TMDS(ティーエムディーエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
TMDS(ティーエムディーエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
TMDS (ティーエムディーエス)
英語表記
TMDS (ティーエムディーエス)
用語解説
TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)とは、デジタルビデオ信号の高速伝送に用いられる技術方式の一つである。主にDVI(Digital Visual Interface)や初期のHDMI(High-Definition Multimedia Interface)といった映像インターフェースの基盤技術として採用されており、コンピュータとディスプレイ、あるいは映像機器間での高品質なデジタル映像信号のやり取りを可能にする。アナログ信号伝送における画質劣化の問題を解決するため、デジタル信号の利点を最大限に引き出し、ノイズに強く安定した伝送を実現するために開発された。
TMDSの詳細について掘り下げていく。この技術は、主に「差動信号伝送(Differential Signaling)」「シリアライゼーション(Serialization)」「エンコーディング(Encoding)」という三つの柱で構成されている。
まず、差動信号伝送とは、一本の信号線でデータを送るのではなく、二本の信号線に逆位相の信号を流してデータを伝送する方式を指す。この二本の信号線が受けるノイズは、ほぼ同じであると仮定できる。受信側でこの二つの信号の電位差を検出することで、共通ノイズ成分を相殺し、データ信号のみを正確に取り出すことが可能になる。これにより、外部からの電磁ノイズやケーブル自身のクロストークといった干渉に非常に強く、高速なデジタル信号を安定して長距離伝送できるという大きな利点がある。
次に、シリアライゼーションは、コンピュータ内部で並列に処理されているデータを、ケーブルでの伝送に適した直列データに変換するプロセスである。例えば、RGB各色のデータはそれぞれ8ビットや10ビットといった並列データとして扱われるが、これをTMDSでは高速なシリアルデータストリームへと変換し、一本の差動信号ペアで順次伝送する。これにより、ケーブル内の信号線の数を減らしつつ、高いデータ転送速度を実現できる。
そして、エンコーディングは、TMDSの「Transition Minimized」という名称の由来にもなっている重要な技術である。TMDSでは、8ビットのデータ信号を10ビットの信号へと変換する「8b/10bエンコーディング」と呼ばれる方式が採用されている。このエンコーディングの主な目的は二つある。一つは「DCバランス(直流成分の偏り)」の維持である。信号の「High」と「Low」が連続すると直流成分が偏り、信号品質の劣化やノイズ発生の原因となるが、8b/10bエンコーディングでは「High」と「Low」の数を均等に近づけるように変換することで、直流成分の偏りを最小限に抑える。もう一つは「クロック成分の埋め込み」である。データ信号の中にクロック情報も同時に埋め込むことで、受信側が別途クロック信号を必要とせずに正確なタイミングでデータを復元できるようになる。これにより、独立したクロック信号がノイズやジッタの影響を受けるリスクを減らし、同期の精度を高めることができる。
TMDSは通常、複数のチャネルで構成される。DVIやHDMIの多くの実装では、映像信号を伝送するための3つのデータチャネルと、データの同期をとるための1つのクロックチャネル、合計4つの差動信号ペアが使われる。3つのデータチャネルは、それぞれ赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各色成分と、水平同期信号や垂直同期信号といった制御信号を同時に伝送する。これらのチャネルは全て、共通のクロックチャネルのタイミングに同期して動作する。
DVIでは、TMDSのチャネル数に応じて「シングルリンク」と「デュアルリンク」の2種類がある。シングルリンクDVIは上記の3つのデータチャネルと1つのクロックチャネルで構成され、最大で約1920x1200@60Hz程度の解像度に対応する。一方、デュアルリンクDVIは、TMDSのデータチャネルをもう3つ追加し、合計6つのデータチャネルと1つのクロックチャネルを使用することで、より高解像度(例えば2560x1600@60Hz)や高リフレッシュレートでの伝送を可能にする。HDMIも、その初期バージョンではTMDSをベースとしており、DVIと同様にデジタル映像信号の伝送に利用され、音声信号や制御信号もTMDSとは別のチャネルで送ることで多機能化が図られている。
システムエンジニアを目指す上でTMDSの理解は、ディスプレイ接続のトラブルシューティングや適切なケーブル選択において役立つ。例えば、DVIケーブルにはデジタル専用のDVI-Dと、デジタルとアナログの両方に対応するDVI-Iがあるが、TMDS信号を伝送するのはDVI-Dのピンであり、DVI-Iのデジタル部分もTMDSを利用している。ケーブルの品質が低い場合や、規定の長さ以上に長いケーブルを使用した場合、TMDSの特性であるノイズ耐性や信号品質が損なわれ、画面のちらつき、ノイズ、表示不良といった問題が発生することがある。これは、差動信号の電位差が小さくなったり、エンコーディングされた信号が正しく復元できなくなったりするためである。
近年ではDisplayPortやUSB-C(Alt Mode)など、TMDSとは異なるパケットベースの伝送方式を採用する新しいインターフェースも登場しているが、DVIやHDMIは依然として広く普及しており、TMDSはデジタル映像伝送の歴史と基礎を理解する上で不可欠な技術要素であると言える。デジタル信号伝送の基本的な考え方、すなわちノイズ耐性の高い差動信号と、効率的なデータ伝送を実現するエンコーディングとシリアライゼーションの組み合わせは、TMDSのみならず多くの高速シリアル伝送技術に応用されている重要な概念である。