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【ITニュース解説】Hybrid Cloud vs Multi-Cloud: Choosing the Right Strategy in 2025

2025年09月18日に「Dev.to」が公開したITニュース「Hybrid Cloud vs Multi-Cloud: Choosing the Right Strategy in 2025」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

クラウド戦略の選択肢として、ハイブリッドとマルチクラウドがある。ハイブリッドは自社設備と外部クラウドを組み合わせ、規制対応や安定運用に適す。マルチクラウドは複数の外部クラウドを使い分け、柔軟性や障害耐性を高める。企業は目的により最適な戦略を選ぶ。

ITニュース解説

現代のビジネスにおいて、クラウドの利用はもはや選択肢の一つではなく、事業運営の基盤となっている。しかし、現在は「クラウドを使うべきか」という議論の段階は過ぎ去り、代わりに「どのクラウドモデルがビジネスに最も価値をもたらすか」という問いが重要視されている。この議論の中心にあるのが、「ハイブリッドクラウド」と「マルチクラウド」という二つの主要な戦略だ。これらはしばしば混同されがちだが、そのアーキテクチャやビジネスにもたらす成果には明確な違いがある。これらの違いを正確に理解することは、企業が技術戦略をコンプライアンス(法規制遵守)、財務ガバナンス(予算管理)、そしてイノベーション目標に合致させる上で非常に重要になる。

まず、ハイブリッドクラウドとは、企業のプライベートなITインフラ(自社で管理するデータセンターなど)と、外部のパブリッククラウドサービス(AWS、Google Cloud、Azureといったインターネット経由で提供されるクラウド)を組み合わせて利用するアプローチを指す。この戦略の大きな特徴は、企業が機密性の高いデータや非常に重要なシステムを、自社で厳しく管理できるプライベートな環境に置きつつ、一方で、柔軟な拡張性が必要で機密性の低いワークロード(処理)にはパブリッククラウドを利用できる点にある。例えば、医療機関は、患者の個人情報保護に関する法律(HIPAAなど)を遵守するため、患者データを自社のプライベートクラウドに厳重に保管する。しかし、その患者データを匿名化して分析するような処理には、大量の計算資源を柔軟に利用できるパブリッククラウドを活用するといった使い方が可能だ。金融機関も同様に、顧客の口座情報や取引履歴といった中核となる記録はプライベートシステムで管理し、顧客向けのモバイルアプリやウェブサービスといった比較的新しいサービスはパブリッククラウド上に展開するといった運用を行う。ハイブリッドクラウドの主な利点としては、厳格なコンプライアンス要件やデータ主権(データが特定の国の法律に服従すること)への対応が容易であること、ユーザーに近い場所で重要なワークロードをホストすることで処理の遅延を減らせること、そして既存のレガシーシステム(古い情報システム)を段階的に新しいクラウド環境へ移行させる際に、スムーズな近代化の道筋を提供できることが挙げられる。しかし、課題も存在する。プライベートインフラを維持するには、サーバー機器の購入や電力、管理など多額の設備投資(CAPEX)が必要となり、初期費用が大きくなる傾向がある。また、プライベート環境とパブリックサービスを安全かつ効率的に統合するには、ガバナンス(運用管理の仕組み)やセキュリティに関する高度なスキルを持つITチームが不可欠であり、その複雑性も考慮しなければならない。

次に、マルチクラウド戦略について説明する。これは、一つのパブリッククラウドプロバイダーに限定せず、複数の異なるパブリッククラウドプロバイダーのサービスを同時に利用するアプローチだ。例えば、企業がコンピューティング処理にはAmazon Web Services(AWS)を利用し、ビッグデータ分析にはGoogle Cloud、そして企業内のアプリケーション統合にはMicrosoft Azureを使う、といった具合に、それぞれのプロバイダーの得意分野を組み合わせて活用する。この多様なプロバイダーの組み合わせは、システムの回復力(レジリエンス)を高め、特定のベンダーへの過度な依存(ベンダーロックイン)を防ぐ効果がある。また、各プロバイダーが提供する多種多様なサービスの中から、特定の目的に最適な「ベストオブブリード」なサービスを選択できる利点もある。音楽ストリーミングサービスのSpotifyは、このマルチクラウド戦略の良い例だ。彼らは機械学習の処理にGoogle Cloudを、世界中へのコンテンツ配信にはAWSを、そして社内の業務システムにはAzureを利用することで、各クラウドプロバイダーの強みを最大限に活かしている。マルチクラウドの主な利点としては、特定のベンダーに縛られにくくなるため交渉力を高められること、複数のプロバイダーから専門性の高いサービスを選んで利用できること、システム全体の可用性と冗長性(一部が停止しても運用を続けられる能力)を向上させられること、そしてグローバルな規模で事業を展開する際の柔軟性が高まることが挙げられる。しかし、マルチクラウドにもデメリットがある。複数のパブリッククラウドプラットフォームにわたるガバナンス(運用管理)は非常に複雑になりがちで、各プロバイダー間のコストの可視性を維持することも困難を伴う。また、チームはそれぞれのクラウドエコシステム(環境)に関する専門知識を習得する必要があり、それには時間と労力がかかる。ワークロード(処理)の配置計画が規律なく行われると、予期せぬコスト増加につながるリスクも存在する。

では、2025年において、企業はどちらのモデルを選択すべきなのだろうか。正しい選択は、企業のビジネスにおける優先順位によって大きく異なる。ハイブリッドクラウドは、特に厳格なコンプライアンス要件を持つ業界や、システム遅延に非常に敏感なアプリケーションを運用する企業、あるいは既存のレガシーインフラへの依存度が高い企業に適していると言える。一方、マルチクラウドは、革新的なサービス開発を重視し、システムの弾力性、最高のサービスへのアクセス、そしてグローバルなスケーラビリティを優先する企業に向いている。中には、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの両方の利点を組み合わせた「ハイブリッドマルチクラウド」という戦略を採用する組織もある。これは、プライベートインフラと複数のパブリッククラウドプラットフォームを組み合わせることで、自社での制御と外部の柔軟性の両方を同時に実現しようとするアプローチだ。

どちらのクラウド戦略を選択するにしても、FinOps(Financial Operations:財務運用)という考え方は非常に重要になる。FinOpsは、クラウドの利用コストを最適化し、財務的な透明性とアカウンタビリティ(説明責任)を確保するためのプラクティスだ。ハイブリッドクラウド環境においては、FinOpsはプライベートシステムへの設備投資(CAPEX)とパブリックサービスへの運用コスト(OPEX)のバランスを取り、全体的なコスト効率を最大化する役割を果たす。マルチクラウド環境においては、FinOpsは複数のプロバイダーにまたがるコストの可視性を確保し、無駄な支出を防ぎながら、財務的な説明責任を維持するために不可欠な要素となる。

結論として、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドのどちらが優れているかという問いに、万能な答えは存在しない。企業は自社のコンプライアンス要件、イノベーション目標、そして財務ガバナンスのニーズに最も合致する戦略を選択する必要がある。ハイブリッドクラウドは、厳格な制御とコンプライアンスへの対応を強みとする。一方、マルチクラウドは、比類ない柔軟性とシステムの回復力(レジリエンス)を提供する。最終的な意思決定は、自社の固有の状況と将来の展望を深く考慮した上でなされるべきだ。

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