IANA(アイエーエヌエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IANA(アイエーエヌエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アイアナ (アイアナ)

英語表記

IANA (アイエーエヌエー)

用語解説

IANA(Internet Assigned Numbers Authority)は、インターネットが世界中で正しく機能するために不可欠な、各種識別子の割り当てと管理を一元的に行う組織である。インターネットは世界中の無数のコンピュータやネットワークが相互に接続することで成り立っているが、この巨大なネットワークが混乱なく運用されるためには、それぞれの機器や通信ルールに重複しない一意の番号や名前が必要となる。IANAは、その根幹となるIPアドレス、ドメイン名、プロトコル番号といった資源を管理する役割を担っており、インターネットにおける中央調整機関として機能している。システムエンジニアを目指す上で、このインターネットの基盤を支える組織の存在と役割を理解することは極めて重要である。

IANAの最も重要な役割の一つが、IPアドレスとAS番号の管理である。IPアドレスは、インターネットに接続されたコンピュータやサーバーなどの機器を特定するための、いわばインターネット上の住所に相当する。IANAは、このIPアドレスを個々のユーザーや企業に直接割り当てるわけではない。その代わりに、世界を5つの地域(アジア太平洋、北米、ヨーロッパ・中東・中央アジア、ラテンアメリカ・カリブ海、アフリカ)に分け、それぞれの地域を管轄する地域インターネットレジストリ(RIR)に対して、大きなIPアドレスのブロックを割り振る。各RIRは、割り振られたIPアドレスブロックを、さらに自地域内の国別インターネットレジストリ(NIR)や、主にインターネットサービスプロバイダ(ISP)などのローカルインターネットレジストリ(LIR)に分配する。そして最終的に、ISPなどを通じて企業や個人ユーザーにIPアドレスが割り当てられる。このような階層的な管理体制を採ることで、限りあるIPアドレス資源の効率的かつ公平な分配を実現している。また、AS番号(自律システム番号)は、ISPなどのネットワーク事業者ごとのネットワーク群を識別するための番号であり、インターネット上の経路制御プロトコルであるBGPで利用される。このAS番号の割り当ても、IPアドレスと同様にIANAがRIRへ割り振る形で行われる。

次に、ドメイン名の管理もIANAの重要な責務である。IPアドレスは数字の羅列であるため人間には覚えにくい。そこで、example.comのような人間が理解しやすい文字列であるドメイン名が利用される。このドメイン名とIPアドレスを対応付ける仕組みがDNS(Domain Name System)である。IANAは、このDNSの階層構造の頂点に位置するルートゾーンを管理している。具体的には、「.com」や「.org」といったジェネリックトップレベルドメイン(gTLD)や、「.jp」(日本)や「.us」(米国)といった国コードトップレベルドメイン(ccTLD)の管理を行う。IANAは、各TLDを管理・運用する組織(レジストリ)を定め、そのレジストリの情報をルートゾーンデータベースに登録する。このルートゾーンの情報は世界中のDNSサーバーに参照され、インターネット全体の名前解決の起点となる。したがって、IANAによるルートゾーンの正確な管理は、世界中のユーザーがウェブサイトへ正しくアクセスできることを保証する上で不可欠な業務である。

さらに、IANAはプロトコルパラメータの管理も行っている。インターネット上での通信は、HTTPやFTP、SMTPといった様々なプロトコル(通信規約)に基づいて行われる。これらのプロトコルが円滑に機能するためには、通信の種類を識別するための番号や、データの形式を示す符号などが標準化され、重複なく管理される必要がある。IANAは、こうしたプロトコル内で使用される様々なパラメータの登録簿(レジストリ)を維持管理している。その代表例がポート番号である。Web通信で使われるHTTPは80番、暗号化されたWeb通信であるHTTPSは443番といったように、特定のアプリケーションやサービスには標準的に使用されるポート番号が割り当てられている。これをウェルノウンポートと呼び、この割り当てを管理しているのがIANAである。この管理により、世界中のどのコンピュータでも、80番ポートにアクセスすればWebサーバーと通信できることが保証される。他にも、電子メールで添付ファイルの種別を識別するMIMEタイプ(例: image/jpeg)や、言語コード、文字コードなど、多岐にわたるパラメータがIANAによって管理されており、異なるベンダーが開発したソフトウェアやハードウェア同士が問題なく相互運用できる基盤を提供している。

IANAの機能は、現在、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という非営利法人が監督しており、その実務はICANN内のPTI(Public Technical Identifiers)という組織によって担われている。もともとはインターネットの黎明期に研究者ジョン・ポステル氏が個人ベースで始めた管理業務が発展したものであり、インターネットの成長と共にその重要性が増し、グローバルな協力体制の下で運営される現在の形へと移行した。このように、IANAはIPアドレス、ドメイン名、プロトコルパラメータという、インターネットを構成する3つの基本的な識別子を一元的に管理することで、特定の国や組織に依存しない、安定的でグローバルなインターネットの運用を支える、極めて重要な役割を果たしているのである。