QSFP(キューエスエフピー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
QSFP(キューエスエフピー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
クアッド・スモール・フォーム・ファクター・プラガブル (クアッド・スモール・フォーム・ファクター・プラガブル)
英語表記
QSFP (キューエスエフピー)
用語解説
QSFPは、ネットワーク機器間で高速なデータ通信を実現するために使用される光トランシーバーの一種である。その名称は「Quad Small Form-factor Pluggable」の頭文字から取られており、現代のデータセンターや大規模な企業ネットワーク、通信事業者ネットワークにおいて、大容量の情報を迅速に伝送する上で不可欠な役割を担っている。電気信号を光信号に変換して光ファイバーケーブルを通じて送り出し、受信側で再び光信号を電気信号に戻すことで、長距離かつ高速なデータ伝送を可能にするモジュールである。特に、サーバーとスイッチ、あるいはスイッチ同士を接続する際に広く利用され、ネットワークインフラの性能を決定づける重要な部品の一つと言える。ネットワークの高速化と大容量化が常に求められる現代において、QSFPはその要求に応え続けるために進化してきた。
詳細に入る前に、QSFPというモジュールがネットワークの中でどのような位置づけにあるのかを理解することは、システムエンジニアを目指す上で非常に重要である。ネットワーク機器、例えばサーバーやスイッチには、データをやり取りするためのポートが備わっているが、これらのポートに直接光ファイバーケーブルを接続できるわけではない。そこで登場するのが、電気信号と光信号を相互に変換するトランシーバーモジュールである。QSFPは数あるトランシーバーモジュールの中でも、特に「Quad(4チャネル)」という特徴を持ち、複数のデータチャネルを束ねて高速化を実現している点が大きなポイントである。
「Quad Small Form-factor Pluggable」という名称を分解してみよう。「Quad」は「4倍」や「4つ」を意味し、QSFPモジュールが内部に4つの独立したデータ送受信チャネルを持っていることを示している。これにより、例えば1つのチャネルが10Gbps(ギガビット/秒)の速度を持つ場合、QSFP全体としては40Gbpsの通信速度を実現できる。このマルチチャネル構造が、QSFPが高い帯域幅を提供する最大の理由である。「Small Form-factor」は「小型形状」を意味し、比較的コンパクトなサイズ設計であることを示している。これにより、ネットワーク機器の前面パネルに多数のQSFPポートを搭載することが可能となり、ポート密度を高め、限られたスペース内で多くの接続を提供できるようになる。最後に「Pluggable」は「抜き差し可能」を意味し、QSFPモジュールがネットワーク機器のポートに容易に挿入したり取り外したりできる、ホットプラグ対応であることを示唆している。これにより、ネットワークを停止させることなくモジュールの交換やアップグレードが可能となり、運用性と保守性が向上する。
QSFPは技術の進化とともに様々な世代が登場している。初期の主要な世代として「QSFP+(クワッド・エスエフピー・プラス)」がある。これは主に40Gbpsのデータレートに対応し、各チャネルが10Gbpsで動作することで合計40Gbpsを実現した。データセンターや企業ネットワークで広く普及し、10Gbpsイーサネットから次世代への移行を支えた。
次に登場したのが「QSFP28(クワッド・エスエフピー・トゥエンティーエイト)」である。このモジュールは、各チャネルの速度を25Gbpsに向上させることで、合計100Gbpsのデータレートを実現した。QSFP28の「28」は、おおよそ各チャネルが28Gbps近い速度で動作することに由来するとされている。100Gbpsイーサネットの標準として広く採用され、より高速なデータ伝送が求められる現代のデータセンターやクラウドインフラにおいてデファクトスタンダードとなっている。QSFP28は、同じQSFPの物理フォームファクタを維持しつつ、内部の光学技術と電気的インターフェースを改良することで、大幅な高速化を達成した点が特筆される。
さらに高速化が進み、「QSFP56(クワッド・エスエフピー・フィフティーシックス)」が登場した。QSFP56は、各チャネルのデータレートを50Gbpsに向上させ、合計200Gbpsの通信速度を提供する。この高速化は、PAM4(Pulse Amplitude Modulation 4-level)と呼ばれる変調方式の採用によって可能になった。PAM4は、従来のNRZ(Non-Return-to-Zero)方式が1クロックサイクルで1ビットの情報を伝送するのに対し、1クロックサイクルで2ビットの情報を伝送できるため、物理的な信号レート(ボーレート)を大きく変えることなく実効データレートを倍増させることが可能である。これにより、既存の物理的な設計を大きく変更することなく、200Gbpsという高速通信を実現している。
そして、現在では「QSFP-DD(クワッド・エスエフピー・ディーディー)」が普及しつつある。この「DD」は「Double Density(ダブルデンシティ)」を意味しており、モジュールの物理サイズはQSFPやQSFP28とほぼ同じでありながら、内部に8つのデータチャネルを持つことで、さらなる高密度・高速化を実現している。各チャネルが50Gbpsで動作する場合、合計400Gbpsの通信速度を提供できる。将来的には、800Gbpsの通信も視野に入れている。QSFP-DDは、既存のQSFPポートとの下位互換性も考慮されており、データセンターの大規模なアップグレードパスにおいて柔軟性を提供する。
これらのQSFPモジュールは、使用する光ファイバーケーブルの種類や伝送距離によってさらに細分化される。例えば、短距離向けのマルチモードファイバー(MMF)を使用するSR(Short Reach)タイプや、長距離向けのシングルモードファイバー(SMF)を使用するLR(Long Reach)タイプ、さらには中距離向けのDR(Data center Reach)タイプやER(Extended Reach)タイプなどがある。それぞれのタイプは、伝送方式や到達距離、コストが異なり、ネットワーク設計者は用途に応じて最適なものを選択する。また、接続コネクタも、4つのチャネルを束ねて接続するMPO/MTPコネクタや、個別のチャネルに分岐して接続するLCコネクタなど、様々な種類がある。
QSFPの進化は、現代のデジタルインフラの発展に不可欠である。クラウドコンピューティング、ビッグデータ解析、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)といった技術が普及するにつれて、データセンターでは常にネットワーク帯域の需要が増大している。QSFPシリーズは、これらの需要に応えるべく、小型フォームファクタを維持しながら、モジュールあたりの通信速度とポート密度を飛躍的に向上させてきた。これにより、限られたスペースと電力でより多くのデータを処理できるようになり、データセンターの効率化とコスト削減にも貢献している。システムエンジニアにとって、これらの高速光トランシーバーの特性と種類を理解することは、将来のネットワーク設計や運用において非常に重要な基礎知識となるだろう。QSFPはこれからも進化を続け、未来のネットワークを支える基盤技術であり続けるに違いない。