Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

パソコン通信(パソコンツウシン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

パソコン通信(パソコンツウシン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

パソコン通信 (パソコンツウシン)

英語表記

PC communication (ピーシーコミュニケーション)

用語解説

パソコン通信とは、インターネットが広く一般に普及する以前の時代に、パーソナルコンピュータ(パソコン)と電話回線、そしてモデムと呼ばれる機器を用いて特定のホストコンピュータに接続し、情報交換やコミュニケーションを行ったオンラインサービス全般を指す。これは、現代のインターネットが提供する電子メール、掲示板、チャット、ファイル共有といった機能の原型であり、オンライン上での人々の交流や情報共有の文化を育んだ先駆的な技術であった。

パソコン通信の本格的な発展は1980年代後半から1990年代にかけて日本で顕著に見られた。当時の個人ユーザーにとって、オンラインで情報をやり取りする手段は限られており、パソコン通信は情報収集、趣味の交流、友人とのコミュニケーションなど、さまざまな目的で利用される唯一のオンラインサービスであった。

このサービスを利用するためには、まずパーソナルコンピュータが必須であった。次に重要なのがモデムである。モデム(MODEM: MOdulator-DEModulator)は、パソコンが扱うデジタル信号を電話回線を通じて送受信できるアナログ信号(音)に変換し、またその逆を行う装置である。これにより、本来音声通話のために設計された電話回線を介して、データ通信が可能になった。その他、電話回線とモデムを接続するための配線、そしてパソコン上で通信を制御し、受信した情報を表示するための通信ソフトウェア(ターミナルソフトなど)も必要であった。これらの機材が整った上で、ユーザーは通信ソフトウェアを介して、プロバイダが提供するホストコンピュータの電話番号にダイヤルアップ接続を行った。この接続方法は、通常の電話をかけるのと同様に、通信中は電話回線を占有する形式であった。

パソコン通信で提供されたサービスは多岐にわたる。最も中心的なサービスの一つが電子掲示板(BBS: Bulletin Board System)である。これは、特定のテーマごとに分類された掲示板に、ユーザーが文章を投稿したり、他のユーザーの投稿を閲覧したりする機能であった。趣味の話題、技術的な質問、社会問題への意見交換など、多種多様な情報がテキスト形式でやり取りされた。次に重要なのが電子メールサービスである。これは、特定のユーザーに向けて個人的なメッセージを送受信できる機能で、現代の電子メールの直接的なルーツである。さらに、複数のユーザーがリアルタイムでテキストメッセージを打ち込みながら会話するチャットルームも人気を博した。その他、フリーウェアやシェアウェア、各種データファイルをダウンロードできるファイルライブラリ、そしてテキストベースや簡易的なグラフィックを用いたオンラインゲームなども提供され、当時のユーザーに多様なオンライン体験を提供した。

運営形態には、大きく分けて二つの種類があった。一つは、NIFTY-Serve、PC-VAN、ASCII NETといった大手企業が提供する商用サービスである。これらは充実したコンテンツやサポートを提供し、月額基本料金に加え、通信時間に応じた従量課金制を採用していることが多かった。もう一つは、個人や小規模なグループが運営する草の根BBSと呼ばれるもので、特定の趣味や地域に特化した情報交換の場として、無料または少額の会費で運営されることが多かった。草の根BBSは、商用サービスに比べてアットホームな雰囲気が特徴で、熱心なコミュニティを形成していた。

技術的な側面を見ると、当時の通信速度は現代と比較して非常に低速であった。主流は2400bpsから28.8kbps程度の速度であり、大容量のデータを送受信するには長い時間を要したため、情報のやり取りは主にテキスト形式で行われた。また、電話回線を利用する性質上、通信中は自宅の電話が通話中となり、他の電話をかけたり受けたりすることはできなかった。通信料金もユーザーにとっては大きな負担となることがあり、接続時間に応じて電話料金とプロバイダ料金が発生するため、長時間の利用を躊躇する要因となっていた。

パソコン通信は、特定のホストコンピュータに直接接続するクローズドなネットワークであったが、これに対し現代のインターネットは、TCP/IPという共通のプロトコルを用いて世界中の無数のネットワークが相互に接続された「ネットワークのネットワーク」である。特に、World Wide Web(WWW)の登場は、インターネットの利用形態を根本的に変えた。グラフィカルなウェブブラウザを通じて、画像や動画を多用したリッチなコンテンツにアクセスできるようになり、情報の量と質が飛躍的に向上したのである。このインターネットの急速な普及に伴い、パソコン通信は徐々にその役目を終えていった。多くの商用パソコン通信サービスは、インターネット接続サービスへと事業転換するか、自社のサービスをインターネットに対応させる形で、新しい時代の情報通信インフラの一部として姿を変えていった。パソコン通信自体は過去の技術となったが、そこで培われたオンラインコミュニケーションの文化や、コミュニティ形成の考え方は、現代のインターネット上のフォーラム、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、ブログ、クラウドストレージなど、多様なサービスに脈々と受け継がれている。パソコン通信は、インターネット社会の到来を準備し、現代のデジタルライフの基礎を築いた、歴史的に非常に重要な技術であると言える。

関連コンテンツ

関連IT用語