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【ITニュース解説】The Missing Link: How to Retrieve Full Documents with AWS S3 Vectors

2025年09月14日に「Dev.to」が公開したITニュース「The Missing Link: How to Retrieve Full Documents with AWS S3 Vectors」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

AWS S3 Vectorsはベクトル索引のみを管理し、実際のフルドキュメントはS3に別途保存する必要がある。本記事は、S3 Vectorsで検索した結果のキーを使い、S3バケットから元のドキュメントを効率的に取得する連携方法を解説する。これにより、現実的なドキュメント検索システムを低コストで構築できる。

ITニュース解説

今日のITシステムにおいて、大量のドキュメントの中から必要な情報を効率的に見つけ出すことは、非常に重要な課題である。従来のキーワード検索では、テキストの表面的な一致に頼るため、文脈や意味を考慮した高度な検索は難しいという限界があった。この課題を解決する技術として、「ベクトル検索」が注目されている。AWSが提供するS3 Vectorsは、このベクトル検索を実現するためのサービスの一つであり、これを実用的なアプリケーションに組み込むためには、その特徴と、既存のAWSサービスとの連携方法を深く理解する必要がある。

多くのS3 Vectorsに関する解説記事やチュートリアルは、ベクトル自体をS3 Vectorsに登録する方法や、基本的な検索の仕組みに焦点を当てている。しかし、それらの解説では、実際の長いドキュメントをどのように保存し、ベクトル検索で見つかった情報と紐づけて取得するかという、システム構築において最も重要な側面が抜け落ちていることが多い。例えば、簡単なデモンストレーションでは、ごく短い文章(数単語から数文程度)をベクトルのメタデータに直接保存する手法が示されるが、これは現実世界の、数千文字や数万文字にも及ぶ本格的なドキュメントには応用できない方法である。ドキュメント全体をベクトルのメタデータに保存することは、ストレージの効率性やコストの観点から見ても非現実的である。

この解説では、S3 Vectorsを使って実際のフルドキュメントを効率的に保存し、ベクトル検索の結果からそのドキュメントを確実に取得する一連の完全なプロセスについて説明する。S3 Vectorsというサービスは、ドキュメントそのものを保存するのではなく、ドキュメントの内容を数値の並び(ベクトル)として表現した「ベクトルインデックス」のみを管理する。そのため、ドキュメント本体は別途、Amazon S3バケットのような標準的なストレージサービスに保存する必要がある。この「ベクトルインデックス」と「実際のドキュメント」の間に、開発者自身が橋渡しを構築することが、S3 Vectorsを使って実用的なシステムを構築する上で不可欠となる。

まず、ドキュメントをシステムに取り込み、ベクトルとしてインデックス化するプロセスは大きく三つのステップで構成される。第一に、元のドキュメントを通常のS3バケットに保存する。この際、ドキュメントを一意に識別するための「キー」を設定することが重要である。例えば、ウェブページのURLをハッシュ化してその値をS3オブジェクトキーとして利用するなどの方法が考えられる。これにより、後からこのキーを使ってS3バケットからドキュメントを効率的に取得できるようになる。第二に、S3バケットに保存したドキュメントの内容に基づいて「埋め込み」を生成する。埋め込みとは、テキストなどの情報をその意味的な特徴を保ちつつ、高次元の数値のリスト(ベクトル)に変換する技術である。AWS Bedrockのような大規模言語モデルサービスを活用して、この埋め込みを生成することが一般的である。第三に、生成された埋め込みをS3 Vectorsにインデックスとして保存する。この時、S3バケットにドキュメントを保存した際に使用したのと同じキーを、埋め込みのキーとしても設定することが非常に重要である。この共通のキーによって、S3バケットのドキュメントとS3 Vectorsのベクトルが明確に紐付けられ、後の検索と取得のプロセスが簡素化される。例えば、ウェブページのコンテンツをS3バケットに保存し、そのページのURLのハッシュ値をS3オブジェクトキーとして用いる。同時に、同じハッシュ値をキーとして、ページの内容から生成した埋め込みをS3 Vectorsに登録する流れである。

次に、このS3 Vectorsのインデックスを使ってドキュメントを検索し、取得するプロセスも三つのステップで構成される。第一に、ユーザーの検索クエリ、例えば「AWS S3 Vectorsの機能は何ですか?」といった質問文から、ドキュメントの埋め込みを生成した際と同じモデルを使って、クエリの埋め込み(ベクトル)を生成する。これにより、質問の意味内容が数値として表現される。第二に、生成されたクエリの埋め込みをS3 Vectorsに渡し、類似する埋め込みを検索する。S3 Vectorsは、クエリのベクトルと「距離」が近い、つまり意味的に関連性の高いベクトルを、上位N件といった形で返却する。この検索結果には、登録時に設定したベクトルのキーやメタデータが含まれる。第三に、S3 Vectorsから返された検索結果の各ベクトルに含まれるキーを利用して、対応する実際のドキュメントをS3バケットから取得する。先述の通り、このキーはS3バケットのオブジェクトキーと一致するため、このキーを使ってS3バケットから元のドキュメントを容易に見つけ出し、その内容を読み取ることができる。最終的に、検索クエリに最も関連性の高いドキュメントのタイトル、URL、内容などをユーザーに提示することが可能となる。

このアプローチの主要な利点は、S3 Vectorsがベクトルインデックスの管理に特化しているため、専用のベクトルデータベースを構築・運用するよりも大幅なコスト削減が期待できる点である。S3 Vectorsは、ベクトル検索という高度な機能を、既存のS3サービスとの連携を通じて提供する。しかし、この方法を採用する場合、ドキュメントの保存からベクトルの生成、インデックス化、そして検索結果からのドキュメント取得までの一連の処理を、開発者自身が設計し、コードとして実装する必要がある。つまり、ベクトルとドキュメントの間の「欠けていたリンク」を自分たちで構築する責任が伴うということである。この多段階の処理は、専用のベクトルデータベースが単一のAPIコールでドキュメントの保存と検索の両方を完了できる場合と比較して、システム全体の応答時間(レイテンシ)をわずかに増加させる可能性がある。それでも、S3オブジェクトキーとベクトルキーを一致させるというシンプルな設計により、この複雑さは最小限に抑えられ、高いコスト効率で強力なドキュメント検索システムを構築できる。

重要な考慮点として、実際のドキュメントは必ずしもS3バケットに保存されている必要はない。例えば、ウェブページのURLだけをS3 Vectorsのメタデータに保存し、検索結果としてURLを返すことで、その後の処理でユーザーや別のシステムがそのURLから直接ページをクロールして内容を取得することも選択肢となる。しかし、S3バケットにドキュメントを保存するアプローチは、ドキュメントの取得速度と安定性を高める上で非常に有効である。S3 VectorsとS3バケットを組み合わせることで、システムエンジニアは、大量の非構造化データの中から意味のある情報を効率的に探し出す、生産レベルのアプリケーションを構築するための強力なツールを手に入れることができる。

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