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【ITニュース解説】WebGPU Engine from Scratch Part 8: Physically Based Lighting (PBR)

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「WebGPU Engine from Scratch Part 8: Physically Based Lighting (PBR)」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

リアルな3Dグラフィックスを実現する「物理ベースレンダリング(PBR)」を解説。光の反射を物理法則に基づいて計算し、「粗さ」や「金属っぽさ」などのパラメータで物体の質感を忠実に再現する手法だ。WebGPUでのシェーダー実装コードも紹介。(118文字)

ITニュース解説

コンピューターグラフィックスの世界では、現実世界の物体が持つ質感をリアルに再現するため、「物理ベースレンダリング(PBR)」という技術が広く使われている。これは、光が物体に当たって反射する際の振る舞いを、物理法則に基づいてシミュレーションする手法である。PBRの最大の特徴は、「エネルギー保存則」を順守する点にある。物体に当たった光のエネルギーは、吸収されたり、様々な方向に反射されたりするが、その総量が入射した光のエネルギーを超えることはない。この原則により、従来のCG手法のようにアーティストが感覚的にパラメータを調整しても、物理的に破綻のない、一貫性のあるリアルな見た目を実現しやすくなる。PBRでは、「アルベド(物体の基本的な色)」、「ラフネス(表面の粗さ)」、「メタリック(金属らしさ)」といった、物理的な意味合いを持つパラメータで材質を定義する。

PBRの理論的な基礎となっているのが「マイクロファセット理論」である。これは、どれだけ滑らかに見える表面も、微細なレベルでは無数の小さな面(マイクロファセット)の集まりで構成されている、という考え方だ。物体の表面がざらざらしている(ラフネスが高い)場合、マイクロファセットの向きはバラバラで、当たった光は様々な方向に乱反射する。これにより、光の反射は鈍く、ハイライトはぼやけて広がる。逆に、表面が滑らか(ラフネスが低い)な場合は、マイクロファセットの向きが揃っているため、光は特定方向に強く反射し、鏡のようなシャープなハイライトが生まれる。このように、ラフネスという一つのパラメータが、マイクロファセットの統計的な振る舞いを制御し、物体の光沢感を決定する。

この光の反射を数学的にモデル化する関数を「BRDF(双方向反射率分布関数)」と呼ぶ。BRDFは、ある方向から来た光が、どの方向にどれだけの強さで反射されるかを記述する。PBRでは、このBRDFを「拡散反射」と「鏡面反射」という二つの要素に分けて考えるのが一般的だ。拡散反射は、光が一度物体の内部に入り込み、内部で散乱してから表面に出てくる光で、物体の固有の色を担う。一方の鏡面反射は、物体の表面で直接反射される光で、ハイライトや映り込みを生み出す。

PBRで広く用いられるBRDFモデルの一つに「Cook-Torranceモデル」がある。このモデルは、鏡面反射の計算をより精緻に行うため、主に三つの関数を組み合わせる。一つ目は「D項(法線分布関数)」であり、マイクロファセットの向きの分布を統計的に扱う。ラフネスに応じて、ハイライトの形状を決定する。二つ目は「G項(幾何学関数)」で、マイクロファセットの凹凸によって光が他の部分に遮られる自己遮蔽(シャドウイング・マスキング)をモデル化する。三つ目は「F項(フレネル効果)」で、視点の角度によって反射率が変わる現象を再現する。例えば、水面を真上から見ると底が見えやすいが、斜めから見ると空が強く映り込むように、物体をかすめるような角度で見るほど反射が強くなる効果を担う。

これらの理論は、最終的にGPU上で動作する「シェーダー」というプログラムに実装される。シェーダーは、画面上のピクセルごとに、これらの関数を用いて光の計算を行い、最終的な色を決定する。さらに、より現実感を高めるために、光源から離れるほど光が弱まる「光の減衰」を物理法則(逆二乗の法則)に従って計算に加えたり、人間の視覚特性に合わせて明るさを調整する「ガンマ補正」や、計算上の色の値をディスプレイが表示できる範囲に収める「トーンマッピング」といった後処理も行われる。また、PBRでは物質を金属と非金属(誘電体)で明確に区別する。金属は光をほとんど拡散させず、表面で反射する特性を持つため、「メタリック」の値を1にすると、拡散反射がほぼなくなり、金属特有の色付きの強い光沢が表現される。このように、PBRは物理モデルを忠実に再現することで、直感的なパラメータ操作だけで、多種多様な材質をリアルに表現することを可能にする強力な技術である。

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