるMACアドレスからの異常なトラフィックパターンを検知することで、このようななりすまし攻撃を識別し、該当する通信を防御する。

第五に、無線LANに対するサービス妨害(DoS)攻撃の検知と防御である。無線LAN環境では、認証プロセスの脆弱性を悪用したディソシエーション攻撃やデオーセンティケーション攻撃など、特定のプロトコルレベルでのDoS攻撃が比較的容易に行われる可能性がある。これらの攻撃は、正規のユーザーが無線ネットワークに接続できなくなるなどのサービス停止を引き起こす。WIPSは、大量の不正なフレーム送信や異常な認証要求といった攻撃パターンをリアルタイムで識別し、該当する通信を遮断することで、無線サービスの可用性を維持し、業務への影響を最小限に抑える。

第六に、脆弱性スキャンや不正な設定変更の検知、および無線LAN設定の監査である。WIPSは、無線LAN機器やプロトコルの脆弱性を探るための不審なスキャン活動を検知する。また、正規のアクセスポイントや無線デバイスが、組織のセキュリティポリシーに準拠した設定になっているかを継続的に監視する。例えば、弱い暗号化方式(WEPなど)が使用されていないか、推測しやすいパスワードが設定されていないか、適切な認証方式が適用されているかなどをチェックし、ポリシー違反が検出された場合には警告を発して是正を促す。

WIPSは、これらの包括的な機能を組み合わせることで、無線LAN環境における多様で進化するセキュリティ脅威から組織を多層的に防御する。その導入は、企業が無線ネットワークの利便性を享受しつつ、情報資産の保護とビジネス継続性の両立を図る上で不可欠な要素となっている。システムエンジニアを目指す者にとって、無線LANセキュリティの重要性と、WIPSのような専門的な防御システムがどのように機能し、脅威に対処するかを深く理解することは、将来のキャリアにおいて極めて重要な知識となるだろう。

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