VTEP(ブイテップ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
VTEP(ブイテップ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
仮想トンネルエンドポイント (カソウトンネルエンドポイント)
英語表記
Virtual Tunnel Endpoint (バーチャル トンネル エンドポイント)
用語解説
VTEP(VXLAN Tunnel End Point)とは、Virtual Extensible LAN(VXLAN)という技術において、仮想ネットワークと物理ネットワークの境界に位置し、データパケットのカプセル化と非カプセル化を行う終端点のことである。仮想マシンやコンテナがVXLANによって構築されたオーバーレイネットワークに参加するためのゲートウェイの役割を果たす、非常に重要な構成要素である。物理IPネットワーク上を、あたかも一つの大きな仮想ネットワークのように利用することを可能にする技術を支える中核機能の一つだ。
今日のデータセンターでは、サーバ仮想化の進展とクラウドコンピューティングの普及により、数多くの仮想マシンが稼働している。これらの仮想マシンは、それぞれ異なるネットワークに属したり、地理的に分散した環境に配置されたりしながらも、あたかも同一のレイヤー2ネットワークに接続されているかのように通信できることが求められる。しかし、従来のVLAN(Virtual LAN)技術には、VLAN IDが最大4094個までという制限や、レイヤー2ネットワークの範囲が物理的な制約を受けるという課題があった。このVLANの限界を克服し、大規模かつ柔軟な仮想ネットワークを構築するために考案されたのがVXLANである。VXLANは、既存の物理IPネットワーク上に仮想的なレイヤー2ネットワーク(オーバーレイネットワーク)を構築する技術であり、このオーバーレイネットワークの終端点がVTEPに他ならない。
VTEPの主な機能は、データのカプセル化と非カプセル化である。仮想マシンから送信された通常のイーサネットフレームは、まずVTEPに到達する。VTEPは、このイーサネットフレーム全体をUDP/IPパケットでカプセル化する。具体的には、元のイーサネットフレームの前にVXLANヘッダ、その後に標準のUDPヘッダとIPヘッダを付与する。VXLANヘッダには、そのフレームが属する仮想ネットワークを識別するためのVXLANネットワーク識別子(VNI: VXLAN Network Identifier)が含まれる。このVNIは24ビットの長さを持つため、理論上約1600万個の仮想ネットワークを識別可能であり、VLANの制限を大きく上回る。カプセル化されたパケットは、通常のIPパケットとして物理IPネットワーク上をルーティングされ、宛先のVTEPまで転送される。
宛先のVTEPに到着したカプセル化されたVXLANパケットは、非カプセル化の処理を受ける。このVTEPは、受信したUDP/IPパケットからVXLANヘッダ、UDPヘッダ、IPヘッダを剥ぎ取り、元のイーサネットフレームを取り出す。そして、取り出されたイーサネットフレームを、そのフレームが属するVNIに対応する仮想ネットワーク内の適切な仮想マシンに転送する。このように、VTEPは物理ネットワークと仮想ネットワークの間のプロトコル変換器として機能し、仮想マシンのトラフィックが物理ネットワークの制約を受けずに広範囲にわたって通信できるようにする。
また、VTEPはMACアドレスの学習も行う。自分の背後に接続されている仮想マシンのMACアドレスと、それらがどのVNIに属しているかを学習し、内部的なMACアドレステーブルを構築する。さらに、他のVTEPのMACアドレスとIPアドレスのマッピングも学習する必要がある。これにより、どの仮想マシンがどのVTEPに接続されているかを把握し、効率的なパケット転送経路を確立する。この学習プロセスは、当初はデータプレーンのフラッディング(未知のユニキャストパケットをすべてのVTEPに送信して学習を促す方法)によって行われることが多かったが、大規模な環境ではフラッディングが非効率であるため、近年ではEVPN(Ethernet VPN)のようなコントロールプレーンプロトコルを利用して、MACアドレスやIPアドレスの情報をVTEP間で交換する方法が主流になっている。
VTEPは、その実装形態によって大きく二つに分類される。一つは「ハードウェアVTEP」であり、これは物理ネットワークスイッチに組み込まれたVTEP機能である。主に物理サーバと接続するトップオブラック(ToR)スイッチなどに実装され、高い転送性能と低遅延が特徴である。もう一つは「ソフトウェアVTEP」であり、これはハイパーバイザー(VMware ESXi、KVMなど)上で動作する仮想スイッチ(Open vSwitchなど)やOSのカーネルモジュールとして実装される。ソフトウェアVTEPは柔軟性が高く、仮想マシンの移動や追加に迅速に対応できる利点がある。今日のデータセンターやクラウド環境では、両方のVTEPが連携して、効率的かつスケーラブルな仮想ネットワークを構築するために利用されている。
VTEPの存在により、ネットワーク管理者はVLANの制約に縛られることなく、物理的な距離やネットワークトポロジーに依存しない、大規模なレイヤー2ネットワークを構築できる。これにより、仮想マシンのライブマイグレーションがネットワーク境界を越えて可能になったり、マルチテナント環境におけるテナント間のネットワーク分離が容易になったりするなど、データセンター運用の柔軟性と効率性が飛躍的に向上している。VTEPは、現代の仮想化されたデータセンターやクラウドインフラストラクチャを支える基盤技術の一つであり、システムエンジニアが理解しておくべき重要な概念である。