【ITニュース解説】Creational Design Patterns in Python. Part II

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Creational Design Patterns in Python. Part II」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

複雑なオブジェクトを段階的に組み立てるBuilderパターンと、既存オブジェクトを複製して作るPrototypeパターンを解説。Builderは設定項目が多い場合に、Prototypeはテンプレートから類似オブジェクトを多数作る場合に便利である。(114文字)

出典: Creational Design Patterns in Python. Part II | Dev.to公開日:

ITニュース解説

ソフトウェア開発の世界には、先人たちが発見した優れた設計の型である「デザインパターン」が存在する。これは、特定の問題に対して効果的な、再利用可能な解決策のことであり、コードをより柔軟で、変更に強く、理解しやすいものにするための知恵の結晶である。デザインパターンの中でも、オブジェクトをどのように生成するかという点に特化したものを「生成に関するデザインパターン」と呼ぶ。今回はその中から、複雑なオブジェクトを効率的に組み立てるための「Builderパターン」と、既存のオブジェクトを複製して新たなオブジェクトを作る「Prototypeパターン」について解説する。

まず、Builderパターンについて説明する。このパターンは、多くの部品や設定項目から構成される複雑なオブジェクトを、段階的に、一歩ずつ組み立てるための手法である。例えば、ウェブサービスと通信するためのAPIリクエストを考えてみよう。リクエストには、通信方法(GETやPOSTなど)、宛先のURL、認証情報を含むヘッダー、検索条件となるパラメータ、そして送信するデータ本体(ボディ)など、非常に多くの設定項目が含まれることがある。これらの設定項目を、オブジェクトを生成する際のコンストラクタ(Pythonでは__init__メソッド)の引数として一度に全て渡そうとすると、引数の数が膨大になり、どの引数がどの設定に対応するのかが分かりにくく、順番を間違えるなどのミスも起こりやすくなる。特に、設定が必須でないオプション項目が多い場合にこの問題は顕著になる。Builderパターンは、このような問題を解決するために用いられる。オブジェクトそのものを直接生成する代わりに、まず「ビルダー」と呼ばれる別のオブジェクトを用意する。このビルダーは、完成させたいオブジェクトの部品を一つずつ設定するためのメソッドを持っている。例えば、「set_method」で通信方法を、「set_url」で宛先を、「add_header」でヘッダーを追加するというように、メソッドを連続して呼び出すことで、オブジェクトの構成を一つずつ決めていく。この方法はメソッドチェーンと呼ばれ、コードが「何を」「どのように」設定しているのかが直感的に理解しやすくなるという利点がある。全ての部品の設定が終わったら、最後に「build」メソッドを呼び出すことで、設定された内容に基づいて完成したオブジェクトが生成される。このように、オブジェクトの複雑な生成プロセスを、オブジェクトそのものから分離し、ビルダーに担当させることで、コードの可読性と保守性を高めることができる。さらに、特定の種類のオブジェクトを生成する手順が決まっている場合は、「ディレクター」という役割を導入することもある。ディレクターはビルダーを使い、あらかじめ定義された手順に従ってオブジェクトを組み立てるため、利用者は毎回同じ手順を繰り返す必要がなくなり、より簡単に目的のオブジェクトを生成できる。

次に、Prototypeパターンを解説する。このパターンは、新しいオブジェクトをゼロから生成するのではなく、既存のオブジェクトを「原型(プロトタイプ)」として複製(クローン)することによって、新たなオブジェクトを生成する手法である。オブジェクトの生成プロセスが非常にコスト高である場合に特に有効となる。例えば、アプリケーションの初期化時にデータベースから大量のデータを読み込んだり、複雑な計算を行ったりして、ようやく一つのオブジェクトが完成するようなケースを想像してほしい。このような重い処理を経て作られたオブジェクトと少しだけ設定が異なる、類似のオブジェクトが多数必要になった場合、毎回同じ重い処理を繰り返してゼロから生成するのは非常に非効率である。Prototypeパターンは、このような状況で力を発揮する。まず、時間やリソースをかけて「原型」となるオブジェクトを一つだけ生成する。そして、新しいオブジェクトが必要になった際には、コンストラクタを呼び出してゼロから作り直すのではなく、この原型オブジェクトの「clone」メソッドを呼び出して、その完全なコピーを瞬時に作成する。あとは、コピーして作られた新しいオブジェクトに対して、原型と異なる部分だけを変更すればよい。これにより、生成にかかるコストを大幅に削減できる。重要なのは、単なる参照のコピー(浅いコピー)ではなく、オブジェクトが内部に持つデータも含めて全てを複製する「深いコピー」を行う点である。これにより、複製元のオブジェクトと複製先のオブジェクトが互いに影響を与えない、完全に独立したインスタンスとして扱えるようになる。このパターンは、設定の大部分が共通しているオブジェクトをテンプレートとして用意しておき、そこからバリエーションを作成するような場面、例えば、ゲームで同じ種類の敵キャラクターを大量に出現させたり、文書のテンプレートから新しい文書を作成したりする場合にも適している。

では、BuilderパターンとPrototypeパターンはどのように使い分ければよいのだろうか。両者はオブジェクトを生成するという目的は同じだが、解決しようとしている問題が異なる。Builderパターンは、「オブジェクトの組み立てプロセスそのものが複雑な場合」に選択する。多数のオプションパラメータがあり、それらの組み合わせによって多様な表現を持つオブジェクトを生成する必要がある場合に、その構築プロセスを明確かつ柔軟に管理するのに役立つ。一方、Prototypeパターンは、「オブジェクトの生成コストが高い場合」や「既存のオブジェクトと非常によく似たオブジェクトを多数生成したい場合」に選択する。毎回ゼロからインスタンス化するよりも、既存のインスタンスをコピーする方がはるかに効率的な状況で真価を発揮する。つまり、構築の「プロセス」に焦点を当てるのがBuilder、生成の「コスト」や「効率」に焦点を当てるのがPrototypeと理解するとよいだろう。

これらのデザインパターンを学ぶことは、単にコードの書き方を覚えるだけでなく、ソフトウェア設計における問題解決の考え方を身につけることにつながる。オブジェクトをいかにして生成し、管理するかは、多くのアプリケーションで共通の課題である。BuilderパターンとPrototypeパターンを適切に使い分けることで、より堅牢で、再利用性が高く、保守しやすいシステムを構築するための大きな一歩となるだろう。