ダイレクトリンク (ダイレクトリンク) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ダイレクトリンク (ダイレクトリンク) の読み方
日本語表記
直接リンク (チョクセツリンク)
英語表記
direct link (ダイレクトリンク)
ダイレクトリンク (ダイレクトリンク) の意味や用語解説
ダイレクトリンクという用語は、ITの分野において複数の文脈で用いられるが、特にシステムエンジニアがインフラ構築の文脈で用いる場合、特定の拠点間をインターネットを介さずに直接接続するネットワーク技術を指す。この接続は、物理的な専用回線や通信事業者が提供する閉域網サービスを利用して実現される。ダイレクトリンクの主な目的は、セキュリティの確保、通信の安定化、そして高速なデータ転送を実現することにある。公衆網であるインターネットを利用した接続に比べて、通信経路が限定され、外部からの不正アクセスや盗聴のリスクを大幅に低減できる。また、他の利用者の通信トラフィックに影響されないため、遅延が少なく、安定した帯域を確保できるという大きな利点を持つ。これにより、企業の基幹システムや大量のデータを扱うクラウド環境との連携など、高い信頼性が求められるシステムの基盤として広く採用されている。 ダイレクトリンクがなぜ重要視されるのかを理解するためには、対照的な接続方式であるインターネットVPNとの違いを把握することが有効である。インターネットVPNは、公衆網であるインターネット上に暗号化された仮想的なトンネルを構築し、安全な通信路を確保する技術である。低コストで導入できる利点がある一方で、基盤となるインターネットの通信品質に性能が左右されるため、時間帯によっては通信速度が低下したり、遅延が大きくなったりする可能性がある。これに対し、ダイレクトリンクは物理的または論理的に独立した通信経路を使用する閉域網接続であるため、通信品質が極めて安定している。 ダイレクトリンクの具体的な実現形態はいくつか存在する。最も基本的な形態は、2つのデータセンターやオフィス間を物理的な光ファイバーケーブルなどで直接結ぶ専用線サービスである。この方法は、特定の拠点間で最高のパフォーマンスとセキュリティを提供するが、距離が離れている場合や複数の拠点を結ぶ場合にはコストが非常に高くなるという課題がある。そこで、より柔軟かつ広域な接続を実現するために、通信事業者が提供する閉域網サービスが利用される。代表的なものに広域イーサネットやIP-VPNがあり、これらは通信事業者のネットワークインフラを利用して、顧客ごとに論理的に分離された仮想的な専用線を提供する。これにより、物理的な専用線を敷設するよりもコストを抑えつつ、全国の複数拠点を安全かつ高品質なネットワークで結ぶことが可能となる。 近年のクラウドコンピューティングの普及に伴い、ダイレクトリンクの重要性はさらに高まっている。Amazon Web Services (AWS) の「AWS Direct Connect」、Microsoft Azure の「Azure ExpressRoute」、Google Cloud の「Cloud Interconnect」といったサービスは、まさにこのダイレクトリンク技術を応用したものである。これらのサービスを利用することで、企業は自社のオンプレミス環境とパブリッククラウド環境を、インターネットを介さずに閉域網で直接接続することができる。この接続形態は、ハイブリッドクラウド環境を構築する上で不可欠な要素となっている。 クラウドサービスとのダイレクトリンクがもたらすメリットは多岐にわたる。第一に、セキュリティの劇的な向上である。個人情報や企業の機密情報といった重要なデータをクラウド上で扱う際、インターネットを経由する経路は常に攻撃の標的となるリスクを伴う。ダイレクトリンクを利用すれば、通信が閉域網内で完結するため、外部からの侵入リスクを最小限に抑え、安全なデータ転送が実現できる。第二に、安定した高性能通信である。大容量のデータをクラウドにバックアップしたり、オンプレミスの基幹システムとクラウド上のアプリケーションを連携させたりする場合、通信の遅延や帯域不足はシステム全体の性能低下に直結する。ダイレクトリンクは帯域が保証され、低遅延な通信が可能なため、ミッションクリティカルなシステムの要件を満たすことができる。第三に、データ転送コストの削減である。多くのクラウドサービスでは、インターネット経由でのデータ転送には従量課金が発生するが、ダイレクトリンク経由のデータ転送料金はそれよりも安価に設定されていることが多い。そのため、日常的に大量のデータを転送する場合には、トータルコストを削減できる可能性がある。 なお、ネットワークインフラ以外の文脈で「ダイレクトリンク」という言葉が使われることもあるため注意が必要である。例えば、Web開発の分野では、他のウェブサイトが公開している画像や動画などのファイルに直接リンクを張り、自らのサイト上で表示させる行為を指すことがある。これは「ホットリンク」や「インラインリンク」とも呼ばれ、相手のサーバーに意図せず負荷をかける行為であり、著作権法に抵触する可能性もあるため、通常は避けるべきとされる。また、スマートフォンアプリケーションの文脈では、Webページ上のリンクをクリックした際に、特定のアプリケーションを起動し、その中の特定画面に直接遷移させる技術を「ディープリンク」と呼び、これも広義のダイレクトリンクの一種と解釈されることがある。このように、文脈によって指し示す対象が異なるため、どの分野におけるダイレクトリンクを指しているのかを常に意識することが重要である。