【ITニュース解説】I built a real-time inflation tracker in 24 hours using AI (PHP + SQLite + Claude)
2025年10月01日に「Dev.to」が公開したITニュース「I built a real-time inflation tracker in 24 hours using AI (PHP + SQLite + Claude)」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
既存の不正確な物価情報に課題を感じ、AI(Claude, ChatGPT)とPHP, SQLiteなどを使い、24時間でリアルタイム物価追跡サイトを開発。AIがコードを生成し、素早く実用的なサービスを実現した。技術力より問題解決と実行の速さが重要だと語る。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、実際にサービスがどのように開発され、どのような技術が使われているかを知ることは非常に重要だ。今回は、「AIを使って24時間でリアルタイムの物価追跡ツールを構築した」という、個人開発の事例を紹介する。このプロジェクトは、AIツールがいかに現代の開発において強力な味方となるかを明確に示している。
このプロジェクトの発端は、開発者が南米への移住を検討していたことにある。移住先の生活費を調べる際、既存の生活費情報サイト、例えばNumbeoのようなサービスでは、データが古く、群衆から収集された情報のため信頼性に欠けるという問題に直面した。最新かつ正確な生活費情報を手に入れることの難しさが、彼自身の情報源を構築するという動機付けになったのだ。こうして誕生したのが「NomadInflation.com」というウェブサイトだ。このサイトは、推定値ではなく、現地の情報源から直接、実際の価格を週ごとに自動で収集し、正確な物価データを提供する。
開発者は、自身のことを「vibe coder」と称し、プログラミング経験は4年あるものの、特別に優秀なエンジニアではないと謙遜している。しかし、AIツールを駆使することで、わずか24時間という驚異的な短期間でこのサービスを完成させた。これは、技術的な完璧さよりも、具体的な問題解決と迅速な実行力を重視する現代の開発アプローチを象徴している。開発の大部分はAIが担い、開発者自身は主にレビュー、テスト、そして改善の役割を果たす形だった。
プロジェクトを支えた技術スタックは、現代のウェブ開発でよく用いられるものとAIツールを組み合わせた構成だ。統合開発環境(IDE)として「Windsurf」を使用し、そこに「Claude Sonnet 4.5」というAIが統合されていた。AIがコード生成の「重労働」をこなしたのだ。バックエンドには、ウェブアプリケーションの基盤となるサーバー側の処理を行う「PHP」と、軽量で手軽に使えるデータベースである「SQLite」が採用された。フロントエンド、つまりユーザーが直接目にし、操作する部分には、基本的なウェブ技術である「Vanilla JS(プレーンなJavaScript)」と、地図表示に特化したライブラリ「Leaflet.js」が使われている。これにより、インタラクティブな地図上で都市の情報を表示する機能が実現されている。そして、ウェブサイトをインターネット上に公開するためのサーバーとして「DigitalOcean VPS(Virtual Private Server)」が利用され、データ収集の核となるのは「Webスクレイピング」という技術だ。これは、ウェブサイトから自動的に情報を抽出する手法を指す。
具体的な開発プロセスは次の通りだ。まず、システム全体の設計図となるアーキテクチャの設計を「ChatGPT」が行った。次に、「Claude」がWindsurfを通じて、実際のコードの大部分を生成した。開発者は、AIが生成したコードをレビューし、テストを行い、必要に応じて修正や改善を繰り返した。そして、この一連の作業をわずか1日で完了させ、ウェブサイトをデプロイ(公開)したのだ。
もちろん、開発には困難も伴った。最も難しかった点の一つは、スクレイピング可能なデータソースを見つけることだった。多くのウェブサイトは自動アクセスをブロックする仕組みを持っており、情報を収集するのに苦労したという。そのため、政府の公開データや大手小売店のウェブサイトを組み合わせて利用する必要があった。また、ラテンアメリカには6種類以上の通貨が存在するため、正確な通貨換算機能を実装することも大きな課題だった。さらに、収集したデータが本当に機能するか、つまりスクレイパーの信頼性を確保すること、短期間に大量のアクセスをしないようレート制限を遵守すること、そして何よりもデータの正確性を確保することに苦労した。これは、単にコードを書くだけでなく、実際の運用における様々な側面を考慮する必要があることを示している。
現在のNomadInflation.comは、すでに多くの機能を備えている。パラグアイのアスンシオンの月額費用(966ドル)を追跡している他、ラテンアメリカの23以上の都市をインタラクティブな地図上で表示できる。複数通貨(USD、EUR、AUD、CAD、MXN、PYG)に対応し、週ごとの自動更新が行われている。また、ユーザーが物価変動のアラートを受け取るためのメールアドレス登録機能も実装済みだ。今後は、サンパウロ、メキシコシティ、ブエノスアイレスといった主要都市の追加、価格変動通知機能、過去の物価データをグラフで表示する機能、そして何よりも、このサービスが実際に人々に求められているかを検証していく予定だ。
このプロジェクトから学べる最も重要な教訓は、現代のソフトウェア開発において「実行力」が「技術的な完璧さ」よりも価値を持つということだ。特に2025年という時代においては、完璧なコードを書ける「10倍エンジニア」である必要はない。必要なのは、「解決すべき明確な問題」「ClaudeやChatGPTのようなAIツール」、そして「迅速にサービスをリリースする意欲」の三つだと開発者は語る。これは、有名な起業家であるPieter Levels氏のアプローチ、すなわち「公開しながら開発し、迅速にリリースし、フィードバックに基づいて改善を繰り返す」という考え方と合致している。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この事例は大きな示唆を与えてくれるだろう。高度な技術知識がなくても、AIを賢く活用し、目の前の課題解決に集中し、そして何よりも行動することで、短期間で価値あるサービスを生み出すことが可能であることを示している。完璧を目指すのではなく、まずは動くものを作り、世に出してみて、そこから改善を重ねていく姿勢が、これからの時代にはますます重要になってくる。もし興味があれば、NomadInflation.comを実際に見て、開発者にフィードバックを送ってみるのも良い経験となるだろう。