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【ITニュース解説】Cloudflare's Self-DDoS Outage: How a Simple React Bug Knocked Out the Dashboard

2025年09月16日に「Dev.to」が公開したITニュース「Cloudflare's Self-DDoS Outage: How a Simple React Bug Knocked Out the Dashboard」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Cloudflareのダッシュボードが、Reactのバグにより3時間停止した。`useEffect`の誤った使い方で大量のAPIリクエストが自己発生し、自身のシステムを過負荷にしたのが原因だ。コードレビューやテスト、自動化の重要性を再認識させる事例。

ITニュース解説

世界的に有名なクラウドセキュリティプロバイダーであるCloudflareが、2025年9月12日に大規模なシステム障害に見舞われた。この障害は、なんとCloudflare自身のシステムが自分自身にDDoS攻撃を仕掛けるという、非常に珍しい形で発生した。DDoS攻撃とは、たくさんのコンピューターから一度に大量のリクエストを送りつけ、対象のシステムをパンクさせる攻撃のことだ。今回は外部からの攻撃ではなく、Cloudflareのエンジニアが開発したシステム内の些細なプログラミングミスが、意図せず同じような状態を引き起こしてしまった。原因は、ユーザーが使うダッシュボードという管理画面の更新に含まれていた、あるバグだった。このバグが、システムに対して不要なAPIリクエストを大量に発生させ、Cloudflareのシステム管理部分(コントロールプレーン)を過負荷状態に陥らせたのだ。

障害は短い時間で進行した。まず、協定世界時(UTC)の16時32分に、問題のバグを含んだ新しいダッシュボードのプログラムが公開された。続いて17時50分には、顧客のデータ管理を行う「テナントサービスAPI」という重要な部分の新しいバージョンが展開された。そのわずか7分後、17時57分には、ダッシュボードのバグが原因で、システムに対して全く同じAPIコールが突然大量に発生し始めた。これにより、テナントサービスは処理しきれない状態になり、システム障害へと向かっていった。

Cloudflareのエンジニアたちは、この異常事態に気づき、すぐにシステムの処理能力を上げるためにリソースを追加したり、問題の修正プログラムを適用したりといった対応に追われた。一時的にはシステムの状態が改善する兆候も見られたが、その後適用された別の修正が予期せぬ悪影響を及ぼし、さらに状況が悪化した。最終的に、過剰なリクエストの流れを制限するために、システム全体に一時的なアクセス制限(グローバルレートリミット)をかける措置が取られた。そして19時12分、問題の原因となっていたダッシュボードの変更を元の状態に戻す「ロールバック」作業が行われ、これによりダッシュボードの機能は完全に回復した。

この混乱の中で特筆すべきは、Cloudflareの主要なネットワークサービス、つまりウェブサイトのセキュリティや高速化といった顧客への基幹サービスは一切中断しなかった点だ。これは、システムの管理機能(コントロールプレーン)と、実際にデータ処理を行う機能(データプレーン)が厳密に分離されていたためで、管理機能側の問題が基幹サービスに波及するのを防いだ。

今回の障害の根本原因は、ウェブアプリケーション開発でよく使われる「React」という技術の中の「useEffect」という機能の誤った使い方にあった。ダッシュボードのプログラムでは、このuseEffectという機能の「依存配列」という部分で、毎回新しいオブジェクトが作り直されてしまっていた。Reactの仕組みでは、この依存配列にある要素が「新しいもの」と判断されると、useEffect内の処理が何度も実行されてしまう。結果として、ダッシュボードは、テナントAPIに対して不必要なAPIコールを洪水のように送り続け、これが収拾のつかない悪循環を生み出し、CloudflareのコントロールプレーンAPIが処理能力を超えてしまったのだ。もし、この論理的なミスが、プログラムを公開する前の「コードレビュー」という開発者同士のチェックや、「回帰テスト」という既存機能が正常に動くかを確認するテストの段階で発見されていれば、今回の障害は避けられた可能性があった。

システム障害が発生した際の復旧作業は、主に三つの迅速な行動に集中して行われた。一つ目は、前述の通り、グローバルレートリミットを適用して、システムに押し寄せる過剰なリクエストを抑制すること。二つ目は、テナントサービスの処理能力を高めるために、追加の「ポッド」(システムの実行単位)を増やすことでリソースを拡張すること。三つ目は、問題の原因となっていたコードの変更やAPIの更新を元の状態に戻す「ロールバック」を行うことだった。さらに、エンジニアたちはシステムの監視体制を改善し、エラーの追跡やメタデータ(データの付加情報)の収集能力を高めた。これにより、今後同じような問題が発生した際に、それが正当なリクエストなのか、それとも無限ループに陥ったリトライ(再試行)なのかを区別しやすくなった。Cloudflareは将来に向けて、自動でデプロイ(システム公開)のロールバックを行う「Argo Rollouts」のような安全対策や、システムが過負荷にならないようリトライの間隔を賢く調整する機能の導入も約束した。

今回の約3時間にわたる障害は、大規模なシステムを運用するあらゆる開発チームにとって、いくつかの重要な教訓を示した。まず、「可観測性(Observability)」の重要性だ。リアルタイムでシステムの状況を監視し、詳細なログを記録することで、システムの異常をより迅速に発見できる。次に、「ガードレール(Guardrails)」の活用だ。自動的なロールバック機能や、新しい機能を一部のユーザーにだけ先行して公開する「カナリアデプロイメント」のような仕組みがあれば、問題発生時の影響範囲を最小限に抑えられる。また、「キャパシティ計画(Plan for Capacity)」も欠かせない。基幹となるサービスは、予測不能な急激なアクセス増加にも耐えられるよう、常に十分な予備リソースを用意しておく必要がある。そして何よりも、「デプロイ前のテストとレビュー」が極めて重要だ。包括的なコードレビューや自動テストは、特にダッシュボードのようなユーザーインターフェースに潜む微妙な論理的欠陥を見つけるのに役立つ。

今回のケースでは、自動コードレビューツールが事前に問題を検知し、障害を防げた可能性が非常に高かった。近年、AIを活用したツールを含む自動コードレビューツールは、現代のソフトウェア開発において不可欠な存在となっている。これらのツールは、プログラムが実際に動く前に、コード内の構文エラー、潜在的なバグ、読みにくいコード(コードの匂い)、そしてリスクのあるパターンを自動的にスキャンしてくれる。Cloudflareの事例では、このような賢いコードレビューツールであれば、問題のuseEffectの依存配列における間違いを指摘できたはずだ。AIベースのツールは、プロジェクト全体のコードや関連するドキュメントの文脈を理解し、危険な論理構造を特定する。まるで、開発者がプログラムをコミット(変更履歴を保存)したり、プルリクエスト(コード変更の提案)を提出したりする際の「シートベルト」のような役割を果たす。自動コードレビューは、エラー検出の初期段階を担い、人間がより複雑なアーキテクチャの検討に集中できるようにする。これにより、開発チームは限られた時間の中で、より少ないバグで、より堅牢なシステムをリリースできるようになるのだ。

すべての開発者がこの事件から学ぶべき重要な点がある。それは、人間によるコードレビューと、静的アナライザ、AIエージェント、セキュリティスキャナーといった自動ツールを組み合わせて利用することだ。特に、AIコードレビューは、GitHubやGitLabなどのバージョン管理システムと連携させ、開発ワークフローに直接統合することが望ましい。さらに、システムのデプロイメントにおける安全対策、例えば自動ロールバックやカナリアデプロイメントを自動化し、システムの監視能力を常に高めておくことで、問題の兆候を早期に捉えられるようになる。

Cloudflareの今回の障害は、たとえ世界トップクラスのエンジニアリングチームであっても、単純なミスによって大きな問題を引き起こす可能性があることを証明した。しかし、強力なコード管理体制、徹底したレビュー、そしてインテリジェントな自動化を組み合わせることで、こうしたリスクは大幅に軽減できる。大規模なシステムを開発・運用するチームにとって、Panto AIのようなツールを導入することは、小さな変更でありながら、将来の大きな障害を防ぐための有効な手段となるだろう。

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