NR(エヌアール)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
NR(エヌアール)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
新規リリース (シンキロリリース)
英語表記
NR (エヌアール)
用語解説
NRは「New Radio」の略であり、第五世代移動通信システム(5G)の中核をなす無線アクセス技術を指す。これは、携帯電話やIoTデバイスなどが基地局と通信するために使用する電波の送受信方式、プロトコル、フレームワーク全般を包括する概念である。従来の第四世代移動通信システム(4G)で用いられていたLTE(Long Term Evolution)の後継技術として、より高速、大容量、低遅延、多数同時接続を実現するために開発された。NRは、スマートフォンやタブレットなどのモバイルブロードバンド通信の高度化だけでなく、産業用途でのIoT、自動運転、遠隔医療といった多岐にわたる新しいサービスやユースケースを支える基盤技術となることを目指している。
詳細に述べると、NRは国際的な標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)によって標準化が進められ、5Gの要件を満たすために設計された。その最大の特徴は、非常に広範な周波数帯域に柔軟に対応できる点にある。具体的には、従来のモバイル通信で使われてきた6GHz以下の「Sub-6 GHz」帯域に加え、高速・大容量通信に適した「ミリ波」(mmWave、24GHz以上の高周波数帯)も利用可能である。この周波数帯の拡張により、都市部での高速通信から、広域カバーが求められる地域での効率的な通信まで、多様な環境での利用が想定されている。
NRの技術的な要素として重要なのが、Massive MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)の採用である。これは、基地局と端末がそれぞれ多数のアンテナを搭載し、複数のデータストリームを同時に送受信することで通信容量を大幅に向上させる技術である。特に、ミリ波帯域では電波の直進性が強く、障害物の影響を受けやすいため、複数のアンテナで電波の向きを制御するビームフォーミング技術と組み合わせて、効率的な通信を実現する。これにより、特定の端末に対して集中的に電波を送信し、通信品質を高めることが可能となる。
また、NRは動的なフレーム構造を採用しており、通信の要件に応じて柔軟にリソースを割り当てることが可能である。これにより、高速データ通信が必要な場合には大容量を、低遅延が求められる場合には迅速な応答を、といった具合に、利用シーンに応じた最適な通信性能を提供できる。例えば、自動運転車のようにミリ秒単位の遅延が許されないアプリケーションでは、超低遅延通信(URLLC: Ultra-Reliable Low-Latency Communications)の機能が活用される。URLLCは、信頼性の高い通信と極めて低い通信遅延を両立させることで、リアルタイム性が重視される産業分野や公共インフラでの活用が期待されている。一方、高精細な動画ストリーミングやVR/ARコンテンツでは、拡張モバイルブロードバンド(eMBB: enhanced Mobile Broadband)により超高速・大容量の通信が提供される。eMBBは、従来のモバイルブロードバンド体験を劇的に向上させ、よりリッチなデジタルコンテンツの利用を可能にする。さらに、スマートメーターや多数のセンサーを接続するIoTデバイスの分野では、多数同時接続(mMTC: massive Machine Type Communications)機能により、膨大な数のデバイスを効率的にネットワークに接続できる。mMTCは、広範囲に分散する多くの小型デバイスからのデータ収集を可能にし、スマートシティやスマート農業といった分野での応用が期待されている。
NRはまた、ネットワークスライシングという概念と密接に関連している。これは、物理的なネットワークインフラを論理的に分割し、各サービスやアプリケーションの特性に応じた仮想的なネットワーク(スライス)を動的に生成する技術である。NRは無線アクセス部分でこのスライシングをサポートし、例えば、あるスライスは自動運転向けに低遅延を保証し、別のスライスは一般的なスマートフォン通信向けに高速性を重視するといった柔軟な運用を可能にする。これにより、多様なサービス要件を単一の物理ネットワーク上で同時に満たすことができるようになる。
5Gの導入にあたっては、大きく分けて二つのデプロイメントオプションがある。一つは「NSA (Non-Standalone) NR」であり、これは既存の4G LTEコアネットワークと制御プレーンを維持しつつ、データプレーンのみにNRの無線アクセス技術を導入する方式である。制御プレーンは通信の確立や管理を行い、データプレーンは実際のデータ転送を行う部分である。NSA NRは、既存の設備投資を有効活用しながら、迅速に5Gサービスを開始できる利点があるため、初期の5G導入で広く採用された。もう一つは「SA (Standalone) NR」であり、これはNRの無線アクセス技術と5G専用のコアネットワーク(5GC: 5G Core)を完全に組み合わせた方式である。SA NRは、NSA NRでは実現が難しかった超低遅延やネットワークスライシングといった5Gの真価を最大限に発揮するための最終的な形態と位置づけられている。SA NRの導入により、5Gは独立した完全なネットワークとして機能し、そのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になる。
NRは単なる通信速度の向上に留まらず、AI、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティングといった最新のIT技術と連携することで、これまでの情報社会では想像しえなかった新たなサービスや産業の創出を促すことが期待されている。例えば、エッジコンピューティングとの組み合わせにより、データの処理がユーザーの近くで行われ、NRの低遅延性能と相まって、より高速で応答性の高いアプリケーションの実現に貢献する。システムエンジニアを目指す者にとって、NRはこれからのITインフラの根幹をなす技術として、その原理と応用を理解しておくことは非常に重要である。この技術の理解は、将来のネットワーク設計、サービス開発、運用管理において不可欠な知識となるだろう。