LU(エルユー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LU(エルユー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ルー (ルー)

英語表記

LU (エルユー)

用語解説

LUはLogical Unitの略称であり、日本語では論理ユニットと訳される。これは主に、IBM社が提唱したネットワークアーキテクチャであるSNA (Systems Network Architecture) において、通信を行う際の端点を定義するために用いられる論理的な識別子のことである。システムエンジニアを目指す上で、特に金融機関や大企業の基幹システムで利用されるメインフレーム(汎用コンピュータ)環境を理解する際には重要な概念となる。LUは、物理的な端末やプリンター、あるいはコンピュータ上で動作するアプリケーションプログラムそのものではなく、それらがネットワーク上の他の相手と通信するための「窓口」や「出入口」のような役割を果たす。物理的な接続とは切り離された「論理的」な存在であるため、ネットワークの物理構成の変更に影響されることなく、柔軟な通信設定が可能となる点が特徴である。具体的には、あるアプリケーションが他のシステム上のアプリケーションとデータをやり取りしたい場合、それぞれのアプリケーションは自身に割り当てられたLUを通じて通信セッションを確立し、データの送受信を行う。このように、LUはSNAネットワークにおける通信の始点および終点となるエンドポイントとして機能する。

LUの概念をより深く理解するためには、それが利用されるSNAという背景を把握することが不可欠である。SNAは、コンピュータと端末、あるいはコンピュータ同士を接続するための包括的なルールや手順を定めたものであり、階層化された構造を持つ。LUはこのアーキテクチャの中で、エンドユーザーやアプリケーションがネットワークサービスを利用するためのインターフェースを提供する役割を担っている。LUにはその機能や通信プロトコルに応じていくつかの「タイプ」が存在し、通信の目的に合わせて使い分けられる。例えば、古くから使われているタイプとして、ディスプレイ端末との対話的な通信に使われる「LUタイプ2」、プリンター装置との通信に使われる「LUタイプ1」や「LUタイプ3」などがある。これらのタイプは、主にメインフレームをホスト(主)とし、端末やプリンターをスレーブ(従)とする主従関係に基づいた通信モデルを想定して設計されていた。

これらの中でも特に重要なのが「LUタイプ6.2」である。これはAPPC (Advanced Program-to-Program Communication) とも呼ばれ、従来の主従関係の通信モデルとは異なり、プログラム同士が対等な立場で通信を行うことを可能にした画期的なプロトコルであった。LU 6.2は、分散トランザクション処理の基盤となる機能を備えており、複数のシステムにまたがる処理の整合性を保証するための同期点制御(コミットやロールバックの概念)などをサポートしていた。このアーキテクチャは、後のクライアントサーバーシステムや分散コンピューティングの考え方に大きな影響を与えたとされている。

また、LUと対になる概念としてPU (Physical Unit) が存在する。PUは物理ユニットの略であり、コンピュータ本体や通信制御装置といった、ネットワークを構成する物理的なノード(機器やソフトウェア)を指す。LUは、このPUの上で動作するソフトウェアとして実装される関係にある。一つのPU上には、複数のLUを定義することが可能であり、これにより一台の物理的なコンピュータが、複数の異なるアプリケーションの通信窓口を同時に持つことができる。この物理的な構成と論理的な通信路の分離が、SNAの柔軟性と管理性を高める上で中心的な役割を果たしている。

実際の通信は、二つのLU間で「セッション」と呼ばれる論理的な接続を確立することから始まる。一方のLUが、通信したい相手のLUを指定してセッションの確立を要求し、相手側のLUがそれを承諾することで、データの送受信が可能な状態となる。このセッションを通じて、定められたプロトコルに従ってデータが交換され、通信が終了するとセッションは解放される。

現代の企業ネットワークの主流はTCP/IPであるが、長年にわたり安定稼働が求められる基幹システムでは、今なおメインフレームとSNAが利用され続けているケースは少なくない。そして、そのような環境ではLUの概念も依然として現役である。さらに、TCP/IPネットワーク上でSNA通信を実現するための技術、例えば、メインフレームの端末画面をエミュレートするTN3270や、SNAのデータをIPパケットに格納して送受信するEnterprise Extenderといった仕組みの中でも、通信相手を識別するためにLUの名前が内部的に利用されている。このため、レガシーシステムと最新のシステムを連携させるプロジェクトなどにおいて、システムエンジニアがLUに関する知識を求められる場面がある。LUは、ネットワークにおける通信を物理的な実装から抽象化するという、コンピュータサイエンスの基本的な考え方を体現した重要な概念であると言える。