【ITニュース解説】Building Settla: An AI-Powered Payment & Settlement Automation Platform
2026年10月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building Settla: An AI-Powered Payment & Settlement Automation Platform」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
開発者がAI搭載の決済・精算自動化プラットフォーム「Settla」を開発した。複雑な支払い・返金業務をAIで効率化し、手動処理を削減するのが目的だ。AIを単なるチャットボットではなく、信頼性の高いシステムの一部としてワークフローに組み込むことで、開発者は周辺技術やテストの重要性を学んだ。AIとシステムの連携方法を追求したプロジェクトである。
ITニュース解説
Settlaは、AI(人工知能)を活用して支払いと決済の業務を自動化するプラットフォームである。このシステムは、企業が日々直面する複雑な支払い処理、返金対応、取引先(ベンダー)の管理、そして一連の業務の流れ(ワークフロー)を効率化するために開発された。開発者は、多くの取引や返金、複数の取引先とのやり取り、そして決済プロセスを手作業で行うことがいかに大変で時間のかかることかを目の当たりにし、この課題を解決したいという思いからSettlaのアイデアを思いついた。単にチャットボットのようにAIを会話に使うだけでなく、AIが実際の業務プロセスの中に深く組み込まれ、具体的な作業を自動でこなすシステムを目指したのである。
Settlaの目標は、利用者がまるで賢いアシスタントと会話するように、支払いに関する様々な操作を行えるようにすることだ。そして、その裏側ではシステムが自動的に、それぞれの業務に必要な複雑な処理、異なるサービスとの連携、そして自動化された一連の動作を実行する。これにより、人間は煩雑な手作業から解放され、より重要な業務に集中できるようになるというわけだ。
このSettlaは、ウェブブラウザで操作する画面部分(フロントエンド)と、裏側でデータ処理や計算を行う部分(バックエンド)からなる、いわゆる「フルスタックアプリケーション」として構築されている。全体の仕組みは、ユーザーが画面を通じて操作を始めるところからスタートする。まず、ユーザーの入力はSettlaのフロントエンドに送られ、そこからさらにバックエンドAPIと呼ばれる、システム間の通信窓口を通じて処理が依頼される。このバックエンドが、Settlaの核となるビジネスロジック、つまり「どのような条件で支払いを行うか」「どのように返金処理を進めるか」といった業務のルールを管理している。
さらにSettlaの大きな特徴は、このバックエンドから「AI / MCPレイヤー」という部分に処理が渡されることだ。MCPとは「Model Context Protocol」の略で、AIモデルが外部のツールやサービスと連携するための仕組みを指す。このAI / MCPレイヤーが、受け取った指示に基づいて、実際に支払いを行うための「支払いサービス」や、様々な業務を自動でつなぐ「n8n(エンハチエン)自動化」の部分へと連携していく。最終的に、これらの連携を通じて決済や返金といった一連のワークフローが実行され、結果がユーザーに返される。
開発者は、このような支払いに関連するシステムでは、一つ一つの動作が正確で予測可能であることが非常に重要だと考えていた。なぜなら、支払いに関する小さな間違いが、通常のアプリケーションのバグとは比べ物にならないほど大きな問題に発展する可能性があるからだ。そのため、開発の段階から徹底的にテストが行われた。バックエンドだけで135項目ものテスト、フロントエンドの画面動作を確認する9項目のテスト、そしてユーザーが実際に使うようにシステム全体を動かして確認する13項目のエンドツーエンドテストが実施されたという。これは、システムの信頼性と安全性を確保するための重要な取り組みだ。
Settlaの開発を通して、開発者はAIが組み込まれた製品を作る上で非常に重要な学びを得た。それは、AIそのものが製品のほんの一部に過ぎないということだ。AIを賢くするだけでなく、そのAIが安全かつ確実に機能するために、その周辺のシステムをしっかりと構築することこそが難しい部分だと気づいたのである。具体的には、信頼性の高いAPI(他のシステムと連携するための窓口)、ユーザーの認証と認可(誰が何をして良いかを管理する仕組み)、適切なビジネスロジック(業務のルール)、ツールへの適切な権限設定、エラーが起きたときの処理、そして前述した徹底的なテスト、業務の自動化、外部サービスとの連携、さらにはシステムが正しく動いているか監視し、将来的に変更や改善を簡単に行えるようにする仕組み(可観測性と保守性)が必要不可欠だということを痛感した。AIは、これらの堅牢なシステムと安全にやり取りできて初めて、その真価を発揮するのだ。
この経験は、開発者のAIアプリケーションに対する考え方自体を変えた。「AIチャットボットを追加しよう」といった単純な発想から、「AIはこのシステムの中で具体的に何ができるだろうか?」という、より深く、エンジニアリングの視点から問題を捉えるようになったのである。
Settlaのデモの流れを見ると、この新しい考え方がよくわかる。ユーザーからのリクエストはまずAIエージェントに渡され、AIエージェントはMCP(Model Context Protocol)を介して適切なツール、つまりSettlaのシステムが持つ実際の支払い操作機能にアクセスする。そして支払い操作が実行されると、その後の自動化ワークフローが続き、Settlaのバックエンドを通じて処理が進められ、最終的な結果がユーザーに伝えられる。この一連の流れにより、複雑な支払い業務も、ユーザーが一つ一つのステップを手動で実行する必要なく、より簡単に理解し、自動化できるようになるわけだ。
Settlaの開発において特に興味深い技術として挙げられているのが、「n8n」と「Model Context Protocol(MCP)」だ。n8nは、Settlaの自動化レイヤーの基盤として利用されている。バックエンドのコードの中に直接すべての自動化ロジックを書き込むのではなく、n8nを使うことで、様々なサービスをつなぐワークフローを視覚的に、つまりブロックを組み合わせるように構築できる。これにより、「支払いが発生したら、その取引を検証し、処理を進め、Settlaの情報を更新し、決済処理をトリガーし、最後にユーザーに通知する」といった一連のプロセスを柔軟に設計できる。これは、将来的に新しい支払い方法やサービスとの連携が必要になった際にも、システムを簡単に拡張できるという大きなメリットがある。
そしてMCPは、AIシステムを外部のツールと連携させるための技術だ。AIモデルが単にテキストを生成するだけでなく、実際のアプリケーション機能を持つツールと対話できるようにするのがMCPの役割である。ユーザーからの指示をAIが受け取ると、MCPを介して適切なツールに処理を依頼し、ツールが外部サービスと連携して作業を実行する。その結果をAIが受け取り、ユーザーに分かりやすく伝える。このアプローチにより、AIモデルは「すべてを知っている必要はない」という考え方が生まれた。AIは、適切なツールにアクセスする能力と、そのツールを使うための適切な権限を持っていれば良い。そして、アプリケーション自体が、どのツールがどのようなビジネスルールに従って動くべきかを管理・強制するという、知性(AI)、ツール、そしてビジネスロジックの役割を明確に分離する考え方は、Settlaを構築する上で非常に価値のある発見だったと開発者は語っている。
Settlaは、Paytm AI Hackathonという開発コンテストのために作られたプロジェクトである。残念ながら今回のハッカソンでは受賞には至らなかったものの、開発者にとってこの経験は非常に貴重なものとなった。ハッカソンでは、AIエージェントや支払いシステム、自動化、MCP、アーキテクチャ設計、そして製品のアイデアについて、他の開発者たちと深く議論する機会があったという。限られた時間の中で「何を最初に作るべきか」「何なら現実的に完成させられるか」「何をテストする必要があるか」「何を後回しにするべきか」といった問いに常に向き合いながら開発を進めることは、通常の開発とは異なる独特の学びをもたらした。特に、製品を完成させることと、それを効果的にデモンストレーションすることの難しさは、身をもって体験した教訓だったようだ。
開発者は、このハッカソンからトロフィーではなく、「経験」という大きな財産を持ち帰った。AIを搭載したシステムの構築、MCPとワークフロー自動化の探求、そして多くの開発者やAI愛好家との出会いは、次回の挑戦に向けて改善すべき点を明確にする助けとなった。AI、支払い、MCP、自動化、そしてフルスタックエンジニアリングという様々な要素を組み合わせたアイデアを形にできたことは、開発者にとって大きな誇りとなっている。
Settlaはハッカソンのプロジェクトとして始まったが、その開発を通じて、AIが単にテキストを生成するだけでなく、実際のシステムとどのように連携し、実用的な価値を生み出すかを探る重要な実験となった。受賞こそ逃したが、開発者は自らの手でシステムを構築し、テストし、そこから多くのことを学び、素晴らしい開発者たちと交流できた。そして何よりも、次に何ができるかという未来への展望を得たのである。ハッカソンで最も価値のある成果は、時に賞品ではなく、自分自身の能力と次の目標を知ることにある。Settlaは、その学びを体現するプロジェクトだったと言えるだろう。