【ITニュース解説】Understanding Web Rendering Strategies

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Understanding Web Rendering Strategies」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Webアプリの表示方法(レンダリング戦略)には、サーバー側で処理するSSRやクライアント側で処理するCSRのほか、SSG、ISRなど多様な種類がある。それぞれ速度やSEO、操作性などのメリット・デメリットがあり、プロジェクト要件に応じて最適な方法を選ぶ。複数の戦略を組み合わせるハイブリッド方式が最近の主流だ。

出典: Understanding Web Rendering Strategies | Dev.to公開日:

ITニュース解説

現代のWebアプリケーションを開発する際、WebサイトやWebアプリの内容をどのようにユーザーの画面に表示するか、その「レンダリング戦略」の選択は非常に重要な要素となる。かつてこの議論は「サーバーサイドレンダリング(SSR)」と「クライアントサイドレンダリング(CSR)」という二つの主要な方法に限定されていたが、現在では「静的サイト生成(SSG)」や「インクリメンタル静的再生成(ISR)」、「ハイドレーション(Hydration)」、「ストリーミング(Streaming)」、「エッジレンダリング(Edge Rendering)」、そしてこれらを組み合わせた「ハイブリッド(Hybrid)」なアプローチなど、多岐にわたる選択肢が登場している。これらの戦略を理解することは、システムエンジニアとしてWeb開発に携わる上で必須の知識と言える。

まず、基本的なレンダリング戦略から説明する。「サーバーサイドレンダリング(SSR)」は、ユーザーがWebページをリクエストするたびに、Webサーバーがその都度、必要なデータを使って完全に組み立てられたHTMLファイルを生成し、ブラウザに送信する方法だ。ブラウザは受け取ったHTMLをすぐに表示できるため、ページの初期表示が非常に速く、検索エンジンのクローラーがページのコンテンツを正確に読み取りやすいという大きな利点がある。しかし、ユーザーがページを移動するたびにサーバーが新しいHTMLを生成するため、サーバーにかかる負荷が大きくなりがちで、ページ遷移の際に画面全体が再読み込みされるため、操作が途切れる感覚がある場合もある。

これに対し、「クライアントサイドレンダリング(CSR)」は、サーバーからはほとんど空っぽのHTMLファイルと、ページの表示に必要なJavaScriptのプログラムが送られてくる。ブラウザは受け取ったJavaScriptを実行して、データの取得やページの構成、そして画面への表示を全て自分自身で行う。この方式は、一度ページが読み込まれると、その後の画面遷移やデータの更新がブラウザ内で完結するため、非常に滑らかで、まるで専用のアプリケーションのような操作感を提供できる。しかし、最初のページ表示時にはブラウザが多くの処理を行うため、表示に時間がかかりやすい点や、検索エンジンのクローラーが初期のほとんど空っぽのHTMLしか読み取れず、コンテンツの内容を正確に評価できない可能性がある点がデメリットとして挙げられる。

次に、事前に準備する「静的な」アプローチを紹介する。「静的サイト生成(SSG)」は、Webサイトを公開する「ビルド時」に、あらかじめ全てのページをHTMLファイルとして生成しておく方法だ。生成されたHTMLファイルは、Webサーバーにそのまま配置されるだけであり、ユーザーからのリクエスト時には、サーバーはすでに作成済みのHTMLファイルをそのまま送るだけなので、ページの表示が非常に高速だ。また、世界中のユーザーに近い場所にあるサーバー(CDN:コンテンツデリバリーネットワーク)にファイルを配置できるため、どこからアクセスしても速い表示が可能となる。SEOにも優れており、ホスティング費用も安価に抑えられるが、サイトの内容が頻繁に更新される場合には、その都度サイト全体を再ビルドする必要があり、コンテンツ量が多いとビルド時間が長くなるという欠点がある。

「インクリメンタル静的再生成(ISR)」はSSGの発展形と言える。SSGのようにビルド時にページを生成しておくが、特定の設定に基づいて、データが更新されたり、一定期間が経過したりすると、必要に応じてバックグラウンドで個別のページだけを再生成できる仕組みだ。これにより、SSGの高速性やSEOのメリットを享受しつつ、頻繁に更新される情報にも柔軟に対応できるようになった。ただし、この機能を利用するには、CDNなどのインフラが対応している必要があり、設定がやや複雑になることもある。

Webサイトにユーザーが操作できるインタラクティブ性(例えばボタンのクリックや入力フォームの操作など)を与える重要な概念が「ハイドレーション(Hydration)」だ。SSRやSSGでサーバーから送られてきたHTMLは、最初は静的な表示のみで、ユーザーの操作には反応しない。ハイドレーションは、ブラウザ側でJavaScriptが実行され、その静的なHTML要素に、クリックイベントなどの操作に対する処理を紐付けたり、動的にコンテンツを更新する機能を「注入」したりするプロセスを指す。これにより、静的に高速表示されたページが、あたかも最初からCSRで構築されたかのように、ユーザーの操作に反応するようになる。しかし、このJavaScriptの読み込みと実行に時間がかかると、ユーザーが画面を見ているにもかかわらず、まだ操作できない「操作可能になるまでの時間(TTV:Time To Interactive)が遅い」状態が発生することがある。

「ストリーミングSSR」は、SSRの初期表示速度をさらに向上させるための技術だ。サーバーがHTMLを一度に全て生成してから送るのではなく、生成できた部分から順次、ブラウザに「ストリーム(データの連続的な流れ)」として送り始める。これにより、ユーザーはページ全体が完成するのを待つことなく、一部のコンテンツから先に表示され始めるため、体感的な読み込み速度が向上する。特に大きなページや、表示に時間のかかるコンポーネントがある場合に有効だ。

また、「アイソモーフィック(Isomorphic)/ユニバーサル(Universal)」という概念は、サーバー側とクライアント側の両方で同じJavaScriptのコードを実行できるアプリケーションの設計を指す。これにより、開発者は共通のコードベースでアプリケーションを構築できるため、開発効率が向上し、SSRとCSRの良いとこ取りができる柔軟な構造が実現する。

Webアプリケーションの形態としては、「マルチページアプリケーション(MPA)」と「シングルページアプリケーション(SPA)」がある。「MPA」は、古典的なWebサイトの構築方法で、各ページが独立したHTMLファイルとして存在し、リンクをクリックするたびにサーバーから新しいHTMLを読み込み、画面全体がリロードされる。シンプルで理解しやすく、SEOにも非常に強いが、ページ遷移のたびに画面が点滅するような印象を与え、操作感がスムーズではない。「SPA」は、CSRの代表的な形態で、最初の読み込みで必要なHTMLとJavaScriptを全てダウンロードし、その後のナビゲーションはサーバーに新しいHTMLをリクエストすることなく、ブラウザ内のJavaScriptがコンテンツを動的に書き換えることで実現する。これにより、アプリのようなスムーズな操作感を実現するが、前述の通り初期表示速度やSEOに課題を抱えることがある。

さらに、近年注目されているのが「エッジレンダリング」だ。これは、HTMLのレンダリングを、ユーザーに最も近い場所にあるCDNのエッジサーバーで行う方法だ。Webサーバーが遠くにある場合でも、ユーザーは地理的に近いエッジサーバーからレンダリングされたHTMLを受け取れるため、Webサイトの表示速度が極めて高速になる。スケーラビリティも高く、大量のアクセスにも強いが、特定のクラウドプロバイダーのサービスに依存する可能性があり、まだ比較的新しい技術であるため、成熟度が低い側面もある。

これら様々なレンダリング戦略を理解した上で、現代のWebアプリケーション開発の主流となりつつあるのが「ハイブリッドレンダリング」だ。これは、一つのアプリケーション内で、SSR、CSR、SSGなどの複数のレンダリング戦略を組み合わせるアプローチを指す。例えば、頻繁に更新されない会社の情報ページはSSGで生成し、ログインが必要なユーザー固有のダッシュボードはSSRで動的に生成し、ユーザーの操作に応じてリアルタイムにデータを更新する部分はCSRを使用するといった具合だ。この柔軟性により、各ページの特性や要件に応じて最適なレンダリング戦略を選択できるため、パフォーマンス、SEO、ユーザー体験の全てを最大化できる。しかし、複数の戦略を組み合わせるため、セットアップやメンテナンスの複雑さが増すという側面もある。

結局のところ、どのレンダリング戦略を選ぶかは、開発するWebサイトやアプリケーションが「何を最も重視するか」によって変わる。検索エンジンからの集客と高速な初期表示が必要ならSSRやSSG、またはハイブリッド戦略が適している。ユーザーに最高のインタラクティブな体験を提供したいならCSRやSPA、そしてそれらを組み合わせたハイブリッド戦略が有力だ。高いスケーラビリティが求められるならISRやエッジレンダリングが選択肢になるだろう。現代のWeb開発フレームワーク、特にNext.jsやNuxt.js、Remixなどは、このハイブリッドレンダリングを標準的にサポートしており、開発者がより柔軟に最適な戦略を選択できる環境を提供している。様々なレンダリング戦略を適切に使い分けることが、現代のWeb開発における成功の鍵となる。

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