IoTエリアネットワーク(アイオーティーエリアネットワーク)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IoTエリアネットワークとは、多種多様なセンサーやデバイス、アクチュエーターといった「モノ」を相互に、あるいはインターネットに接続するための通信網を指す。これは、IoTシステムを構成する上で極めて重要な役割を担う要素である。IoTシステムは、大別して「デバイス層」「ネットワーク層」「プラットフォーム・アプリケーション層」の三層構造で捉えられることが多い。この中でIoTエリアネットワークは、最前線に位置するデバイス層と、データを集約・処理する上位層とをつなぐネットワーク層の中核を成す。その主な目的は、様々な制約を持つIoTデバイスからデータを効率的かつ確実に収集し、ゲートウェイやクラウドシステムへ伝送することにある。従来のインターネット接続で利用されるWi-Fiや携帯電話網（セルラーネットワーク）もネットワーク技術の一種であるが、IoTエリアネットワークは、特にIoTデバイスの特性に合わせて最適化された通信技術群の総称として理解される。例えば、多くのIoTデバイスはバッテリーで長期間駆動する必要があるため、極めて消費電力の少ない通信方式が求められる。また、工場やビル、都市全体といった広範囲に多数のデバイスを設置する場合、それらすべてを安定して接続できる能力も不可欠となる。このように、通信速度だけでなく、省電力性、通信距離、接続可能デバイス数、コストといった多様な要求に応えるため、様々な通信技術が用途に応じて使い分けられている。

IoTエリアネットワークを構成する通信技術は、その通信距離や特性によって多岐にわたる。まず、比較的短い距離をカバーする技術として、Bluetooth Low Energy（BLE）やWi-Fi、Zigbeeなどが挙げられる。BLEは、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルデバイスや、店舗での位置情報発信に用いられるビーコン端末で広く採用されている。その名の通り、非常に低い消費電力で動作するのが最大の特徴であり、ボタン電池一つで数年間稼働することも可能である。Wi-Fiは、高速なデータ通信が可能であるため、監視カメラの映像伝送やスマートスピーカーのように、常時電源が確保でき、かつ大容量のデータを扱うデバイスに適している。ただし、消費電力が大きいという課題もある。ZigbeeやZ-Waveは、スマートホーム分野で照明や空調、ドアセンサーなどを接続するために利用されることが多い。これらの技術は、デバイス同士がバケツリレーのようにデータを中継し合う「メッシュネットワーク」を構築できるため、通信範囲を柔軟に拡張でき、障害にも強いという利点を持つ。次に、より広範囲の通信を実現する技術としてLPWA（Low Power Wide Area）が存在する。これは日本語で「省電力広域無線通信」と訳され、IoTの普及を支える重要な技術群である。LPWAは、キロメートル単位の長距離通信を極めて低い消費電力で実現することを目的として設計されている。その代表例として、LoRaWAN、Sigfox、NB-IoT、LTE-Mがある。LoRaWANとSigfoxは、免許が不要な周波数帯（アンライセンスバンド）を利用するため、企業や自治体が自前で通信環境を構築することも可能であり、柔軟なエリア設計ができる。これらは通信速度が非常に低い代わりに、圧倒的な省電力性と長距離通信性能を誇り、スマート農業における土壌センサーや、インフラ監視、スマートメーターなど、少量のデータを定期的に送信する用途で活用される。一方、NB-IoTやLTE-Mは、携帯電話と同じ免許帯域（ライセンスバンド）を利用するセルラー系LPWAである。既存の携帯電話基地局インフラを活用できるため、広範なエリアを高品質かつ安定的にカバーできる。通信の信頼性やセキュリティが高いことから、フリート管理や遠隔での設備監視など、よりミッションクリティカルな用途に適している。これらの無線技術に加えて、有線通信も特定の状況では重要な選択肢となる。例えば、工場の生産ラインに設置された機器のように、移動の必要がなく、高速かつ安定した通信が絶対条件となる環境では、Ethernetが依然として主流である。また、電力線を通信媒体として利用するPLC（Power Line Communication）は、新たな通信ケーブルの敷設が困難な場所で有効な技術である。IoTエリアネットワークの構築においては、アプリケーションの要件、つまり、何を、どこで、どのように接続したいのかを明確にし、通信距離、通信速度、消費電力、コスト、セキュリティといった複数の要素を総合的に評価して、最適な通信技術を選定することがシステム全体の成否を分ける鍵となる。