【ITニュース解説】Bash vs. Zsh vs. Fish

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Bash vs. Zsh vs. Fish」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

システム開発で必須のコマンドラインツール「シェル」には、Bash、Zsh、Fishの3種が主流だ。Bashは標準的で互換性が高いが設定は複雑。Zshは高機能でカスタマイズ性が魅力。Fishは使いやすく自動補完が優秀だが非POSIX。用途に合わせ試すと良い。

出典: Bash vs. Zsh vs. Fish | Dev.to公開日:

ITニュース解説

コマンドラインインターフェース、通称CLIは、システムエンジニアを目指す上で避けては通れない、コンピュータと直接対話するための基本的なツールだ。このCLIを操作する窓口となるのが「シェル」と呼ばれるプログラムである。シェルは私たちが入力したコマンドを解釈し、オペレーティングシステムに伝えて実行させる役割を担う。数あるシェルの中でも、Bash、Zsh、Fishの三つは特に人気が高く、それぞれ異なる特徴を持っている。どのシェルを選ぶかは、日々の作業効率や快適さに大きく影響するため、それぞれの特性を理解することが重要だ。

まずはBash(バッシュ)、正式名称「Bourne-Again Shell」について解説する。Bashは、ほとんどのLinuxディストリビューションや、macOSでもかつてはデフォルトシェルとして採用されていた、非常に普及しているシェルである。先代のBourneシェル(sh)の後継にあたり、業界標準であるPOSIXに準拠しているため、高い互換性と幅広いサポートが最大の強みだ。多くのシステムで標準として使われているため、Bashで書かれたスクリプトや設定は様々な環境で問題なく動作する可能性が高い。また、歴史が長くユーザーが多いため、オンライン上には膨大なドキュメントやチュートリアル、トラブルシューティングガイドが存在し、困ったときに解決策を見つけやすい。その成熟度から、安定性と信頼性も非常に高い。さらに、ループや条件分岐、変数処理など、複雑な自動化タスクを可能にする強力なスクリプト言語を備えている。

しかし、Bashにはいくつかのデメリットもある。カスタマイズしようとすると、設定ファイル(.bashrcなど)が複雑になりがちで、管理が難しいと感じるかもしれない。基本的なコマンドの習得は容易だが、高度なスクリプト記述や詳細な設定をマスターするには、それなりの時間と労力が必要となるため、学習曲線は比較的急だと言える。また、後述するZshやFishに比べると、初期状態での見た目の美しさや、構文ハイライトのような使いやすい機能は備えていない。Bashの主な機能としては、上下矢印キーで過去のコマンドを呼び出すコマンド履歴、ファイル名やコマンドの一部を入力してTabキーを押すと補完してくれるタブ補完、よく使うコマンドに短い別名を付けるエイリアス、繰り返し使う処理をまとめて定義するシェル関数、特定の条件でコマンドを実行する条件分岐、リストの項目を処理したり、条件が満たされるまで繰り返したりするループなどがある。

次にZsh(ゼットシェル)、「Z Shell」について見ていこう。ZshはBashと同じくBourneシェルの拡張版であり、Bashの機能を継承しつつも、より強力な自動補完機能、多様なテーマ、プラグインサポートなど、多くの改善が加えられている。その柔軟性とカスタマイズ性の高さで知られている。Zshの最大の魅力は、その優れた自動補完機能にある。コマンドのオプションや引数、さらには文脈に応じた候補まで表示してくれるため、非常に効率的に作業を進められる。また、そのカスタマイズ性は非常に高く、見た目や振る舞いのほとんどあらゆる側面を自分好みに調整できる。特に「Oh My Zsh」のようなフレームワークを利用することで、構文ハイライトやGit連携など、豊富なプラグインを簡単に導入・管理できる点も大きい。多くのテーマも利用でき、視覚的な楽しさも提供する。デフォルトでタイポを修正しようとする「correct」オプションなど、Bashと比較して初期状態での使いやすさも向上している。

Zshにも課題はある。Bashに比べて設定ファイル(.zshrc)はさらに複雑になる傾向がある。また、多くのプラグインや詳細な設定を適用すると、シェルの起動速度が遅くなる可能性がある。Oh My Zshのようなフレームワークは便利だが、それ自体が依存関係となり、学習コストや潜在的な問題を引き起こす可能性も否定できない。Zshの機能には、文脈に応じた提案を行う強力な自動補完、ファイル名パターンマッチング(グロビング)を拡張し、サブディレクトリ内のファイルを再帰的に検索できる機能、コマンドのタイポを自動修正するスペル修正、シェルプロンプトの見た目を変更するテーマやカスタマイズ、Git連携や構文ハイライトなどを追加するプラグイン、複数のシェルインスタンス間でコマンド履歴を共有する機能などがある。

最後にFish(フィッシュ)、「Friendly Interactive Shell」を紹介しよう。Fishは「ユーザーフレンドリー」という名が示す通り、箱から出してすぐに使えるよう、使いやすさを最優先に設計されたシェルである。直感的な機能と視覚的に魅力的なインターフェースが特徴だ。Fishの大きな利点は、特別な設定なしで、過去のコマンド履歴やマニュアルページ、現在の文脈に基づいて賢い提案を自動で行ってくれることである。また、コマンドや引数を自動的に色付けする構文ハイライト機能がデフォルトで有効になっており、コマンドを読みやすく、入力ミスに気づきやすくする。ウェブベースの設定インターフェースも用意されており、ブラウザから視覚的に簡単に設定を変更できる。エラーメッセージも非常に分かりやすく、親切だ。スクリプト言語もBashよりも直感的で、エラーを起こしにくい設計になっている。

しかし、Fishには決定的なデメリットも存在する。そのスクリプト言語がPOSIXに準拠していない点だ。これは、Bashで書かれた既存のスクリプトがFishではそのまま動作しない可能性が高いことを意味する。様々なシステムでBashスクリプトを実行する必要がある場合や、互換性が重要な場面では大きな問題となる。また、BashやZshに比べるとコミュニティの規模は小さく、特定のニッチな問題に対するサポートを見つけるのが難しいかもしれない。カスタマイズ性もZshほどは広範ではない。Fishの機能には、コマンド、引数、変数を色分けする構文ハイライト、履歴やマニュアル、文脈に基づくインテリジェントな自動補完と提案、ウェブブラウザから設定を変更できるウェブベースの設定、よく使うコマンドのショートカットをより柔軟に設定できる略語、そして再利用可能なコードブロックを定義する関数などがある。

三つのシェルを比較すると、Bashはどこでも使える互換性と標準準拠、豊富な情報が強みで、システムとの連携や標準的なスクリプト作成に向いている。Zshは強力な自動補完と圧倒的なカスタマイズ性、プラグインエコシステムが魅力で、個人の作業環境を最大限に最適化したいユーザーに適している。Fishは初期状態での使いやすさ、自動提案、構文ハイライトが優れており、コマンドライン初心者や、快適な操作感を重視するユーザーに最適だ。ただし、Bashスクリプトとの互換性には注意が必要である。

結局のところ、あなたにとって最適なシェルは、あなたの具体的なニーズや好みに依存する。移植性や標準への準拠が最も重要で、幅広いシステムでスクリプトが動作する必要があるならBashが最も安全な選択肢となる。強力な自動補完、豊富なカスタマイズ、活発なプラグインエコシステムを重視するならZshが素晴らしい選択肢となるだろう。一方、使いやすさ、視覚的に魅力的なインターフェース、最小限の設定で快適に作業したいならFishが魅力的な選択肢となるが、POSIX非準拠である点には留意が必要だ。最終的には、それぞれのシェルを実際にインストールして試してみるのが一番だ。現在のデフォルトシェルを完全に置き換えることなく、簡単に試すことができるため、自分のワークフローに最も合うものを見つけるためにぜひ体験してみることをお勧めする。コマンドライン設定に対する慣れや、スクリプト互換性の重要度を考慮して、自分に最適なシェルを選んでほしい。

【ITニュース解説】Bash vs. Zsh vs. Fish | いっしー@Webエンジニア