【ITニュース解説】Deploying and Managing HashiCorp Vault in Kubernetes with HA and Raft Storage
2025年09月14日に「Dev.to」が公開したITニュース「Deploying and Managing HashiCorp Vault in Kubernetes with HA and Raft Storage」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
機密情報管理ツールHashiCorp VaultをKubernetes上に高可用性(HA)とRaftストレージでデプロイし、安全かつ堅牢なシステムを構築する手順を解説。インストール、ノード結合、アンシール、トラブルシューティングまで網羅する。
ITニュース解説
この解説では、HashiCorp Vaultという機密情報管理ツールを、Kubernetesというコンテナ管理基盤上で、高可用性(HA)とRaftストレージを組み合わせて安全にデプロイし、運用する方法について説明する。
まず、HashiCorp Vaultとは何か。これは、ソフトウェア開発やシステム運用において扱う、データベースのパスワード、APIキー、認証用の証明書といった様々な「機密情報」を一元的に、そして極めて安全に管理するためのツールだ。これらの機密情報をアプリケーションのコードや設定ファイルに直接書き込んでしまうと、情報漏洩のリスクが高まる。Vaultは、機密情報を安全な場所に保管し、必要なときだけ、厳格な認証と認可を経てアプリケーションやユーザーに提供する仕組みを提供する。これにより、セキュリティが強化され、機密情報の利用状況も追跡できるようになる。
次に、Kubernetesについてだ。近年、アプリケーションを小さな独立した「コンテナ」という単位で動かすのが主流になっている。Kubernetesは、これらのコンテナ化されたアプリケーションを、自動的にデプロイ、管理、拡張するための強力なプラットフォームだ。例えば、ユーザーからのアクセスが増えてアプリケーションの負荷が高まると、自動的にコンテナの数を増やして処理能力を向上させたり、もしコンテナに問題が発生すれば自動的に再起動したりする。これにより、開発者はアプリケーションの運用に手間をかけることなく、機能開発に集中できる。
そして、「高可用性(HA: High Availability)」と「Raftストレージ」について解説する。高可用性とは、システムの一部が故障したり停止したりしても、全体としてのサービス提供が途切れないように設計された状態を指す。Vaultのような極めて重要なシステムが停止すると、他の多くのサービスも動かなくなってしまうため、高可用性は必須の要件となる。この記事では、この高可用性を「Raftストレージ」(または「Integrated Storage」とも呼ばれる)という方法で実現する。Raftストレージは、Vault自身が内部的にデータを複数のノード(サーバー)間で同期させ、常に一貫性を保ちながら運用するための仕組みだ。これにより、外部に別途データベースを用意することなく、Vault自体が高可用性を実現できる。例えば、Vaultを構成するサーバーのうち一台が故障しても、Raftアルゴリズムによって自動的にもう一台がリーダーとして機能を引き継ぎ、サービスを継続できる。
具体的なデプロイ手順としては、まずKubernetesクラスターが動作しており、コンテナアプリケーションのデプロイを簡単にするツールであるHelmがインストールされていることが前提となる。次に、kubectl create namespace vaultというコマンドで、Kubernetesクラスター内にVault専用の「Namespace(名前空間)」を作成する。これは、Vaultに関連するすべてのリソースを他のアプリケーションから論理的に隔離し、管理しやすくするための区画だ。その後、VaultのHelmリポジトリを追加し、values.yamlという設定ファイルを作成する。このファイルには、Vaultを高可用性モードで、Raftストレージを使って、そして3つのレプリカ(Vaultのインスタンス)で動かすための詳細な設定を記述する。例えば、各Vault Podに必要なメモリやCPUのリソース量、データが保存されるパスなどを指定する。この設定ファイルに基づいて、helm installコマンドを実行すると、Kubernetes上にvault-0、vault-1、vault-2という3つのVault Podがデプロイされ始める。
デプロイされたばかりのVaultは「Sealed(封印状態)」と呼ばれる特別な状態にある。これは、Vaultが自身の暗号化キーを解除しておらず、機密情報にアクセスできない、非常にセキュリティの高い状態だ。この封印を解き、Vaultが機能できるようにするには「Unseal(封印解除)」という操作が必要となる。まず、3つのPodのうちvault-0に対してvault operator initコマンドを実行してVaultを初期化する。この時、5つの「復旧キー(Unseal Key)」と1つの「初期ルートトークン」という非常に重要な情報が生成される。これらのキーは、Vaultが再びSealed状態になった際に、その封印を解除するために使われる。特に復旧キーは、設定した数(今回は3つ)を集めて入力しないとVaultをUnsealできないため、厳重に管理しなければならない。初期化後、vault-0を3つの復旧キーを使ってUnsealする。これによりvault-0はアクティブなリーダーノードとして機能を開始する。しかし、この時点ではvault-1とvault-2はまだUnsealされていないフォロワーの状態だ。これらのノードもRaftクラスタに参加させるため、vault operator raft joinコマンドを使ってvault-0に結合させる。最後に、vault-1とvault-2もそれぞれ3つの復旧キーを使ってUnsealすることで、すべてのVault Podが高可用性構成の一部として機能し始め、いつでも機密情報を安全に管理できる状態となる。
すべてのPodがUnsealされ、クラスタに結合された後、vault statusコマンドを実行することで、各Vault Podの状態を確認できる。このコマンドの出力でHA Enabledがtrueになっていること、そしてHA Modeがactive(リーダーノード)またはstandby(フォロワーノード)になっていることを確認する。これにより、Vaultが高可用性モードで正しく動作しており、もしリーダーノードに障害が発生しても、残りのスタンバイノードが自動的にリーダーに昇格し、サービスが中断することなく継続されることが保証される。
システムを運用する上で、予期せぬ問題はつきものだ。記事では、よく発生するトラブルとその対処法も紹介している。例えば、Kubernetesのリソース定義が重複してデプロイできない場合や、Helmでのアップグレードがうまくいかない場合、あるいはVaultのPodが期待通りに起動しない場合などだ。特に、Vaultのデータが保存される「Persistent Volume Claim」(PVC)と呼ばれる永続ストレージに関連する問題は、データの整合性に影響を与える可能性があるため、慎重な対応が必要となる。問題が発生した際には、Podのログを確認したり、PVCの状態をチェックしたり、場合によってはRaftクラスタから故障したノードを削除して再参加させるといった手順を踏むことで、システムの健全性を回復できる。これらのトラブルシューティングの手順を知っておくことは、安定した運用にとって非常に重要だ。
まとめると、この一連の作業は、HashiCorp Vaultという強力な機密情報管理ツールを、Kubernetesという現代的なコンテナ管理プラットフォーム上で、高可用性とRaftストレージの組み合わせによって極めてセキュアで耐障害性の高い形でデプロイし、運用するための手順を詳細に解説したものだ。適切な初期化、ノードのクラスタへの参加、そして各ノードのUnseal操作は、Vaultが持つ機密情報を安全に保護し、システム全体の信頼性を高める上で不可欠なステップとなる。これらの技術を理解し、適切に設定することで、組織は機密情報管理のセキュリティレベルを飛躍的に向上させ、システムの安定稼働を確保できるようになる。