Struts(ストラッツ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
Struts(ストラッツ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ストラッツ (ストラッツ)
英語表記
Struts (ストラッツ)
用語解説
Struts(ストラッツ)は、Java言語でWebアプリケーションを開発するためのオープンソースのフレームワークである。Apacheソフトウェア財団によって開発され、主に2000年代前半から中盤にかけて、JavaによるWebアプリケーション開発のデファクトスタンダードの一つとして広く利用された。Strutsは、Webアプリケーションの構造を明確にするための設計パターンであるMVC(Model-View-Controller)モデルを強力に推進し、開発者がアプリケーションのロジック、表示、制御を分離して開発できるように支援した。これにより、コードの保守性、再利用性、チーム開発における分業のしやすさが大きく向上した。しかし、現在ではより新しい技術やフレームワークが登場し、新規開発でStrutsが選択されることはほとんどなく、主に既存システムの保守運用で利用されている。
StrutsはMVCモデルに基づいてWebアプリケーションを構築する。MVCモデルとは、アプリケーションを「Model(モデル)」「View(ビュー)」「Controller(コントローラ)」の三つの役割に分けて設計する考え方である。Modelはアプリケーションのビジネスロジックやデータを扱い、Viewはユーザーインターフェース(画面表示)を担当し、Controllerはユーザーからの入力を受け付け、ModelとViewの連携を制御する。
Strutsにおける各役割は以下のコンポーネントによって実現される。
ControllerはStrutsのコアとなる部分で、ActionServletという特別なサーブレットがフロントコントローラとして機能する。フロントコントローラとは、全てのリクエストを最初に受け付け、そのリクエストの内容に応じて適切な処理を振り分ける役割を持つコンポーネントのことである。
Modelは、具体的なビジネスロジックを実行するJavaクラスやデータベースアクセスを行うクラスなどがこれに該当するが、Strutsフレームワーク自体がModelの実装を強制するわけではない。通常、ActionクラスがModelへの橋渡し役を務める。
Viewは主にJSP(JavaServer Pages)が用いられ、ユーザーへの情報表示を担当する。Strutsが提供する独自のタグライブラリを使用することで、JSP内でのロジック記述を減らし、表示に特化させることが可能だった。
Strutsの基本的な動作フローは以下のようになる。
- クライアント(Webブラウザなど)からWebアプリケーションに対してHTTPリクエストが送信される。
- Webサーバはこのリクエストをアプリケーションサーバ(Tomcatなど)に渡し、アプリケーションサーバは全てのリクエストを
ActionServlet(Strutsのフロントコントローラ)にディスパッチ(振り分け)する。 ActionServletは、アプリケーションの設定ファイルであるstruts-config.xmlを読み込み、受信したリクエストのURLパスに対応するActionFormクラスとActionクラスを特定する。struts-config.xmlには、どのURLに対してどの処理を実行するか、またどの画面に遷移するかといった情報が定義されている。ActionFormは、HTMLフォームから送信された入力データ(リクエストパラメータ)を保持するためのJavaBeansである。JavaBeansとは、特定の規約に従って記述されたJavaクラスで、プロパティとメソッドを持ち、コンポーネントとして再利用しやすい形式のものである。ActionServletはリクエストパラメータを自動的に対応するActionFormのプロパティにマッピング(割り当て)する。ActionFormでは、入力されたデータが正しい形式であるかどうかのバリデーション(入力値検証)を行うことができる。例えば、必須項目が入力されているか、数値形式のフィールドに文字が入力されていないかなどをチェックする。もしバリデーションエラーが発生した場合、ActionServletはエラーメッセージとともに元の入力画面へフォワード(転送)し、ユーザーに再入力を促す。- バリデーションが成功した場合、
ActionServletは特定されたActionクラスのexecuteメソッドを呼び出す。Actionクラスは、ActionFormから取得した入力データを用いて、実際のビジネスロジック(Model層の処理)を呼び出すなどの処理を実行する。 Actionクラスは処理の実行結果として、次画面への遷移先を示すActionForwardオブジェクトを返す。ActionServletはActionForwardオブジェクトが示すJSPなどのリソースへフォワードし、結果をクライアントに表示する。
Strutsの主な特徴と利点としては、MVCモデルの導入による開発の構造化、Webアプリケーションで頻繁に必要となるフォームデータの処理(マッピングやバリデーション)の自動化、国際化対応の容易さ、カスタムタグライブラリによるJSP記述の簡素化などが挙げられる。これにより、大規模なWebアプリケーションの開発や保守が効率的に行えるようになった。
しかし、Strutsにはいくつかの課題も存在した。設定をXMLファイルに記述するため、アプリケーションの規模が大きくなるにつれてstruts-config.xmlが複雑化し、メンテナンスが困難になる傾向があった。また、ActionFormやActionクラスはStrutsフレームワークに強く依存する設計(POJO、Plain Old Java Objectではない)であり、テストの際にフレームワークの知識が必要となるなど、特定のフレームワークへの結合度が高いという側面もあった。さらに、2000年代後半に入り、Ajaxに代表される非同期通信技術が普及し始めると、Struts 1のアーキテクチャはこのような新しいWebのトレンドに必ずしも最適ではなかった。
これらの課題に対応するため、StrutsはStruts 2へと進化したが、Struts 2はStruts 1とはアーキテクチャが大きく異なり、WebWorkという別のフレームワークをベースとしているため、実質的には別物と認識されている。Struts 2はアノテーションベースの設定やより柔軟なインターセプタ機能、値スタックの導入などにより、Struts 1の抱えていた問題の多くを解決した。アノテーションとは、ソースコード中に付与する特殊なメタデータで、設定情報を記述する際にXMLファイルを使用する代わりにJavaコード内で直接指定できるようになる。インターセプタは、アクションの実行前後に処理を挿入できる機能で、横断的な関心事(セキュリティチェックやロギングなど)を効率的に実装できる。しかし、Javaの世界では同時期にSpring FrameworkやJSF(JavaServer Faces)といったフレームワークが台頭し、現在では新規のWebアプリケーション開発において、これらの後継フレームワークや、Spring Bootのようなよりモダンなアプローチが主流となっている。Strutsは、Java Webアプリケーション開発の歴史において重要な役割を果たしたフレームワークであり、その設計思想やパターンは現代の多くのフレームワークにも影響を与え続けている。