【ITニュース解説】大してアクセスないサイトにECSはオーバースペック
2025年09月15日に「Zenn」が公開したITニュース「大してアクセスないサイトにECSはオーバースペック」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
アクセスが少ないWebサイトでは、常に費用がかかるECSより、リクエスト処理時のみ課金されるLambdaがコストを抑えられる。ECSはアクセスが少ないと無駄な費用が発生しやすいが、Lambdaなら必要な時だけ費用がかかるため経済的だ。AWS Amplifyを使えば、複雑なサイトもLambdaで簡単に構築できる。
ITニュース解説
Amazon Elastic Container Service (ECS) は、コンテナ化したアプリケーションをクラウド上で管理・実行するためのサービスである。コンテナとは、アプリケーションとその実行に必要なすべてのものを一つにまとめた軽量なパッケージのようなもので、これにより開発者はどの環境でもアプリケーションを同じように動作させることができる。ECSを利用することで、開発者はサーバーの運用や管理といったインフラの複雑な作業をAWSに任せ、アプリケーションの機能開発やデプロイに注力できるようになる。多くの企業で安定したシステム基盤として採用されており、大規模なアプリケーションの運用にも適している。
ECSの大きな特徴の一つは、その課金体系にある。ECSは、アプリケーションのコンテナが起動している間、すなわち稼働している時間に対して継続的に課金される。これは、一度サービスを立ち上げたら、ユーザーからのアクセスがあるかどうかにかかわらず、その稼働時間分の料金が発生し続けることを意味する。例えば、24時間365日稼働が求められるような常に一定のアクセスがある大規模なウェブサイトや、リアルタイム処理が必要なシステムであれば、この課金形態は合理的な選択肢となる。なぜなら、常にリクエストを処理する準備が整っており、急なアクセス増にも即座に対応できるからである。
一方、AWS Lambdaは、サーバーレスコンピューティングと呼ばれるサービスの代表格である。サーバーレスという名称は、サーバーが存在しないという意味ではなく、開発者がサーバーの管理や運用について意識する必要がないという意味である。開発者はアプリケーションのコードをLambdaにアップロードするだけで、AWSが自動的にそのコードを実行する環境を管理してくれる。
Lambdaの最大の利点は、その課金体系にある。Lambdaは、実際にコードが実行された時間と、その実行回数に対してのみ課金される。つまり、ユーザーからのリクエストが到着し、そのリクエストに対する処理が完了するまでの時間だけ料金が発生する。リクエストがない間、つまりアプリケーションが何も処理していないアイドル状態の間は、料金は一切発生しない。このオンデマンドな課金モデルは、特定の条件下で非常にコスト効率が良い。
記事が指摘する「大してアクセスないサイトにECSはオーバースペック」という問題は、まさにこのECSとLambdaの課金体系の違いに起因する。アクセスが少ないウェブサイトや、CloudFrontなどのキャッシュサービスが効果的に機能するサイトでは、ECSでアプリケーションを運用すると、多くの「無駄な待機時間」が発生する。CloudFrontは、ウェブサイトのコンテンツを世界中に分散配置されたサーバー(エッジロケーション)に一時的に保存(キャッシュ)することで、ユーザーへのコンテンツ配信を高速化し、オリジンサーバー(ここではECSで動くアプリケーション)への負荷を軽減するサービスである。CloudFrontがキャッシュされたコンテンツをユーザーに直接返す場合、ECS上のアプリケーションにはリクエストが到達しないため、ECSは処理を行うことなく待機状態となる。
しかし、ECSはそのような待機状態であっても稼働していると見なされ、課金は継続される。つまり、サイトがほとんどアクセスされていない時間や、CloudFrontのキャッシュによってECSへのリクエストが大幅に減少している時間も、アプリケーションは稼働し続け、その分の料金が発生してしまう。これは、リソースが最大限に活用されていない状態であり、結果としてコスト効率の悪化につながる。
これに対し、Lambdaはリクエストが来た時だけ起動し、処理が完了すればすぐに停止するため、無駄なアイドル時間に対する課金がほとんど発生しない。そのため、アクセス数が少ないウェブサイトや、アクセスが予測不能なウェブサイト、あるいは特定のイベント(例えば、ファイルがストレージにアップロードされた時など)に応じて非同期的に処理を実行するようなケースにおいては、Lambdaの方が圧倒的にコストパフォーマンスが高い選択肢となる。
ここで、「Lambdaで複雑なサイトが作れるのか」という疑問が生じるかもしれない。Lambdaは単一の機能を実行する「関数」として設計されることが多く、従来のサーバーアプリケーションのように状態を保持する(ステートフルな)複雑なアプリケーションの構築には工夫が必要となる場合がある。しかし、現代のクラウド開発エコシステムは進化しており、この課題を解決するためのツールが提供されている。
記事で言及されているAWS Amplifyはその一例である。AWS Amplifyは、ウェブアプリケーションやモバイルアプリケーションの開発を効率化するための包括的なサービス群である。フロントエンド開発者がReact、Vue、AngularなどのモダンなJavaScriptフレームワークで作成したアプリケーションを、簡単にAWSの様々なサービスと連携させてデプロイできるように設計されている。Amplifyを利用することで、開発者はアプリケーションのバックエンド機能(API、データベース、認証機能など)を自動的にAWSのリソース(Lambda関数、Amazon DynamoDB、Amazon API Gatewayなど)として構築し、デプロイできる。
具体的には、Amplifyは開発者が書いたコードを、必要に応じてLambda関数としてデプロイし、API Gatewayと連携させてWeb APIとして公開したり、Amazon S3にホスティングして静的なウェブサイトを配信したりする。これにより、開発者はサーバーレスの複雑なインフラ構築を意識することなく、通常のアプリケーション開発と同じような感覚で、複雑な機能を持つウェブサイトやアプリケーションを構築することが可能になる。結果として、アクセスが少ないサイトであっても、モダンな開発手法を維持しつつ、Lambdaの持つ優れたコスト効率を最大限に活用できるようになる。
このニュース記事は、クラウドサービスを選定する際に、単にサービスの機能だけでなく、その課金モデルとアプリケーションの利用パターンを深く理解することの重要性を示している。ECSはコンテナ化されたアプリケーションを大規模かつ安定的に運用する上で強力なツールだが、常に稼働し続ける特性上、アクセスが少ないサイトではコストが無駄になる可能性がある。一方、Lambdaはリクエストに応じて実行されるサーバーレスな性質を持ち、アクセスが少ないサイトやイベント駆動型の処理において非常にコスト効率が高い。AWS Amplifyのような開発ツールを適切に活用すれば、Lambdaのメリットを享受しながら、現代的で複雑なアプリケーションを構築することも十分に可能である。システムを設計する際には、アプリケーションの具体的なアクセスパターン、必要な性能、そしてコスト要件を慎重に検討し、それらに最も適したクラウドサービスを選択することが、プロジェクト全体の成功にとって極めて重要となる。