ファーミング(ファーミング)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ファーミング(ファーミング)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ファーミング (ファーミング)
英語表記
pharming (ファーミング)
用語解説
ファーミングとは、インターネットユーザーを悪意のある偽のウェブサイトへ誘導し、IDやパスワード、クレジットカード情報などの個人情報を不正に窃取するサイバー攻撃の一種である。この攻撃の最終的な目的は、ユーザーの機密情報を不正に入手し、金銭的利益を得ることや、他のサイバー攻撃の足がかりとすることにある。ファーミングは、ユーザーが入力したドメイン名とは異なるサイトへ誘導されるため、フィッシング詐欺と異なり、ユーザーは自分自身で偽のURLをクリックしたわけではない点が特徴であり、より巧妙で被害に気づきにくいという危険性を持つ。
ファーミングの主な手法は、ドメインネームシステム(DNS)の仕組みを悪用することによって実現される。インターネット上のウェブサイトは、「example.com」のような人間が覚えやすいドメイン名と、「192.0.2.1」のようなコンピュータが識別するIPアドレスが紐付けられている。ユーザーがウェブブラウザでドメイン名を入力すると、DNSというシステムがそのドメイン名に対応するIPアドレスを検索し、正しいウェブサイトへと接続する役割を担っている。ファーミングでは、このDNSの変換プロセスが不正に操作されることで、ユーザーが正しいドメイン名を入力したり、正規のブックマークからアクセスしたりしても、結果として攻撃者が用意した偽のIPアドレスへと誘導されてしまうのである。
具体的な手法の一つとして、「DNSキャッシュポイズニング」が挙げられる。これは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)などが提供するDNSサーバが持つキャッシュ(一時的に保存された情報)に、攻撃者が偽のドメイン名とIPアドレスの対応情報を不正に注入する攻撃である。一度DNSサーバのキャッシュが汚染されると、そのDNSサーバを利用する広範囲のユーザーが、本来アクセスすべきウェブサイトではなく、攻撃者の偽サイトへ誘導されてしまう。
もう一つの手法は、「DNSサーバ自体の改ざん」である。これは、攻撃者がDNSサーバの脆弱性を悪用したり、管理者権限を不正に奪取したりして、DNSサーバが管理する正規のドメイン名に対するIPアドレスの情報を直接書き換えることで、ユーザーを偽サイトへ誘導する手口である。この場合も、そのDNSサーバを利用する多数のユーザーが被害に遭う可能性がある。
さらに、「ホストファイルの改ざん」という手法も存在する。ホストファイルとは、個々のコンピュータに備わっている、ドメイン名とIPアドレスの対応を記述するファイルのことである。ウェブブラウザがドメイン名からIPアドレスを解決する際、多くの場合、まずこのホストファイルが参照される。そのため、もし攻撃者がマルウェアなどを用いてユーザーのコンピュータのホストファイルを改ざんし、特定のドメイン名に対して偽サイトのIPアドレスを記述した場合、ユーザーはそのコンピュータから正規のDNSを参照することなく偽サイトへ誘導されてしまう。この場合、影響を受けるのはそのホストファイルが改ざんされた特定のコンピュータのみとなる。
ファーミングによって誘導された偽サイトは、見た目や機能が正規のウェブサイトと瓜二つに作られていることがほとんどである。そのため、ユーザーは偽サイトであることに気づきにくく、正規サイトだと思い込んでログイン情報やクレジットカード情報、氏名、住所、電話番号などの個人情報を入力してしまう危険性が非常に高い。特に、DNSレベルでの改ざんが行われた際には、ウェブブラウザのアドレスバーに表示されるURLが正規のドメイン名と全く同じである場合があり、ユーザーが偽サイトであることを見分けることが非常に困難になる。
ファーミングの被害を防ぐためには、複数の対策を講じることが重要である。まず、ウェブサイトにアクセスする際は、常にアドレスバーのURLを確認する習慣をつけることが極めて重要だ。特に、ログイン情報や個人情報を入力する際には、必ずURLが正規のものであるか、そして「HTTPS」(HTTP Secure)接続が確立されているか(通常、アドレスバーに鍵マークが表示される)を確認すること。HTTPSは、通信が暗号化され、アクセスしているサイトが正当なものであることを証明するSSL/TLS証明書が利用されていることを意味する。不審なウェブサイトでは、この証明書が適切に設定されていなかったり、正規のものと異なる発行元だったりする可能性があるため、証明書の詳細を確認することも有効な手段となる。
また、コンピュータやスマートフォンのオペレーティングシステム(OS)、ウェブブラウザ、導入しているセキュリティソフトウェアは常に最新の状態に保つべきである。これらには既知の脆弱性を修正するパッチが含まれており、攻撃者がそれらの脆弱性を悪用してホストファイルを改ざんしたり、マルウェアを侵入させたりすることを防ぐ助けとなる。アンチウイルスソフトやマルウェア対策ソフトを導入し、定期的にシステムスキャンを実行することも推奨される。
さらに、DNSレベルでのファーミング対策としては、DNSSEC(DNS Security Extensions)の導入と利用が進められている。DNSSECはDNSの応答に電子署名を追加することで、DNS応答の正当性を検証する仕組みであり、DNSキャッシュポイズニングなどによる偽の情報の注入を防ぐ効果が期待できる。ユーザー側で直接DNSSECの設定を行うことは少ないが、利用しているISPやDNSサービスがDNSSECに対応しているかを確認することも一つの手段である。
最後に、重要なサービスにおいては多要素認証(MFA)を設定することが極めて有効である。たとえファーミングによってIDとパスワードが盗まれたとしても、スマートフォンへのコード送信や生体認証などの追加の認証要素があれば、攻撃者は不正ログインを試みることが困難になる。パスワードも使い回しを避け、推測されにくい強力なものを設定することが基本である。これらの対策を組み合わせることで、ファーミングの被害に遭うリスクを大幅に低減することが可能となる。