NAC(エヌエーシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
NAC(エヌエーシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ネットワークアクセス制御 (ネットワークアクセスセイギョ)
英語表記
Network Access Control (ネットワークアクセス コントロール)
用語解説
NAC、すなわちNetwork Access Controlは、ネットワークに接続しようとするデバイスを検査し、認証し、その上で適切なアクセス権限を与えることで、企業のネットワークセキュリティを強化する仕組みである。その目的は、許可されていないユーザーやセキュリティポリシーに違反するデバイスがネットワークに接続し、情報漏洩やマルウェア感染などの脅威を引き起こすことを防ぐ点にある。システムエンジニアを目指す者にとって、今日の複雑なネットワーク環境において不可欠なセキュリティ技術の一つとして理解しておくべき概念だ。
近年、企業のネットワークには、従業員のPCやスマートフォン、タブレットだけでなく、IoTデバイスや持ち込みデバイス(BYOD: Bring Your Own Device)など、多種多様なデバイスが接続されるようになった。これらのデバイスがセキュリティ対策が不十分なままネットワークに接続されると、既存のセキュリティ対策を迂回して、マルウェアの侵入経路となったり、不正な情報持ち出しの温床となるリスクが高まる。NACは、このような脅威からネットワークを保護するための「門番」のような役割を果たす。ネットワークの入り口で接続を試みる全てのデバイスに対して、それが誰のもので、どのような状態にあるのかを厳しくチェックするのだ。
NACの核となる機能は、主に「認証」「健全性チェック(検疫)」「認可(アクセス制御)」の三つに分けられる。
まず「認証」とは、接続しようとしているデバイスやユーザーが、事前に登録され、ネットワークへの接続が許可されている正当な存在であるかを確認するプロセスを指す。これは、ユーザーIDとパスワードによる認証、クライアント証明書を用いたデバイス認証、MACアドレスによる認証など、様々な方法で実施される。例えば、従業員が会社のノートPCをネットワークに接続しようとした際、そのノートPCが会社で配布された正規のものであるか、そして接続しようとしている従業員が正規のユーザーであるかを確認する。不正なデバイスやアカウントによるアクセスは、この段階でブロックされる。
次に「健全性チェック」または「検疫」とは、デバイスがネットワークに接続される前に、そのセキュリティ状態が企業の定めるポリシーに合致しているかを検査する機能である。具体的には、オペレーティングシステム(OS)の最新パッチが適用されているか、アンチウイルスソフトウェアがインストールされ、定義ファイルが最新の状態に更新されているか、パーソナルファイアウォールが有効になっているか、あるいは特定の禁止ソフトウェアがインストールされていないか、といった項目がチェックされる。もしデバイスがこれらのセキュリティポリシーに違反している場合、そのデバイスはネットワークへのフルアクセスを許可されず、一時的に「検疫ネットワーク」と呼ばれる隔離されたネットワークに接続される。検疫ネットワークでは、インターネットアクセスのみが許可され、アンチウイルスソフトの更新やOSパッチの適用など、セキュリティ状態を修復するための最小限のリソースへのアクセスのみが許可される。デバイスのセキュリティ状態がポリシーに準拠するまで、本番ネットワークへの接続は制限されるのだ。
そして「認可」、すなわち「アクセス制御」とは、認証と健全性チェックの結果に基づき、デバイスに与えるネットワークリソースへのアクセス権限を決定するプロセスである。認証と健全性チェックをクリアしたデバイスは、完全にネットワークへの接続が許可され、必要なサーバーやアプリケーションにアクセスできるようになる。しかし、健全性チェックの結果、セキュリティポリシーに軽微な違反がある場合や、特定の部署のデバイスである場合など、必要に応じてアクセスできるリソースを制限することもある。例えば、営業部門のデバイスは顧客管理システムへのアクセスを許可するが、開発部門のサーバーにはアクセスできないように設定するといった具合だ。これにより、たとえ正規のデバイスであっても、その役割や状態に応じた適切なアクセス権限が付与され、最小権限の原則に基づいたセキュリティ運用が可能となる。
NACの動作は一般的に以下のようなフローを辿る。まず、デバイスがネットワークへの接続を試みると、NACシステムがそれを検知する。次に、NACシステムはそのデバイスの情報を収集し、設定された認証ポリシーに基づいてユーザーやデバイスの認証を行う。同時に、デバイスにインストールされたエージェントソフトウェア、あるいはエージェントレスな方法で、デバイスのセキュリティ状態をチェックする。これらのチェックが完了すると、NACシステムは企業のセキュリティポリシーに照らし合わせて、デバイスを本番ネットワークに接続させるか、検疫ネットワークに隔離するか、あるいは接続自体を拒否するかを判断し、適切なアクセス権限を付与する。この一連のプロセスは、デバイスがネットワークに接続するたびに行われるため、常にネットワークの健全性が保たれる。
NACを導入する形態としては、デバイスに専用のソフトウェア(エージェント)をインストールしてデバイス内部の状態を詳細にチェックする「エージェント型」と、デバイスにソフトウェアをインストールせず、ネットワーク機器や外部からの情報収集によって健全性を判断する「エージェントレス型」がある。エージェント型は詳細な情報が取得できる反面、管理対象デバイスへのインストールや更新が必要となる。エージェントレス型は導入や管理が比較的容易だが、取得できる情報に限りがある場合がある。どちらの方式を選択するかは、企業の要件や既存のネットワーク環境によって異なる。
NACの導入により、企業はネットワークセキュリティを大幅に向上させることが可能となる。不正なデバイスの接続を未然に防ぎ、マルウェア感染のリスクを低減するだけでなく、BYOD環境を安全に利用するための基盤を提供する。また、セキュリティポリシーの遵守を自動的に強制し、コンプライアンス要件への対応も支援する。システムエンジニアにとって、ネットワーク環境の設計や運用において、NACはセキュリティを担保するための重要な要素であり、その仕組みと役割を深く理解することは必須であると言える。