【ITニュース解説】Ever heard of Cryptographic Failure? 👀 Here’s why it’s chilling in the OWASP Top 10 😎
2025年09月07日に「Dev.to」が公開したITニュース「Ever heard of Cryptographic Failure? 👀 Here’s why it’s chilling in the OWASP Top 10 😎」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
OWASP Top 10の脆弱性「暗号化の失敗」は、パスワード等の重要データを守る暗号化が不適切な場合に発生する。古い技術の使用や設定ミスが原因で、機密情報が漏洩する危険がある。安全なWebアプリ開発には、正しい暗号化の理解が必須である。
ITニュース解説
Webアプリケーションのセキュリティを考える上で、世界中の専門家が指標としているリストに「OWASP Top 10」がある。これは、Webアプリケーションに潜む重大なセキュリティリスクを深刻度や発生頻度に基づいてランク付けしたもので、多くの開発者やセキュリティ担当者が参考にしている。このリストで上位に位置するのが「暗号化の失敗(Cryptographic Failure)」と呼ばれる脆弱性だ。これは、個人情報やパスワードといった機密データを保護するための暗号化が、不適切であったり、そもそも実施されていなかったりする状態全般を指す。以前は「機密データの公開」という名称だったが、その根本原因が暗号化の不備にあることから、より問題の本質を捉えた現在の名称に変更された経緯がある。この脆弱性は、ユーザーの信頼とシステムの安全性を根底から揺るがす深刻な問題である。
暗号化とは、データを特定の計算手順(アルゴリズム)と秘密の鍵を用いて、第三者には意味のわからない形式に変換する技術である。これにより、万が一データが盗まれても、その内容を読み取られることを防ぐ。しかし、この暗号化の実装を誤ると、その防御機能は全く意味をなさなくなる。「暗号化の失敗」にはいくつかの典型的なパターンが存在する。最も基本的な失敗は、保護すべきデータを暗号化せずに、そのままの形式、いわゆる平文でデータベースに保存したり、ネットワーク上で送受信したりすることである。例えば、ユーザーのパスワードを暗号化せずにデータベースに保存していた場合、データベースが侵害されると全ユーザーのパスワードが流出し、他のサービスへの不正ログインなど二次被害につながる。
また、暗号化を施していても、その方法が時代遅れであったり、脆弱であったりするケースも問題となる。例えば、MD5やSHA-1といった古いハッシュアルゴリズムは、現在では計算能力の向上により、元の値を推測されやすくなっており、パスワードの保護には不適切である。同様に、古く脆弱性が指摘されている暗号アルゴリズムを使い続けることも、攻撃者による解読のリスクを高める。
さらに、暗号化の強度を左右する「鍵」の管理が不適切であることも、重大な失敗につながる。暗号化アルゴリズム自体が強力であっても、それを解くための鍵が簡単に入手できてしまえば、暗号は無力化される。プログラムのソースコード内に鍵を直接書き込む「ハードコーディング」は、その典型例である。ソースコードが何らかの形で漏洩すれば、鍵も同時に流出してしまう。その他にも、推測しやすい単純な鍵の使用、鍵を安全でない場所に保管する、鍵を長期間変更せずに使い続けるといった不適切な運用は、すべて暗号システム全体の強度を著しく低下させる。
このような暗号化の失敗が引き起こす被害は甚大である。クレジットカード情報、医療情報、個人の連絡先といった機密データが漏洩すれば、直接的な金銭被害やプライバシーの侵害につながる。企業にとっては、顧客からの信頼を失い、ブランドイメージが大きく損なわれるだけでなく、法的な責任や多額の賠償金を問われる可能性もある。一度漏洩したデジタルデータは完全に取り戻すことが極めて困難であり、その影響は長期にわたって続くことになる。
システムエンジニアを目指す者として、この「暗号化の失敗」を防ぐためには、データのライフサイクル全体を通してセキュリティを意識する必要がある。まず、アプリケーションが扱うデータを分類し、どれが保護すべき機密情報なのかを明確に定義することが第一歩となる。その上で、保存時と通信時の両方で、データを常に暗号化することを徹底する。通信にはTLS(Transport Layer Security)を適用し、すべての通信をHTTPS化することが基本である。データの保存には、AES(Advanced Encryption Standard)など、現在標準として推奨されている強力な暗号アルゴリズムを選択し、パスワードのような復元が不要なデータには、bcryptやArgon2といった専用のハッシュ関数を使用するべきだ。そして、暗号化の鍵は、鍵管理システム(KMS)のような専用の仕組みを用いて厳重に管理し、ソースコードからは完全に分離する必要がある。自分で暗号化の仕組みをゼロから実装することは避け、専門家によって十分に検証された信頼性の高いライブラリやフレームワークの機能を正しく利用することが、安全なシステムを構築する上で不可欠である。データ保護の根幹をなす暗号化技術を正しく理解し、適切に実装する能力は、これからのシステムエンジニアにとって極めて重要なスキルと言える。