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TSIG(ティーシグ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

TSIG(ティーシグ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

トランザクション署名 (トランザクションショウメイ)

英語表記

TSIG (ティーシグ)

用語解説

TSIG(Transaction Signature)は、DNS(Domain Name System)メッセージの認証と完全性を保証するためのメカニズムである。これは、DNSプロトコルが元々持っていたセキュリティ上の脆弱性、特にメッセージの改ざんやなりすましを防ぐことを目的として開発された。インターネットの根幹を支えるDNSにおいて、偽の情報が伝播することを防ぎ、システム全体の信頼性を維持するために重要な役割を果たす。TSIGは主に、DNSサーバ間や、特定の信頼できるクライアントとDNSサーバ間の通信を保護するために利用され、メッセージ単位での認証を提供する点が特徴である。

TSIGの詳細な仕組みと動作原理について解説する。TSIGは共通鍵暗号方式に基づいているため、通信を行う双方のシステムが事前に共有鍵(シークレットキー)を安全な方法で共有している必要がある。この鍵は、TSIGレコードと呼ばれる特別なDNSリソースレコードの生成と検証に用いられる。具体的には、送信側のDNSサーバやクライアントは、送信するDNSメッセージ全体と、事前に共有したシークレットキーを組み合わせて、ハッシュ関数によりメッセージ認証コード(MAC: Message Authentication Code)を計算する。このMACと、現在のタイムスタンプ、そして許容されるタイムスタンプの誤差(Fudge)などの情報が、DNSメッセージの追加セクションにTSIGレコードとして付加される。受信側のDNSサーバやクライアントは、受け取ったDNSメッセージからTSIGレコードを取り除いた部分と、自身が共有しているシークレットキーを用いて、同様の計算を独立して行う。そして、自身で計算したMACと、受信したTSIGレコードに含まれるMACを比較し、これらが一致することを確認する。さらに、TSIGレコードに含まれるタイムスタンプが、受信側の現在の時刻と許容誤差の範囲内にあるかどうかも検証する。これらの検証がすべて成功した場合、受信側はメッセージが認証された送信元から送られ、通信中に改ざんされていない完全な状態であることを信頼できると判断する。タイムスタンプと許容誤差の仕組みは、悪意のある第三者が古い正当なメッセージを再利用して攻撃を行う「リプレイアタック」を防ぐために非常に重要である。

TSIGは様々なDNS運用の場面で活用されている。最も典型的な利用例は、プライマリDNSサーバとセカンダリDNSサーバ間の「ゾーン転送」の保護である。ゾーン転送は、DNSゾーンの情報を同期するために行われるプロセスであり、この通信が保護されていないと、悪意のある第三者が不正なゾーン情報を注入したり、正当な情報を盗聴したりするリスクがある。TSIGを用いることで、ゾーン転送リクエストとレスポンスの双方が認証され、ゾーン情報の完全性が確保される。次に重要な用途は、ダイナミックアップデート(DDNS: Dynamic DNS Update)の認証である。ダイナミックアップデートは、DHCPサーバや特定のホストが自身のIPアドレス情報をDNSサーバに動的に登録・更新する際に用いられる。TSIGはこのアップデートリクエストが正当な送信元から発信されたものであることを確認し、不正なエントリの追加や既存エントリの改ざんを防ぐ。その他にも、DNS再帰クエリの送信元を限定的に認証したり、DNS管理ツールからの操作を認証したりする目的でも利用されることがある。

TSIGの主なメリットとしては、その比較的容易な実装が挙げられる。DNSSECのような公開鍵基盤の複雑な鍵管理や署名検証プロセスと比較すると、TSIGは共通鍵の共有とシンプルなMAC計算によって実現されるため、導入障壁が低い。また、特定のサーバ間やクライアントとサーバ間の信頼できるチャネルを構築するのに適しており、必要な箇所に絞ってセキュリティ対策を施すことが可能である。しかし、TSIGにはデメリットや限界も存在する。最も大きな課題は、鍵管理の手間である。通信を行うすべてのエンティティ間で事前に共通鍵を安全に共有し、定期的に更新する必要があるため、特に大規模な環境や多数のクライアントと認証を行う場合にはスケーラビリティに限界がある。また、TSIGはメッセージ単位の認証と完全性保証を提供するが、これはあくまで通信チャネルの保護に過ぎず、DNSSECが提供するような「DNSゾーンデータそのもの」に対する署名と検証、つまりエンドツーエンドの信頼性を保証するものではない。例えば、キャッシュDNSサーバが攻撃を受け、不正な情報をキャッシュしてしまった場合、TSIGはそのキャッシュからクライアントへの応答を保護することはできない。

DNSSEC(DNS Security Extensions)との関係についても触れておくべきである。TSIGとDNSSECは、DNSのセキュリティを強化するという共通の目標を持つものの、そのアプローチと適用範囲が異なる。TSIGが主にサーバ間または信頼できるクライアントとサーバ間のトランザクション(メッセージ)の認証と完全性保証に焦点を当てるのに対し、DNSSECはDNSゾーンデータ全体の認証と完全性を保証するために、公開鍵暗号技術を用いてゾーンデータにデジタル署名を付与し、その署名を検証することでデータの正当性を確認する。これにより、DNSキャッシュポイズニングのような攻撃から、クライアントが信頼できるDNS応答を得られるようにする。したがって、TSIGとDNSSECは互いに排他的な技術ではなく、補完的な関係にあると言える。TSIGは主にゾーン転送やダイナミックアップデートといった、特定のDNS操作のセキュリティを確保するために用いられ、DNSSECはより広範なDNSデータ全体の信頼性を確保するために用いられる。システム構築においては、それぞれの特性を理解し、適切な場面で両技術を組み合わせて利用することが推奨される。

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