iLO(アイエルオー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

iLO(アイエルオー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アイ・エル・オー (アイエルオー)

英語表記

iLO (アイエルオー)

用語解説

iLOとは、Hewlett Packard Enterprise (HPE) 社が開発したサーバー管理技術の名称である。正式名称はIntegrated Lights-Outといい、その名の通り、サーバーが設置されている場所から離れた地点にいても、あたかも目の前で操作しているかのようにサーバーを管理するための機能を提供する。これは、サーバーのマザーボード上に搭載された専用のプロセッサによって実現されており、サーバー本体のCPUやOSとは独立して動作する点が最大の特徴である。そのため、サーバーの電源がオフの状態や、OSが起動していない、あるいはクラッシュしてしまったような状況でも、ネットワーク経由でサーバーにアクセスし、電源の投入や再起動、ハードウェアの状態監視、BIOS/UEFIの設定変更といった基本的な管理作業を行うことが可能である。システムエンジニアにとって、物理的にデータセンターへ駆けつけることなく、迅速にサーバーの保守や障害対応を行うための必須のツールである。

iLOの核心的な機能は、サーバー本体から独立したハードウェア構成にある。iLOは、専用の管理プロセッサ、メモリ、ストレージ、そしてネットワークインターフェースを持っており、これらはサーバーの主電源からではなく、待機電力で動作する。サーバーが電源コンセントに接続されている限り、サーバー本体の電源状態に関わらずiLOは常に稼働し続けている。この独立性により、OSに依存しない低レイヤーでの管理が実現される。例えば、OSのインストール作業は、通常であればサーバーの前にモニター、キーボード、マウスを接続して行う必要があるが、iLOを使えば、これらの操作をすべて遠隔地の自席のPCから実行できる。

iLOが提供する主要な機能は多岐にわたる。最も基本的な機能は、リモートでの電源制御である。Webブラウザベースの管理画面から、サーバーの電源をオンにしたり、オフにしたり、強制的に再起動したりすることができる。OSがフリーズして応答しなくなった際に、物理的な電源ボタンを押すのと同じ操作を遠隔で行えるため、障害復旧の初動対応において極めて重要である。

次に重要な機能がリモートコンソールである。これは、サーバーのビデオ出力をネットワーク経由で転送し、手元のPC画面に表示すると同時に、手元のキーボードとマウスの操作をサーバーに送信する機能である。一般的にKVM over IP (Keyboard, Video, Mouse over IP) とも呼ばれる。この機能により、サーバーのBIOS/UEFI設定画面の操作や、OSのインストールプロセス、あるいはブルースクリーンなどのエラー画面の確認が、あたかもサーバーの目の前にいるかのように行える。

仮想メディア機能もまた、運用効率を大幅に向上させる。これは、手元のPCにあるOSのインストールイメージファイル (ISOファイル) や、USBメモリの内容を、ネットワーク経由でサーバーに接続された物理的なDVDドライブやUSBデバイスであるかのように認識させる機能である。これにより、インストールメディアを物理的に用意してデータセンターに持ち込む必要がなくなり、遠隔地から迅速にOSのクリーンインストールやリカバリー作業を開始できる。

さらに、iLOはサーバーのハードウェア状態を常時監視する役割も担っている。CPUやメモリ、ストレージの温度、冷却ファンの回転数、電源ユニットの状態、ディスクアレイの健全性など、数百に及ぶセンサー情報を収集し、記録する。閾値を超えた異常を検知した際には、管理者にメールなどで通知するアラート機能も備えている。これにより、障害の予兆を早期に発見したり、障害発生時に原因を特定したりするのに役立つ。記録されたハードウェアのイベントログは、OSが記録するシステムログとは別にiLO内に保存されるため、OSが起動できないような致命的な障害が発生した際にも、問題の切り分けに不可欠な情報源となる。

iLOへのアクセスは、通常、専用に割り当てられたネットワークポート、またはサーバーの業務用のネットワークポートを共有する形で接続されたiLOのIPアドレスに対して、Webブラウザを用いて行う。HTTPSで暗号化されたWebインターフェースを通じて、これまで述べた全ての機能にアクセスできる。また、より高度な管理や自動化のために、SSHによるコマンドラインアクセスや、RESTful APIを通じたプログラムからの操作もサポートされている。

iLOのようなサーバーのリモート管理機能は、現代のITインフラ運用において不可欠な存在である。HPEのiLO以外にも、Dell社のiDRAC (Integrated Dell Remote Access Controller) やLenovo社のXClarity Controllerなど、主要なサーバーベンダーはそれぞれ同様の機能を提供しており、これらは総称してBMC (Baseboard Management Controller) と呼ばれる。これらの技術により、システムエンジニアは物理的な場所に制約されることなく、効率的かつ迅速に多数のサーバーを管理することが可能となっている。

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