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【ITニュース解説】Visual Guide to Reinforcement Learning for training LLMs

2025年09月08日に「Medium」が公開したITニュース「Visual Guide to Reinforcement Learning for training LLMs」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

ChatGPTのようなAIは、人間のフィードバックを基に学習する「強化学習(RLHF)」で性能を向上させている。この記事では、RLHFを実現するPPOやDPOといった具体的な手法の仕組みを、図解で分かりやすく解説している。

ITニュース解説

ChatGPTのような対話型AIが、なぜこれほど自然で人間らしい応答ができるのか、その背景には高度なトレーニング技術が存在する。大規模言語モデル(LLM)は、インターネット上の膨大なテキストデータを学習すること(事前学習)で、言語の基本的なルールや知識を獲得する。しかし、この段階では、事実と異なる内容を生成したり、倫理的に不適切な回答をしたり、ユーザーの意図を正確に汲み取れなかったりすることがある。こうした課題を克服し、AIをより安全で人間にとって有益なものにするために、「強化学習」という技術が重要な役割を果たしている。

強化学習とは、AIエージェントが特定の環境の中で試行錯誤を繰り返し、より良い結果(報酬)を得るための行動を学んでいく仕組みである。LLMの文脈では、LLM自身がエージェントとなり、ユーザーへの回答生成が「行動」にあたる。そして、その回答がどれだけ優れているかを示す評価が「報酬」となる。LLMは、この報酬を最大化するように、つまり人間が「良い」と感じる回答を生成できるように、自身の内部パラメータを継続的に調整していく。

この強化学習をLLMのトレーニングに応用した代表的な手法が「RLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)」、日本語では「人間のフィードバックによる強化学習」と呼ばれるものである。RLHFは主に三つのステップで構成される。第一のステップは「教師ありファインチューニング(SFT)」だ。ここでは、人間が注意深く作成した高品質な質問と回答のデータセットを用意し、事前学習済みのLLMを再度トレーニングする。この微調整により、LLMは対話の基本的な形式や、特定の指示に従う能力を身につける。

第二のステップは「報酬モデルのトレーニング」である。まず、SFTで調整されたLLMに、一つの質問に対して複数の異なる回答を生成させる。次に、人間がこれらの回答を比較し、「回答Aは回答Bよりも良い」「回答Cは回答Dよりも優れている」といった形で順位付けを行う。この人間の好みを反映した大量の比較データを使って、「報酬モデル」と呼ばれる別のAIモデルを学習させる。この報酬モデルの役割は、人間の評価基準を学習し、任意の回答が与えられた際に、それがどれくらい良いものかを数値(スコア)で評価することである。いわば、人間の代わりに回答の品質を判定する「AIの審判」を作り上げる工程だ。

そして第三のステップが、強化学習アルゴリズムを用いたLLMの最適化である。ここでは「PPO(Proximal Policy Optimization)」というアルゴリズムが広く用いられる。SFT済みのLLMは、新しい質問に対して回答を生成する。その回答は即座に第二ステップで作成した報酬モデルによって評価され、スコア(報酬)が与えられる。LLMは、この報酬スコアを最大化することを目指し、自身の応答生成ポリシー(どのような単語を次に出力するかという方針)を少しずつ更新していく。PPOは、学習プロセスを安定させ、LLMが元の言語能力を損なうことなく、人間の好みに沿った回答を生成できるように巧みに制御する。このサイクルを繰り返すことで、LLMの応答は徐々に洗練され、より自然で質の高いものへと進化していく。

しかし、RLHFは非常に効果的である一方、複数のモデル(LLM本体と報酬モデル)を個別にトレーニングする必要があり、プロセスが複雑で計算コストも高いという課題があった。この複雑さを解消するために、よりシンプルで効率的な手法が開発されている。その代表格が「DPO(Direct Preference Optimization)」である。DPOは、RLHFの第二ステップである報酬モデルの明示的なトレーニングを省略する。代わりに、人間が作成した回答のペア(良い回答と悪い回答)のデータを直接利用して、LLMをファインチューニングする。これにより、LLMは報酬モデルを介さずに、どの回答がより好ましいかを直接学習することが可能になる。DPOは、報酬モデルの学習とPPOによる最適化という二つの工程を一つに統合することで、トレーニングをより安定させ、計算効率を高めることに成功した。

さらに、DPOの考え方を拡張した「GRPO(Generalized Reward-free Preference Optimization)」のような新しい手法も登場している。これらの手法は、より多様な人間の好みや複雑なデータ構造に対応できるよう設計されており、LLMの性能をさらに引き上げる可能性を秘めている。このように、LLMの開発は、単にデータを増やすだけでなく、人間の価値観や意図をAIに組み込むための洗練されたトレーニング手法によって支えられている。これらの技術の進化が、AIをより信頼でき、社会に役立つツールへと変えていくための鍵となっている。

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