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【ITニュース解説】Conquering the CAP Theorem for System Design Interviews

2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Conquering the CAP Theorem for System Design Interviews」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

CAP定理は、分散システムがデータ整合性、サービス可用性、分断耐性の3つ全てを同時に保証できないことを示す。このため、整合性重視のCPか、可用性重視のAPか、目的に応じた2つの特性を選び、トレードオフを理解したシステム設計が重要だ。

ITニュース解説

CAP定理は、分散システムの設計において非常に重要な考え方である。システムエンジニアを目指す上で、この定理を理解することは、安定したシステムを構築し、面接で適切な設計を提案するために不可欠だ。

CAP定理は、エリック・ブルワーによって提唱されたもので、分散システムは「一貫性 (Consistency)」、「可用性 (Availability)」、「分断耐性 (Partition Tolerance)」という3つの特性のうち、常に2つしか同時に保証できないという原則を示している。この3つの特性がそれぞれ何を意味するのかを詳しく見ていこう。

まず「一貫性(Consistency)」とは、システム内のすべてのノードが同じデータの状態を持つことを意味する。例えば、銀行口座の残高がシステム内のどのサーバーで参照されても常に最新で同じ値を示すように、すべてのユーザーが同じ情報を見ることが保証される状態だ。これは、データに矛盾がないことを保証するために非常に重要である。

次に「可用性(Availability)」とは、システムが常に稼働しており、すべてのリクエストに対して成功か失敗かの応答を返すことを指す。たとえシステムの一部に問題が発生したとしても、システム全体としてはサービスを提供し続け、ユーザーからのリクエストに応答できる状態のことだ。ユーザーがサービスを利用しようとしたときに、常に何らかの反応が得られることが保証される。

最後に「分断耐性(Partition Tolerance)」とは、ネットワークの一部が分断されたり、ノード間で通信ができなくなったりしても、システム全体として動作を継続できる能力を意味する。分散システムでは、ネットワークの信頼性は完璧ではなく、サーバー間の通信が途切れることは避けられない現実として存在するため、この特性は特に重要になる。システムが複数のサーバーに分散している場合、それらのサーバー間のネットワークが一時的に切断されるような状況でも、システムが完全に停止することなく動き続けられるように設計される必要がある。

CAP定理は、これら3つの特性のうち、常に2つしか保証できないと述べている。これはつまり、分散システムを設計する際には、どの特性を優先するかというトレードオフの選択が伴うということだ。

実際のシステム設計では、このトレードオフによって主に2つのタイプに分けられる。

一つ目は「CP (Consistency + Partition Tolerance)」システムである。このシステムは、一貫性と分断耐性を優先する。もしネットワークの分断が発生した場合、システムはデータの一貫性を保つために、一部のサービス提供を停止したり、リクエストを拒否したりすることがある。つまり、データの正確さを最優先するため、一時的にシステムの可用性が犠牲になる可能性があるということだ。例えば、金融取引システムのように、お金のやり取りでデータの不整合が許されない場合には、このCPシステムが適している。Google Spannerのような分散データベースがこのCPシステムの一例として挙げられる。

二つ目は「AP (Availability + Partition Tolerance)」システムである。このシステムは、可用性と分断耐性を優先する。ネットワークの分断が発生した場合でも、システムは可能な限りサービスを提供し続け、リクエストに応答しようと試みる。そのため、一部のノードで古いデータや一時的に矛盾したデータが提供される可能性があるが、システム全体としては動き続けることができる。ユーザーは常に何らかの応答を得られるが、それが最新のデータではないかもしれないというトレードオフが生じる。ソーシャルメディアのフィードのように、常に情報が表示されることが重要で、多少の情報の遅延や不整合が許容される場合に、このAPシステムが適している。Apache CassandraやAmazon DynamoDBは、このAPシステム、または設定によってAPの特性を持つシステムとして広く利用されている。

CAP定理で語られる「CA (Consistency + Availability)」という組み合わせは、理論上は可能だが、現実の分散システムでは実用的ではない。なぜなら、分散システムにおいてネットワークの分断は避けられない現実だからだ。ネットワークの不確実性を完全に排除することは不可能であり、したがって、分断耐性を犠牲にするということは、分散システムの前提を無視することになる。そのため、CAシステムという選択肢は、現代の分散システム設計においてはほとんど考慮されない。

このCAP定理の理解は、具体的なシステム設計の場面で非常に役立つ。例えば、新しいシステムを設計する際に、そのシステムが何を最も重視するべきかを考える。金融取引システムのようにデータの正確性が絶対に必要であればCPシステムを選び、ユーザーからのリクエストに常に素早く応答することが最優先であればAPシステムを選ぶといった判断が可能になる。

さらに、現代の多くの分散データベース、例えばAmazon DynamoDBやMongoDBなどは、一貫性のレベルを調整できる機能を持っている。これにより、システムの利用シーンに応じて、強い一貫性(CP寄り)と、最終的な一貫性(AP寄り)の間でバランスを取ることが可能になっている。最終的な一貫性とは、一時的にはデータが不整合な状態になる可能性があるものの、時間が経てばすべてのデータが最終的に一貫した状態になることを保証する考え方だ。

システム設計の面接では、CAP定理について問われることが非常に多い。例えば、「CAP定理とは何か、システム設計にどのような影響を与えるか」といった基本的な質問から、「高可用性システムのための分散データベースをどのように設計するか」や「金融取引システムのためのトレードオフは何か」といった具体的なシナリオでの応用力が試される。

これらの質問に対しては、まずCAP定理の3つの特性を正確に説明し、なぜ2つしか保証できないのかを明確に伝えることが重要だ。そして、具体的なユースケースに基づいて、CPシステムとAPシステムのどちらを選択し、なぜその選択をするのかを論理的に説明できる必要がある。例えば、金融システムではデータの一貫性が最重要であるためCPシステムを選択するが、その代償としてネットワーク分断時に一部サービスが停止する可能性がある、といった説明だ。また、高可用性が求められるシステムではAPシステムを選択し、多少のデータの一貫性の緩さを許容することで、常にサービスを提供し続けることを目指す、というように答えることができる。

ネットワーク分断時の対応についても、CPシステムであれば処理を一時停止したり、複数のノードが合意(クォーラム)するまで読み書きを待ったりする方法がある。APシステムでは、データが一時的に分断されたノード間で食い違っていても処理を進め、後で矛盾を解消するためのメカニズム(コンフリクト解決)を導入するといったアプローチが考えられる。

CAP定理を理解することで、分散システムの設計における根本的な課題と、それに対するさまざまな解決策を学ぶことができる。これは、システムエンジニアとして、堅牢で効率的なシステムを設計するための基盤となる知識であり、実世界での複雑な課題に対処するための思考力を養う上で非常に重要である。

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