IPP(アイピーピー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
IPP(アイピーピー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
インターネット印刷プロトコル (インターネットインサツプロトコル)
英語表記
Internet Printing Protocol (インターネットプリンティングプロトコル)
用語解説
IPPはInternet Printing Protocolの略称であり、インターネットやイントラネットといったIPネットワークを通じて、コンピューターからプリンターへ印刷データを送信したり、プリンターの状態を管理したりするための標準的な通信プロトコルである。この技術が登場する以前は、LPR/LPDといったプロトコルが主に利用されていたが、これらは元々ローカルエリアネットワーク(LAN)内での利用を想定して設計されていたため、インターネット越しの通信ではセキュリティやファイアウォールの通過といった課題を抱えていた。IPPは、Web技術の根幹をなすHTTP(Hypertext Transfer Protocol)をベースにすることでこれらの課題を克服し、より安全で柔軟なネットワーク印刷環境を実現するために開発された。これにより、利用者はオフィス内だけでなく、自宅や外出先など、場所を問わずにネットワーク上のプリンターへアクセスし、印刷指示を出すことが可能となる。主要なオペレーティングシステムやネットワーク対応プリンターの多くが標準でサポートしており、現代のネットワーク印刷における基盤技術の一つとして広く普及している。
IPPの最大の特徴は、通信の基盤としてHTTP/1.1を採用している点にある。クライアント(印刷を指示するコンピューター)からサーバー(プリンターやプリントサーバー)への要求は、HTTPのPOSTメソッドを用いて送信される。この仕組みは、WebブラウザがWebサーバーに情報を送信する仕組みと全く同じであるため、既存のインターネット基盤や技術をそのまま活用できるという大きな利点を持つ。例えば、通信をHTTPS(HTTP Secure)に切り替えることで、印刷データや制御コマンドをSSL/TLSによって暗号化し、第三者による盗聴や改ざんを防ぐことができる。また、HTTPの認証機能を利用して、特定のユーザーのみに印刷を許可するといったアクセス制御も容易に実装できる。さらに、企業のファイアウォール設定においても、Webアクセスで一般的に使用されるポート(80番や443番)を利用するため、印刷のために特別なポートを開放する必要がなく、ネットワーク管理の負担を軽減できる。
IPPは、プリンターや印刷ジョブといった管理対象を「オブジェクト」という単位で捉え、それぞれのオブジェクトが持つ情報を「属性」として定義するオブジェクト指向のモデルを採用している。例えば、「プリンターオブジェクト」には、プリンターの名前、設置場所、現在の状態(印刷中、待機中など)、対応する用紙サイズやカラー印刷の可否といった多様な属性が含まれる。同様に、ユーザーが印刷を指示した際に生成される「ジョブオブジェクト」には、ジョブのID、ドキュメント名、所有者、ジョブの状態(処理待ち、印刷完了、エラーなど)といった属性が関連付けられる。クライアントは、これらの属性値をサーバーに問い合わせることでプリンターの詳細な状態をリアルタイムで把握したり、ジョブの進捗を確認したりすることができる。
クライアントがサーバーに対して行う具体的な要求は「オペレーション」と呼ばれる。IPPでは、印刷ジョブの送信(Print-Job)、プリンターの属性情報の取得(Get-Printer-Attributes)、保留中のジョブのキャンセル(Cancel-Job)、プリンターの一時停止(Pause-Printer)など、多岐にわたる標準オペレーションが定義されている。クライアントは、実行したいオペレーションと、それに関連する属性情報を組み合わせてHTTPリクエストとしてサーバーに送信する。サーバーはリクエストを解釈して処理を実行し、その結果をクライアントに返す。この一連のやり取りを通じて、単純な印刷指示だけでなく、プリンターの遠隔監視やジョブの精密な制御といった高度な管理が可能となる。
IPPは策定以来、機能拡張を重ねており、IPP/1.0、IPP/1.1、IPP/2.0といったバージョンが存在する。近年では特に「IPP Everywhere」という仕様が重要視されている。これは、特定のメーカーが提供するプリンタードライバーを個別にインストールすることなく、オペレーティングシステムに標準搭載された機能だけで、ネットワーク上の様々なプリンターで基本的な印刷を可能にすることを目的とした規格である。これにより、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスからでも、手軽に印刷できる環境が整備され、ユーザーの利便性は飛躍的に向上した。IPPは、その安全性、柔軟性、そして標準化への取り組みによって、オンプレミス環境からクラウドプリントサービスに至るまで、あらゆるネットワーク印刷の場面で不可欠なプロトコルとしてその地位を確立しているのである。