SNA(エスエヌエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
SNA(エスエヌエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
システムネットワークアーキテクチャ (システムネットワークアーキテクチャ)
英語表記
Systems Network Architecture (システムズ・ネットワーク・アーキテクチャ)
用語解説
SNAは、System Network Architectureの略であり、1970年代初頭にIBMが提唱した、メインフレームを中心としたコンピュータネットワークを構築・管理するための包括的なアーキテクチャである。これは、当時の多種多様なIBM製コンピュータや周辺機器が相互に効率的かつ信頼性の高い通信を行うことを可能にする目的で開発された。SNAの登場以前は、各システムやアプリケーションが独自の通信プロトコルを持っていたため、異なる機器間の通信は非常に困難であった。SNAは、この問題に対する統一的な解決策を提供し、IBM製品による大規模な企業ネットワークの基盤として、長きにわたり世界中のビジネスを支えてきた。現在、ネットワークの主流はTCP/IPへと移行しているものの、金融機関や航空会社といったミッションクリティカルなシステムを運用する企業では、依然としてSNAが基幹システムの一部として稼働しているケースが少なくないため、その概念を理解することは、レガシーシステムを扱う上で重要な知識となる。
SNAは、OSI参照モデルに似た7つの階層構造を持つことで特徴づけられる。この階層モデルは、各層が特定の機能に責任を持つことで、複雑なネットワーク通信を管理しやすくしている。最下層の物理層は、物理的なケーブルやコネクタといったハードウェアレベルでの接続と電気信号の送受信を定義する。その上位に位置するデータリンク層は、物理的なリンク上でのデータの正確な転送を保証し、エラー検出や再送制御を行う。パス制御層は、ネットワーク内の複数のデータリンクを介してデータをルーティングする役割を担い、効率的なデータパスの選択や輻輳制御を行う。伝送制御層は、エンドツーエンドの接続を確立・維持し、データのセグメンテーションや再構築、フロー制御など、信頼性の高いデータ伝送を保証する。データフロー制御層は、論理的な通信セッション内のデータフローを管理し、半二重通信における送信権の制御や、複数の応答が必要な場合の応答管理などを行う。機能管理データサービス層は、プレゼンテーション層に相当し、データ形式の変換や暗号化、圧縮といった、アプリケーションが利用するデータの表現に関するサービスを提供する。そして最上位のエンドユーザー層は、アプリケーションプログラムやユーザーがネットワークサービスを利用するためのインターフェースを提供する層である。
SNAにおける主要な構成要素には、LU (Logical Unit)、PU (Physical Unit)、そしてSSCP (System Services Control Point) がある。LUは、ユーザーやアプリケーションがネットワークサービスを利用するための論理的なアクセスポイントであり、端末、プリンタ、アプリケーションプログラムなどがこれに該当する。例えば、メインフレーム上のデータベースアプリケーションや、それにアクセスするPCのターミナルエミュレータは、それぞれが異なるLUとしてSNAネットワーク上で識別される。PUは、ネットワーク内の物理的なリソースを管理する。これは、通信コントローラや回線アダプタといったハードウェアデバイス、あるいはそれらを制御するソフトウェアを指し、ネットワークの物理的な接続と機能を担当する。SSCPは、SNAネットワーク全体を集中管理する中枢である。SSCPは、LUとPUの間のセッション確立を制御し、ネットワークリソースの構成、モニタリング、エラー回復といった広範な管理機能を提供する。通常、SSCPはメインフレーム上で動作するVTAM (Virtual Telecommunications Access Method) と呼ばれるソフトウェアによって実装される。VTAMは、SNAネットワーク内のすべてのLUとPUを認識し、それらの間で通信セッションを確立・維持するための中心的な役割を果たす。一つのSSCPが管理する範囲を「ドメイン」と呼び、複数のドメインを持つ大規模なSNAネットワークでは、SSCP同士が連携して通信を確立することも可能である。
SNAは、その設計思想から、高い信頼性、セキュリティ、集中管理性を実現している。特に、ミッションクリティカルな業務システムにおいては、通信の途絶やデータの破損が許されないため、SNAの持つ堅牢なエラー回復機能やQoS (Quality of Service) 保証は大きな強みであった。また、ネットワーク全体をSSCPが集中管理することで、構成変更やトラブルシューティングが体系的に行える利点もあった。しかし、SNAはメインフレームを中心とした環境に最適化されており、そのアーキテクチャは非常に複雑で、導入・運用には専門的な知識と高コストを要した。また、標準プロトコルであるTCP/IPが普及するにつれて、SNAはTCP/IPとの相互運用性の面で課題を抱えるようになった。異なるプロトコルスタックを持つSNAとTCP/IPのシステム間で通信を行うためには、ゲートウェイ装置を介したプロトコル変換が必要となり、これがネットワーク構成の複雑化や性能劣化を招くことがあった。
現代のIT環境において、SNAは新たな展開を見せている。多くの企業がTCP/IPベースのオープンなネットワークへと移行している中で、既存のSNA資産を完全に廃止することが困難な場合がある。このような状況に対応するため、SNA over IP技術、特にEnterprise Extender (EE) が開発された。Enterprise Extenderは、SNAの通信セッションをIPネットワーク上にカプセル化して伝送する技術である。これにより、従来のSNA専用回線やハードウェアに依存することなく、TCP/IPネットワークを介してSNAアプリケーションとクライアントが通信できるようになり、レガシーシステムを維持しつつ、現代のインフラを活用することが可能になった。システムエンジニアを目指す者にとって、SNAは直接触れる機会が減っているかもしれないが、その歴史的背景、設計思想、そしてレガシーシステムを理解することは、現代の複雑なITインフラを全体として把握し、効果的なソリューションを提案するための重要な基礎知識となる。