【ITニュース解説】Nepal blocks most social media sites for failing to register with the government
2025年09月05日に「Engadget」が公開したITニュース「Nepal blocks most social media sites for failing to register with the government」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
ネパール政府は、新しい法律に基づく企業登録を怠ったFacebookやXなど多くのソーシャルメディアをブロックした。政府はオンライン犯罪対策と説明するが、検閲だと批判も多い。登録済みのTikTokなどは引き続き利用可能だ。
ITニュース解説
ネパール政府が、Facebook、X (旧Twitter)、Instagram、YouTube、WeChat、Redditといった主要なソーシャルメディアプラットフォームへの国内からのアクセスをブロックしたというニュースは、私たちインターネットを使うすべての人にとって重要な出来事である。これは、ネパール政府が新たに導入した「ソーシャルメディア企業は政府に登録しなければならない」という法律に従わなかったことが原因だ。ただし、TikTokやViberなど、すでに政府に登録を済ませていた5つのプラットフォームは、このアクセス制限の対象外とされた。
今回の措置における「ブロック」とは、利用者がこれらのソーシャルメディアサイトにアクセスしようとした際に、インターネットサービスプロバイダ(ISP)を通じてその接続が拒否されることを意味する。これは通常、ISPが特定のウェブサイトのIPアドレスへの接続を遮断したり、ドメインネームシステム(DNS)の情報を操作したりすることで実現される。これにより、ネパール国内のインターネットユーザーは、これらのプラットフォームを通常の方法では利用できなくなるのだ。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これはインターネットの基本的な仕組み、特にDNSやIPルーティング、そしてそれらを制御する技術が、政府や通信事業者の介入によってどのように利用されうるかを示す具体的な事例として理解できるだろう。
ネパール政府が求めた「登録」とは、ソーシャルメディア企業がネパール国内で事業活動を行う上で、政府が定めた規則に従い、会社情報や担当者を公式に届け出る手続きを指す。具体的には、ネパール国内に連絡担当者、利用者からの苦情に対応する担当者、そしてプラットフォームの自主規制を担う責任者を置くことが義務付けられた。このような要件は、企業がその国で法的に責任を負うことを明確にし、何か問題が発生した際に政府が直接企業と連絡を取り、対処できるようにすることを目的としている。多くの企業がこの登録に応じなかったため、今回のブロック措置に至ったとされている。
ネパール政府は、この新しい規制がオンライン上でのヘイトスピーチ、デマの拡散、そしてサイバー犯罪といった問題に対処するためのものだと説明している。インターネットとソーシャルメディアの普及により、これらの問題が社会に与える影響は深刻化しており、多くの国で政府がその対策に頭を悩ませているのが現状だ。政府の意図としては、プラットフォームに責任を持たせ、より健全で安全なオンライン空間を維持したいという考えがあったのだろう。
しかし、この政府の措置に対しては、国内外から強い批判の声が上がっている。反対派や人権団体は、この法律が表現の自由や情報へのアクセスといった市民の基本的な権利を侵害する「検閲」の手段として使われる可能性があると指摘している。特に、適切な法的枠組みが整っていない中で唐突にこのような措置が取られたことに対し、デジタル権利保護団体やジャーナリスト団体は、報道の自由や情報を受け取る市民の権利を侵害するものだと強く反発している。彼らは、ソーシャルメディアの規制自体は必ずしも間違いではないが、その前に明確な法律や手続きを整備することが重要だと主張しているのだ。これは、技術的な側面だけでなく、倫理的、法的な側面からインターネットサービスを評価することの重要性を示している。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このニュースは多くの示唆を与えてくれるだろう。第一に、グローバルなインターネットサービスを開発・運用する際には、技術的な要件だけでなく、各国の複雑な法規制や文化的な背景を深く理解し、それに対応できるシステムを設計する必要があるということだ。例えば、各国のデータプライバシー法(GDPRなど)への対応、特定のコンテンツに関する規制、あるいは今回のような企業登録の義務化など、法的なコンプライアンス(法令順守)は、サービスの成否を左右する重要な要素となる。
また、インターネットは国境を越える情報ネットワークだが、現実には国家による管理や介入から完全に自由ではないということも理解しておくべきだ。特定の国でサービスを提供する際には、その国の政府の政策や法律に従わざるを得ない場面が多く発生する。今回のネパールの事例は、この現実を如実に示している。システム開発者は、このような状況下で、ユーザー体験を損なわないようにしつつ、サービスの持続可能性を確保するための技術的な解決策を模索する役割を担うことになるだろう。例えば、地理的なデータセンターの配置、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)の最適化、あるいは現地の規制に合わせた機能の追加や削除など、多岐にわたる技術的判断が求められる。
今回のネパールでの出来事は、決して孤立した事例ではない。世界的に見ても、各国政府がソーシャルメディアに対する監視や規制を強化する動きは加速している。アメリカやヨーロッパ、ブラジルといった国々でも、個人情報保護、偽情報の拡散防止、コンテンツのモデレーションといった観点から、新たな規制が導入されたり、既存の法律が強化されたりしている。ネパールの隣国であるインドでも、ソーシャルメディア企業に対し、国内にコンプライアンス担当者を置くことや、政府からの要請があればコンテンツを削除するメカニズムを設けることが義務付けられており、かつてはTwitterの従業員が投獄される可能性すら示唆されたことがある。これらの動きは、インターネットの自由と、国家による規制・管理との間の緊張関係が、現代社会における重要な課題であることを浮き彫りにしている。システムエンジニアは、この技術と社会、法律が複雑に絡み合う領域において、技術的な解決策を提供するだけでなく、その技術が社会に与える影響についても深く考察する視点を持つことが求められるだろう。このような規制が、言論の自由や情報へのアクセスにどのような影響を与えるのかを理解することは、将来のシステムを設計する上で不可欠な要素となる。