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【ITニュース解説】LangChain, LangGraph, and LangSmith: Untangling the Confusion

2025年09月15日に「Dev.to」が公開したITニュース「LangChain, LangGraph, and LangSmith: Untangling the Confusion」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

LangChainはLLMとツールを順序立てて繋ぎ、シンプルなAIアプリを作る。LangGraphは複雑なエージェント連携やループを構築する。LangSmithは開発したAIの監視・デバッグで品質を確保する。これらは競合せず、連携することで堅牢なAIシステム構築に役立つ。

ITニュース解説

AI技術が急速に進展し、特に大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリケーション開発が活発化する中で、単にテキストを生成するだけでなく、より賢く、自律的に動作するAIシステム、いわゆる「エージェント型AI」の構築が注目されている。しかし、LLM単体でこれらの複雑なシステムを構築するのは非常に困難である。企業のポリシーを学習させたり、外部ツールやAPIを呼び出したり、複数のステップにわたる推論を継続させたり、あるいはシステムが問題なく動作しているかを監視したりするには、それを支える強固なフレームワークが必要となる。そこで重要な役割を果たすのが、LangChain、LangGraph、そしてLangSmithという三つのツールである。これらはそれぞれ異なる目的を持つが、組み合わせて使うことで、頑健で本番環境に耐えうるAIシステムを構築するための強力な基盤を提供する。

まず、LangChainは、AIアプリケーション開発の第一歩として位置づけられる。これは、LLM、外部ツール、そしてデータを一本の線のように、決まった順序で接続し、予測可能なワークフローを作り出すためのフレームワークである。LangChainの主な強みは、そのシンプルさと、多様なコンポーネントを接続できる拡張性にある。例えば、ユーザーの質問に対して、企業のドキュメントから関連情報を探し出し、それに基づいて回答を生成するような「検索拡張生成(RAG)」チャットボットを構築する際に非常に有効だ。具体的なRAGのワークフローを考えると、まず様々なデータソースからテキストを抽出し、それを処理しやすいように小さな塊(チャンク)に分割する。次に、これらのチャンクを数値のベクトル表現(埋め込み)に変換し、ベクトルデータベースに保存する。ユーザーからの質問が来たら、その質問もベクトル化し、ベクトルデータベース内で最も関連性の高いチャンクを検索して取得する。そして、取得した関連情報とユーザーの質問を組み合わせて、LLMに渡すためのプロンプトを作成し、LLMが最終的な回答を生成する。このような一連の固定された手順を順序立てて実行するパイプラインを構築するのに、LangChainは最適である。これは水源から蛇口まで水を安定して流すパイプラインを構築するような役割を果たす。しかし、LangChainはあくまで定められたレールの上を走る列車のように、事前に設定された経路を忠実に実行するだけであり、途中で状況に応じて柔軟に経路を変更したり、問題が発生した場合に自律的に判断して処理をやり直したりするような、より複雑なロジックを扱うことは苦手とする。

次に、LangGraphは、LangChainでは対応しきれない、より複雑で動的なAIワークフローの構築を可能にする。LangGraphは、単なる線形の流れではなく、条件分岐、ループ、複数のAIエージェント間の連携など、複雑なロジックを視覚的に設計し、オーケストレーションするツールである。これは、AIシステムが状況に応じて次に取るべき行動を決定し、必要であれば過去のステップに戻って処理をやり直す、といった「状態を持つ(stateful)」ワークフローを実現するために設計されている。例えば、あるプロジェクトのタスクを専門とする複数のAIエージェント、例えば「計画エージェント」「設計エージェント」「コード生成エージェント」を連携させるシナリオを想像してみよう。まず、計画エージェントが問題の分析と高レベルな戦略を立案し、その出力が設計エージェントに渡される。設計エージェントは計画に基づいてシステムの構造を設計し、その結果をコード生成エージェントが受け取って具体的なコードを生成する。ここで、生成されたコードが特定の条件を満たさない場合、LangGraphはそのワークフローを自動的に計画エージェントや設計エージェントに戻し、改善を促すといった「反復的な改善」のロジックを容易に組み込むことができる。これにより、異なる役割を持つAIエージェントが動的に連携し、自己修正しながら目標達成に向かって進む、高度なマルチエージェントシステムを効率的に構築できるようになる。LangGraphは、AIの複雑なロジックをモジュール化し、管理しやすく、保守しやすい形に整える。

最後に、LangSmithは、開発したAIアプリケーション、特にLangChainやLangGraphで構築したシステムが期待通りに動作しているかを監視し、デバッグし、そして改善していくための強力なツールである。AIシステムが複雑になればなるほど、内部で何が起こっているかを把握することは困難になる。どのエージェントがどのタイミングでどのような処理を行い、どれだけの計算リソース(トークン)を使用したか、そしてどこでエラーが発生したのかを詳細に追跡することは、システムを安定稼働させ、パフォーマンスを最適化する上で不可欠である。LangSmithは、トレーシング(処理の追跡)、ロギング(記録)、そして可観測性(システムの状態を外部から把握できる能力)を提供し、システム内部の挙動を詳細に記録し、分析することで、最終的なシステムの質を高めるように、AIシステムの内部挙動を可視化する。これにより、例えば先に述べた計画・設計・コード生成のマルチエージェントワークフローにおいて、各エージェントが消費したトークン量、どこで出力が失敗したか、どのステップでボトルネックが発生しているかなどを詳細に確認できる。問題が発生した際には、特定の失敗したエージェントを特定し、その原因を素早く特定して修正できるため、デバッグのプロセスが大幅に効率化される。また、新しい機能を追加したり、既存のエージェントを修正したりする際にも、本番環境に影響を与えることなく安全にテストを行い、変更の影響を詳細に監視することが可能となる。LangSmithは、AIシステムを本番環境で運用する際に不可欠な、信頼性、パフォーマンス、そして継続的な改善のための基盤を提供する。

結論として、LangChain、LangGraph、LangSmithは互いに競争するツールではなく、それぞれが異なる段階や目的のために特化した、補完的な関係にあるツール群である。シンプルで線形的なAIワークフローを構築する際はLangChainから始め、RAGチャットボットなどでアイデアの実現性を試すのが良い。次に、AIエージェントの連携や、条件分岐、ループといった複雑な推論が必要なシステムを構築する際にはLangGraphを導入し、アプリケーションに「考える」能力を与える。そして、これらのシステムを開発している初期段階から、あるいは本番環境で運用する際には、常にLangSmithを活用することが極めて重要である。LangSmithは、システムの透明性、監査可能性、自己修正能力を高め、ユーザーが安心して利用できる信頼性の高いAIシステムを構築するための不可欠な要素となる。これら三つのツールを適切に組み合わせることで、私たちは単なるプロトタイプから、洗練された、本番環境に対応可能なAIエージェントへと、自信を持って移行することができる。AIシステム開発におけるこれらのツールを理解し、活用することは、今後のシステムエンジニアにとって非常に重要なスキルとなるだろう。

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