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【ITニュース解説】Choosing Technologies: The Beauty and the Beast Trap

2025年09月13日に「Dev.to」が公開したITニュース「Choosing Technologies: The Beauty and the Beast Trap」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

新しい技術(Beauty)は魅力的だが、既存の安定技術(Beast)とのバランスが重要だ。安易な新技術導入はデバッグ困難や互換性問題を生む場合がある。技術選定では、安定性、チームスキル、他ツールとの互換性、学習しやすさ、プロジェクトへの適合性を確認し、リスクを管理することが成功の鍵となる。

ITニュース解説

ソフトウェア開発において、どのような技術を使うかを選ぶのは、非常に重要でありながら危険も伴う仕事である。この技術選定を担当するのがソフトウェアアーキテクトと呼ばれる役割の人たちで、彼らはシステムの全体像を設計し、その土台となる技術を選定する。しかし、この選定には大きな落とし穴がある。

世の中には常に新しく、エキサイティングで、素晴らしい性能を約束する技術が登場する。これらは「Beauty(美しさ)」と表現され、開発者の心を惹きつける。一方で、昔から使われていて信頼性が高く、確実な動作が保証されている技術も存在する。これらは「Beast(獣)」と表現される。新しいBeautyに夢中になり、Beastの持つ堅実さや信頼性を忘れてしまうと、大きな失敗につながることが多いのだ。

かつて、ある企業が世界中の数千人から送られる大量のイベントデータを、ほとんど遅延なく高速に処理する新しいシステムを必要としていた。このプロジェクトの目標は、複数の分散したプラットフォームを統合し、処理速度を劇的に向上させることだった。チームは優秀だったが、このプロジェクトのアーキテクトが選んだのは、リアクティブJavaシステムと呼ばれる比較的新しい技術、具体的にはProject ReactorとSpring WebFluxだった。これがまさに「Beauty」である。

この新しい技術は、非ブロッキングという特徴を持っていた。これは、システムが多くのタスクを同時に処理する際に、特定の処理が終わるのを待つことなく次の処理に移れるため、従来のシステムよりもはるかに高速に動作するという意味だ。また、少ないコンピューターのリソース(例えばメモリやCPUの処理単位であるスレッド)で数千もの接続を効率的に管理でき、従来の「接続ごとに一つの処理単位」という方式よりも効率が良いとされていた。さらに、複雑な処理を簡潔でモダンなコードで記述できることも魅力だった。

これに対し、チームがこれまで培ってきた技術は、昔ながらのSpring MVCというフレームワークだった。これはまさに「Beast」であり、多くの既存システムで使われていて、チーム全員がその使い方と特性を熟知しており、非常に信頼できるものだった。チームメンバーはリアクティブ技術を使うことに不安を感じていた。新しい開発パラダイム(考え方や手法)を学ぶのは大変で、既存の多くのシステムが古いやり方で作られている中で、本当にこの新しい技術が必要なのかという疑問があったのだ。しかし、アーキテクトは「高速化のためにはこれしかない」と主張し、他の意見に耳を傾けることなく、新しい技術を使ったシステムの骨格をチームに提示し、開発を進めるよう指示した。

開発は、まず小規模なテストシステムを構築することから始まった。このテストシステムは、期待通り非常に高速に動作したため、チームは当初、正しい選択をしたと喜んだ。新しい開発手法の習得には苦労したものの、何とか形にすることができた。しかし、本番環境で使うための実際のシステムを本格的に構築し始めると、予期せぬ問題が次々と発生した。

まず、デバッグ(プログラムの誤りを見つけて修正する作業)が極めて困難だった。コードが非常に長い処理の連鎖で構成されていたため、エラーが発生しても、そのエラーメッセージが何を意味しているのか、どこで問題が起きているのかを理解するのが非常に難しかった。次に、セキュリティ対策やデータ処理など、プロジェクトで既に使っていた多くの既存ツールとの連携がうまくいかなかった。これらのツールはリアクティブな設計に対応しておらず、従来の処理の待ち時間が発生する(ブロッキングな)仕組みだった。そのため、せっかく新しいシステムを非ブロッキングで設計しても、これらのツールを使うと非ブロッキングの利点が失われ、システム全体の設計が破綻してしまった。さらに、メモリリーク(システムが不要になったメモリを解放できず、徐々にメモリを消費し続け、最終的に動作停止に陥る現象)のような、これまで経験したことのない新しい種類のバグも発生し、その原因特定と修正は極めて困難だった。

結果として、チームは新しい機能の開発を中断し、これらの難解な問題の修正にほとんどの時間を費やすことになった。当初目指していた、美しく超高速な非ブロッキングコードは、複雑な修正コードでいっぱいの、チームの頭を悩ませる悪夢のようなものへと変わってしまった。このプロジェクトでリアクティブプログラミングを選んだことは、特定のプロジェクトにおいては全く理にかなっておらず、ビジネス上の具体的な利益をもたらすことなく、ただチームに苦痛を与えただけで終わったのだ。

この苦い経験から、技術選定における重要な教訓が得られた。今では新しい技術を選ぶ際に、より賢明な方法で、プロジェクトの目的に合った選択をするためのシンプルなフレームワーク、つまりチェックリストを使うようになった。これは新しいアイデアをむやみに否定するものではなく、適切に導入するためのガイドラインである。

このチェックリストは、主に以下の点を確認する。 一つ目は「成熟度と安定性」である。まず、その技術が安定したバージョン(例えばバージョン1.0以上)であるかを確認する。初期のバージョンは機能が大きく変わったり、予期せぬ不具合があったりすることが多いため、注意が必要だ。次に、チームにその技術を使いこなせるスキルがあるか、あるいは学習に十分な時間があるかを考慮する。全く新しい技術であれば、チーム全員が習得するまでに時間がかかることを計画に含める必要がある。また、その技術を使っているコミュニティ(利用者グループ)が活発であるかどうかも重要だ。活発なコミュニティがあれば、問題が発生した際に情報を共有したり、解決策を見つけたりしやすくなる。

二つ目は「他のツールとの連携」である。新しい技術が、監視、セキュリティ、システムの展開(デプロイ)といった、プロジェクトで既に使っている重要なツールとスムーズに連携できるかを確認する。互換性が低いと、導入後に予期せぬ問題が生じることが多い。

三つ目は「学習の容易さ」である。その技術のドキュメント(説明書)は分かりやすく、具体的な使用例やよくある問題の解決策が記載されているかを確認する。ドキュメントが不十分だと、チームが使い方を覚えるのに余計な時間がかかってしまう。チームがその技術を習得するまでにどれくらいの時間がかかるか、現実的に見積もることも大切だ。

四つ目は「プロジェクトへの適合性」である。最も重要なのは、その技術が本当にプロジェクトの特定の問題を解決するための最適な選択肢であるか、客観的に評価することだ。単に「かっこいいから」とか「流行っているから」という理由で選ぶのは危険である。導入前に、最もリスクの高い部分だけを試すための小さなテストプロジェクトを構築できるかも確認する。これで、本格導入前に問題点を発見できる。万が一、選んだ技術がうまくいかなかった場合に、別の技術に切り替えるのが容易かどうかも考慮に入れておくべきだ。失敗した場合の代替案があることで、リスクを管理できる。

現在では、新しい技術を検討する際、以下の三つのシンプルなステップを踏むことが推奨されている。まず、上記で説明したチェックリストをチーム全員で一緒に記入し、それぞれの項目について議論する。次に、最も危険な部分や未知の要素を確認するため、小規模なテストプロジェクトを実際に構築し、その技術が本当に機能するかを検証する。そして、最終的な技術選定の決定理由、予測されるリスク、そしてそれらのリスクをどのように管理していくかを、アーキテクトと開発者全員が合意し、文書に残す。

技術選定は、本質的にリスクを管理する行為である。新しい技術である「Beauty」は魅力的だが、未成熟でリスクが高い場合がある。一方で、昔からある信頼性の高い「Beast」は予測可能で安全性が高い。優れたアーキテクトは、この両方の性質を深く理解している。彼らが最も重視するのは、システムが安定して動作し、そしてチームが長期にわたってそのシステムを維持管理できることなのだ。

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