【ITニュース解説】ポルノを見ているときにウェブカメラで写真を撮影するマルウェアが発見される

2025年09月08日に「GIGAZINE」が公開したITニュース「ポルノを見ているときにウェブカメラで写真を撮影するマルウェアが発見される」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

新しい情報窃盗型マルウェア「Stealerium」が発見された。詐欺メールでPCに侵入し、パスワードやカード情報を盗む。さらに「ポルノ」等のキーワードに反応し、PC画面やウェブカメラの映像を不正に撮影するため、注意が必要である。

ITニュース解説

最近、サイバーセキュリティの分野で新たな脅威が報告された。カリフォルニア州サニーベールに本社を置くセキュリティ企業、Proofpointの研究者たちが、今年5月以降に感染が急増している情報窃盗型マルウェア「Stealerium」に関する調査結果を公表したのである。このニュースは、システムエンジニアを目指す上で知っておくべき、現代のデジタル環境における危険性とその対策を考える良い機会となる。

Stealeriumは、その名の通り「情報を盗む」ことを目的としたマルウェアの一種だ。マルウェアとは、悪意のあるソフトウェアの総称で、PCやネットワークに不正に侵入し、様々な悪影響を及ぼす。中でも情報窃盗型マルウェアは、ユーザーの機密情報、例えばパスワードやクレジットカード情報、個人データなどを密かに収集し、外部に送信することを目的としている。

このStealeriumが特に注目されるのは、GitHubという開発者がプログラムコードを公開・共有するプラットフォームで、オープンソースとして提供されていた点にある。オープンソースとは、ソフトウェアの設計図にあたるソースコードが一般に公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できる形式を指す。本来、オープンソースは技術の発展を促し、透明性を高める素晴らしい概念だが、Stealeriumのように悪用される可能性もはらんでいる。悪意を持った第三者が、公開されたコードを基に自身のマルウェアを作成したり、既存のマルウェアを改良したりすることが容易になってしまうのだ。

では、Stealeriumはどのようにして被害者のPCに侵入するのだろうか。主要な侵入経路は「詐欺メール」だ。これは、いわゆるフィッシング詐欺の一種で、あたかも信頼できる組織や人物からのメールであるかのように装い、受信者をだまして不正なリンクをクリックさせたり、添付ファイルを開かせたりすることで、マルウェアをダウンロード・実行させる手口である。メールの内容は多岐にわたるが、例えば配送業者を装った不在通知や、金融機関からのセキュリティ警告、政府機関からの重要なお知らせなど、思わず開いてしまうような巧妙な文面が多い。

一度StealeriumがPCに侵入すると、その名の通り、ユーザーの様々な情報を窃取し始める。具体的には、ウェブサイトのログインパスワード、オンラインバンキングの認証情報、クレジットカードの番号や有効期限といった金融関連情報などが主な標的となる。これらの情報が悪意のある者の手に渡れば、不正ログイン、不正送金、クレジットカードの不正利用など、深刻な金銭的被害に直結する。

しかし、Stealeriumが特に危険視されるのは、単なる情報窃盗にとどまらない、さらに踏み込んだ機能を持っている点だ。このマルウェアは、「ポルノ」といった特定のキーワードに反応する特徴を持つ。これは、ユーザーがポルノサイトを閲覧している際などに、PCの画面をキャプチャしたり、さらにはウェブカメラの映像を密かに取得したりすることを意味する。ユーザーがウェブカメラを通じて自身の姿が撮影されていることに気づかないまま、プライベートな映像が悪意のある者に流出する可能性があるのだ。このような行為は、金銭的被害に加えて、個人のプライバシーを著しく侵害し、精神的な苦痛を与える極めて悪質な手口である。

このような脅威から自身を守り、将来システムエンジニアとして社会のデジタルインフラを支える立場を目指す初心者にとって、セキュリティ意識の向上は不可欠である。まず、最も基本的な対策として、不審なメールや見慣れない送信元からのメールは安易に開かず、添付ファイルやリンクを不用意にクリックしないことが重要だ。常にメールの内容を吟味し、少しでも疑わしいと感じたら、送信元に直接確認を取るなどの慎重な対応が求められる。

また、オンラインサービスを利用する際には、強力で推測されにくいパスワードを設定し、複数のサービスで同じパスワードを使い回さないようにするべきだ。可能であれば、二段階認証や多要素認証を有効にすることも極めて有効な対策となる。これらは、パスワードが漏洩した場合でも、追加の認証要素(例えばスマートフォンに送信されるコードなど)がなければログインできないため、不正アクセスを防ぐ確率を格段に高めることができる。

使用しているPCやスマートフォンのOSやアプリケーションは、常に最新の状態に保つことも重要だ。ソフトウェアのアップデートには、新機能の追加だけでなく、発見されたセキュリティ上の脆弱性を修正するパッチが含まれていることが多い。これらのアップデートを怠ると、既知の脆弱性を突かれてマルウェアに感染するリスクが高まる。

さらに、信頼できるセキュリティソフトやアンチウイルスソフトを導入し、常に最新の定義ファイルに更新しておくことも必須である。これらのソフトは、マルウェアの検出やブロック、不審な挙動の監視などを行い、PCを脅威から守る最前線となる。定期的なフルスキャンを実行することも推奨される。

そして、Stealeriumのケースで特に注目されたウェブカメラからの映像取得対策として、物理的なカバーの使用を検討するべきだ。市販されているウェブカメラカバーを利用したり、シンプルな粘着テープでカメラレンズを覆ったりするだけでも、悪意のある撮影を物理的に防ぐことができる。普段ウェブカメラを使わないのであれば、利用時以外は常にカバーをしておく習慣をつけることが望ましい。

システムエンジニアを目指す上では、こうした情報窃盗型マルウェアの手口や対策について理解を深めることが、自身のセキュリティ意識を高めるだけでなく、将来的に開発するシステムやサービスにおいて、どのようにセキュリティを考慮すべきかを考える基礎となる。デジタル社会が進化するにつれて、サイバー攻撃の手口も巧妙化の一途をたどる。常に最新の脅威に注意を払い、適切な対策を講じる能力は、未来のエンジニアにとって必須のスキルと言えるだろう。

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