【ITニュース解説】Creational Design Patterns in Python. Part I
2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Creational Design Patterns in Python. Part I」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
ソフトウェア設計の定石「デザインパターン」のうち、オブジェクトの作り方を扱う「生成パターン」をPythonで解説。FactoryやSingletonといった手法は、オブジェクト生成の具体的な処理を隠蔽し、柔軟で保守性の高いシステム構築に役立つ。(119文字)
ITニュース解説
ソフトウェア開発において、経験豊富な開発者たちは繰り返し発生する特定の問題に対して、効果的で再利用可能な解決策を見出してきました。このような設計上のベストプラクティスを体系的にまとめたものが「デザインパターン」です。デザインパターンは大きく3種類に分類されますが、その中でもオブジェクトの生成プロセスに焦点を当てたものが「生成系(Creational)デザインパターン」です。これは、どのようにオブジェクトが作られ、組み合わされ、表現されるかという具体的なロジックを隠蔽し、システム全体の柔軟性を高めることを目的としています。ここでは代表的な3つの生成系デザインパターンである「Factory」「Abstract Factory」「Singleton」について、初心者にも理解しやすいように解説します。
最初に紹介するのは「Factoryパターン」です。プログラムを書く際、new クラス名() のようにしてオブジェクトのインスタンスを生成しますが、この方法では利用したいクラスの種類が変わるたびに、コードを直接書き換える必要が生じます。システムの規模が大きくなると、このような修正箇所は無数に増え、保守が非常に困難になります。Factoryパターンは、この問題を解決するために、オブジェクト生成の処理を専門の「工場(Factory)」クラスに任せる手法です。利用者は、工場に対して「どのような種類のオブジェクトが欲しいか」を伝えるだけで、工場が適切なクラスを選んでインスタンスを生成し、返してくれます。記事の例では、メール、Slack、SMSで通知を送るシステムが紹介されています。NotificationFactory という工場クラスが、"email" という文字列を受け取れば EmailSender を、"slack" であれば SlackSender のインスタンスを生成します。これにより、通知を送りたい側のプログラムは、具体的な送信クラスの存在を意識する必要がなくなります。将来、新しい通知手段(例えばLINE)を追加したくなった場合でも、新しい送信クラスを作成し、工場の内部ロジックを少し変更するだけで対応が完了します。利用側のコードには一切手を加える必要がないため、システムを疎結合、つまり各部品の独立性を高く保つことができ、拡張性や保守性を大幅に向上させることが可能です。
次に「Abstract Factoryパターン」です。これはFactoryパターンをさらに発展させた考え方で、単一のオブジェクトではなく、互いに関連し合う一連のオブジェクト群(ファミリー)をまとめて生成するためのパターンです。製品ラインナップ全体を一度に切り替えるようなイメージを持つと分かりやすいでしょう。記事では、AWSやGCPといった異なるクラウドプラットフォーム上で動作するアプリケーションを例に挙げています。データベース、キャッシュ、メッセージキューといったサービスは、どのクラウドにも存在しますが、その実装方法はそれぞれ異なります。Abstract Factoryパターンを用いると、「AWS用の部品をまとめて作る工場(AWSFactory)」と「GCP用の部品をまとめて作る工場(GCPFactory)」を用意できます。アプリケーションは、起動時にどちらの工場を利用するかを選択するだけで、システム全体で利用するインフラ部品一式をAWS用からGCP用へ、あるいはその逆へと簡単に入れ替えることができます。このように、互換性のあるコンポーネント群を扱う際に絶大な効果を発揮し、システム全体を特定のプラットフォームやライブラリに強く依存させることなく、柔軟な構成変更を可能にします。
最後に「Singletonパターン」です。これは、あるクラスのインスタンスが、プログラム全体を通じて絶対に一つしか存在しないことを保証するためのデザインパターンです。アプリケーション全体で共有すべき設定情報や、データベースへの接続プール、ログ出力を行うロガークラスなど、インスタンスが複数存在すると不整合やリソースの無駄遣いを引き起こすような場合に利用されます。Singletonパターンでは、クラス自身が唯一のインスタンスを管理し、外部から何度インスタンス生成が要求されても、常に最初に生成した一つだけのインスタンスを返すように実装します。これにより、プログラムのどこからアクセスしても、必ず同じインスタンスを参照できることが保証され、状態の一貫性を保つことができます。ただし、どこからでもアクセスできるグローバルな状態を持つことになるため、クラス間の依存関係が複雑化し、テストが難しくなるというデメリットもあります。そのため、利用する場面は慎重に選ぶ必要があります。
これら3つの生成系デザインパターンは、オブジェクトをどのように作るかという問題に対して、それぞれ異なるアプローチで解決策を提供します。Factoryパターンは単一のオブジェクト生成を、Abstract Factoryパターンは関連するオブジェクト群の生成を、そしてSingletonパターンはインスタンスの唯一性を保証します。これらのパターンを学ぶことは、単にコードの書き方を覚えるだけでなく、いかにして柔軟で保守しやすく、拡張性の高いソフトウェアを設計するかという、エンジニアにとって不可欠な思考法を身につけることに繋がります。