XMPP (エックスエムピーピー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
XMPP (エックスエムピーピー) の読み方
日本語表記
拡張可能メッセージングプレゼンスプロトコル (カクチョウカノウメッセージングプレゼンスプロトコル)
英語表記
Extensible Messaging and Presence Protocol (エクステンシブルメッセージングアンドプレゼンスプロトコル)
XMPP (エックスエムピーピー) の意味や用語解説
XMPP(Extensible Messaging and Presence Protocol)は、リアルタイム通信のためのオープンなプロトコルだ。特にインスタントメッセージング(IM)、プレゼンス情報(オンライン状況の共有)、マルチパーティチャットなどに利用される。IETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化されており、RFC 6120、RFC 6121、RFC 7622などで定義されている。 XMPPの大きな特徴は、その分散型アーキテクチャにある。中央サーバに依存せず、複数のサーバが連携してネットワークを構成できる。これは、電子メールの仕組みと似ていると言えるだろう。ユーザは特定のXMPPサーバにアカウントを持ち、そのサーバを通じて他のユーザと通信を行う。異なるXMPPサーバにアカウントを持つユーザ同士でも、サーバ間通信を通じてメッセージのやり取りが可能だ。 XMPPはXML(Extensible Markup Language)をベースにしており、メッセージはXML形式で記述される。XMLの柔軟性により、様々な種類の情報をやり取りできる。テキストメッセージだけでなく、画像、音声、ファイルなども送信可能だ。また、カスタムのXML要素を定義することで、独自の拡張機能を追加することもできる。 XMPPの基本的な通信モデルは、クライアント・サーバモデルだ。ユーザはXMPPクライアント(ソフトウェア)を使用して、XMPPサーバに接続する。クライアントはサーバに対して、認証、プレゼンス情報の送信、メッセージの送受信などのリクエストを行う。サーバはクライアントからのリクエストを処理し、他のクライアントやサーバとの間で情報を交換する。 XMPPにおける主要な概念として、「Jabber ID(JID)」がある。JIDは、XMPPネットワーク上のユーザまたはリソースを一意に識別するためのアドレスだ。JIDは、通常、"ユーザ名@サーバ名/リソース名"という形式で表される。ユーザ名はアカウント名、サーバ名はXMPPサーバのドメイン名、リソース名はクライアントの種類やセッションを識別するための文字列だ。例えば、"alice@example.com/mobile"というJIDは、example.comというサーバ上のaliceというユーザが、モバイルデバイスから接続していることを示す。 プレゼンス情報は、XMPPの重要な機能の一つだ。プレゼンス情報とは、ユーザのオンライン状況(オンライン、オフライン、取り込み中など)や、ステータスメッセージ(例えば、「会議中」など)のことだ。ユーザは自分のプレゼンス情報をXMPPサーバに送信し、サーバはそれを購読している他のユーザに通知する。これにより、ユーザは他のユーザの状況をリアルタイムに把握し、適切なタイミングでコミュニケーションをとることができる。 XMPPは、セキュリティにも配慮されている。TLS(Transport Layer Security)暗号化を使用することで、クライアントとサーバ間の通信を暗号化し、盗聴や改ざんを防ぐことができる。また、SASL(Simple Authentication and Security Layer)認証メカニズムを使用することで、安全なユーザ認証を実現している。 XMPPは、オープンなプロトコルであるため、様々なプログラミング言語やプラットフォームで利用できる。多くのXMPPクライアントライブラリが存在し、開発者はこれらを利用して簡単にXMPPアプリケーションを開発できる。また、XMPPサーバソフトウェアも、ejabberd、Prosody、Openfireなど、オープンソースのものから商用製品まで、様々な選択肢がある。 XMPPの応用範囲は広い。インスタントメッセージングアプリケーションの他、IoT(Internet of Things)デバイス間の通信、ゲームにおけるリアルタイム対戦、ソーシャルネットワークのリアルタイム機能など、様々な分野で活用されている。特に、IoTの分野では、軽量で効率的な通信プロトコルとして、XMPPが注目されている。 XMPPは、拡張性が高いことも特徴だ。XMPP Standards Foundation (XSF) が中心となって、XMPP Extension Protocols (XEPs) と呼ばれる拡張プロトコルが開発されている。XEPsは、XMPPの基本機能を拡張し、特定のニーズに対応するためのものだ。例えば、マルチユーザチャット(MUC)、pubsub(Publish-Subscribe)、データフォームなどのXEPsが存在する。 近年では、WebSocketと組み合わせることで、WebブラウザからのXMPP接続が容易になっている。WebSocketは、双方向通信を可能にするプロトコルであり、XMPPクライアントライブラリと組み合わせることで、Webアプリケーションにリアルタイム通信機能を追加できる。 XMPPは長年にわたり利用されてきた実績のあるプロトコルであり、信頼性と安定性に優れている。オープンな標準であるため、特定のベンダーに依存することなく利用できる。リアルタイム通信システムを構築する際には、XMPPを検討する価値があるだろう。