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【ITニュース解説】Chaos Mesh Critical GraphQL Flaws Enable RCE and Full Kubernetes Cluster Takeover

2025年09月17日に「The Hacker News」が公開したITニュース「Chaos Mesh Critical GraphQL Flaws Enable RCE and Full Kubernetes Cluster Takeover」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Chaos Meshに深刻なセキュリティ脆弱性が見つかった。攻撃者はわずかなネットワークアクセスでこれを悪用し、ポッド停止などの障害を引き起こし、Kubernetesクラスターを完全に乗っ取る危険性がある。

ITニュース解説

サイバーセキュリティの研究者たちが、Chaos Meshというツールに複数の重大なセキュリティ上の欠陥を発見したというニュースが報じられた。これらの欠陥は、もし悪意のある攻撃者によって利用されてしまうと、Kubernetes環境全体が完全に乗っ取られる可能性があるという、非常に深刻なものだ。さらに、攻撃者は遠隔からコードを実行する、いわゆるRCE(Remote Code Execution)を達成できてしまう。

まず、今回のニュースの主役である「Chaos Mesh」とは何かを説明しよう。現代のシステムは、複数の小さな部品(サービス)が連携して動く「分散システム」や「マイクロサービスアーキテクチャ」が主流だ。このようなシステムは、一部の部品が故障しても全体が停止しないように、高い耐障害性を持つことが求められる。この耐障害性を実際にテストするために使われるのが「カオスエンジニアリング」という手法だ。カオスエンジニアリングとは、システムが本番環境で実際に遭遇するかもしれない障害を、意図的に、しかし制御された形で引き起こし、システムの反応を観察して改善していくプロセスを指す。Chaos Meshは、特にコンテナオーケストレーションツールであるKubernetes上でこのカオスエンジニアリングを実現するためのオープンソースツールだ。例えば、特定のアプリケーションが動いている「Pod」と呼ばれる最小単位を強制的に停止させたり、サーバー間のネットワーク通信を一時的に遮断したり、CPUやメモリに過度な負荷をかけたりと、様々な障害を人工的に発生させることができる。これにより、開発者や運用者は、システムが予期せぬ事態に直面したときに、どのように振る舞うか、どこに弱点があるかを発見し、事前に対応策を講じることができるのだ。

次に、「Kubernetes」について簡単に触れておこう。Kubernetesは、現代のクラウドネイティブな開発において中心的な役割を果たすプラットフォームだ。アプリケーションを「コンテナ」という技術を使ってパッケージ化し、それらを複数のサーバーで構成される「クラスタ」と呼ばれる環境で、効率的かつ自動的にデプロイ、管理、スケーリングするためのツールである。クラスタ内の各サーバーは「ノード」と呼ばれ、アプリケーションの実行に必要なリソースを提供する。前述のPodは、Kubernetes上で実行されるアプリケーションの最小の実行単位で、一つ以上のコンテナから構成される。Kubernetesが提供する強力な管理機能によって、開発者はインフラストの複雑さから解放され、アプリケーション開発に集中できる。そのため、多くの企業で基盤システムとして採用されており、そのセキュリティはアプリケーション全体の安定性や信頼性に直結すると言える。

今回のニュースで指摘された脆弱性は、Chaos Meshが内部で使用している「GraphQL」という技術に関連するものだ。GraphQLは、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)のためのクエリ言語であり、クライアントが必要とするデータをサーバーから効率的に取得するために広く利用されている。このGraphQLの実装に存在する複数の重大な欠陥を悪用することで、攻撃者はChaos Meshのセキュリティ保護を迂回し、正規のユーザーとして認証されていなくても、システム上で任意のコードを実行できてしまう状況が生まれる。これが「遠隔からのコード実行(RCE)」だ。RCEが達成されてしまうと、攻撃者はターゲットとなるシステム上で、まるで自分がそのシステムを直接操作しているかのように、あらゆるコマンドを実行できるようになる。

RCEの危険性はそれだけにとどまらない。Chaos Meshは本来、システムの耐障害性をテストするために意図的に障害を注入する強力な機能を持っている。攻撃者がRCEによってChaos Meshを完全に制御できるようになると、この「障害注入」の機能を悪用し、本来の目的とは全く異なる悪意のある操作を行うことが可能になる。例えば、クラスタ内の重要なPodをすべてシャットダウンさせたり、基幹システム間のネットワーク通信を完全に切断したり、さらにはKubernetesクラスタそのものの設定を変更して、クラスタ全体を乗っ取ることが可能になるのだ。これは、システムが停止するだけでなく、攻撃者にシステム内部の情報が盗まれたり、悪意のあるソフトウェアが植え付けられたりする可能性も意味する。さらに深刻なのは、この脆弱性を悪用するために必要な条件が「Minimal in-cluster network access」(クラスタ内部への最小限のネットワークアクセス)だけで済むという点だ。これは、外部からの直接的なアクセスだけでなく、何らかの経路で一度クラスタ内部に侵入された場合に、より広範囲な攻撃に発展するリスクが高いことを示している。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、今回のニュースはセキュリティの重要性を改めて認識する良い機会となるだろう。まず、開発や運用の現場で利用するツールやライブラリは、たとえそれがオープンソースであっても、常に最新の状態に保ち、セキュリティパッチが公開されたら速やかに適用することが不可欠である。強力な機能を持つツールは、その強力さゆえに、一度悪用されると甚大な被害をもたらす可能性がある。カオスエンジニアリングツールのような、システムに意図的に変更を加えることができるツールは特に、そのセキュリティが非常に重要だ。また、Kubernetesのような基盤となるプラットフォームのセキュリティ対策も同様に重要であり、レイヤーごとのセキュリティ意識を持つことが求められる。セキュリティは、システム構築の初期段階から継続的に考慮すべき最優先事項であり、決して後回しにしてはならないという教訓を示している。

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