【ITニュース解説】Java Virtual Threads Tutorial
2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Java Virtual Threads Tutorial」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Javaに新機能「仮想スレッド」が登場。OSではなくJVMが管理する軽量なスレッドで、従来よりも遥かに低コスト。これにより、シンプルな同期コードのまま数百万規模の並行処理が可能となり、アプリケーションのスケーラビリティを大幅に向上させる。
ITニュース解説
Javaに導入された「仮想スレッド(Virtual Threads)」は、並行処理のプログラミングをよりシンプルでスケーラブルにするための画期的な技術である。これはProject Loomの一環として開発され、Javaの実行環境であるJVMが直接管理する非常に軽量なスレッドだ。この技術を理解するために、まず従来のスレッドが抱えていた課題から見ていく必要がある。
従来、Javaで並行処理を行う際には「プラットフォームスレッド」が使われてきた。これはオペレーティングシステム(OS)が直接管理するスレッドであり、一つ作成するごとにOSレベルのリソースを確保するため、メモリ消費量が大きく、作成コストも高いという特徴があった。そのため、同時に起動できるスレッドの数は数千程度が限界とされ、Webサーバーのように数万、数百万の同時リクエストを処理する必要があるアプリケーションでは、スレッドの数がボトルネックになりがちだった。この問題を解決するために、開発者は非同期プログラミングやリアクティブプログラミングといった複雑な手法を用いる必要があった。
仮想スレッドは、この課題を根本から解決するために設計された。プラットフォームスレッドがOSに直接対応する「重い」存在だったのに対し、仮想スレッドはJVMが管理する「軽い」存在である。作成コストが非常に低く、メモリ消費もごくわずかなため、数百万単位の仮想スレッドを同時に生成してもシステムに大きな負荷をかけることがない。
この軽量さを実現しているのが、仮想スレッドの巧みな動作原理だ。仮想スレッドは、実際の処理を実行する際には「キャリアスレッド」と呼ばれる土台となるプラットフォームスレッドを利用する。一つのキャリアスレッドの上で、多数の仮想スレッドが次々と処理を実行していくイメージだ。ここで重要なのは、仮想スレッドがデータベースへの問い合わせや外部APIの呼び出しといったI/O処理で待機状態(ブロッキング)に入った時の挙動である。プラットフォームスレッドの場合、このような待機時間中はスレッドが占有され、他の処理を実行できなかった。しかし仮想スレッドは、待機状態に入るとJVMによって一時的に停止され、キャリアスレッドから切り離される。そして、そのキャリアスレッドは別の実行可能な仮想スレッドの処理に割り当てられる。I/O処理が完了して待機状態が終わると、JVMは再びその仮想スレッドをキャリアスレッドに割り当てて処理を再開させる。これにより、プラットフォームスレッドを無駄に待機させることなく、常に効率的にCPUリソースを使い切ることが可能となり、圧倒的な数のタスクを同時に捌けるようになる。
この仕組みにより、開発者は大きな恩恵を受けられる。最も大きなメリットは、コードのシンプルさを保ったまま高いスケーラビリティを実現できる点だ。従来はスレッドをブロックさせないために、コールバックやリアクティブフレームワーク(ReactorやRxJavaなど)を駆使した複雑な非同期コードを書く必要があった。しかし仮想スレッドを使えば、I/O処理で待機が発生してもコストが非常に低いため、上から下に順番に処理を記述する同期的な(命令的な)スタイルでコードを書いても、システム全体のスケーラビリティが損なわれない。これにより、コードの可読性や保守性が大幅に向上する。
仮想スレッドの作成方法はいくつか提供されている。最も基本的なのは、Thread.ofVirtual().start() を使用する方法だ。また、多数のタスクを管理する場合には Executors.newVirtualThreadPerTaskExecutor() を使って、タスクを投入するたびに新しい仮想スレッドを生成するExecutorServiceを作成するのが便利である。さらにJava 21からは、関連する複数の非同期タスクをまとめて管理しやすくする「構造化並行性(Structured Concurrency)」という仕組みも導入されており、より安全で堅牢な並行処理コードを記述できるようになった。
現代のJava開発で広く使われているSpring Bootフレームワークでも、仮想スレッドは簡単に利用できる。設定ファイル(application.propertiesなど)に spring.task.execution.type=virtual という一行を追加するだけで、@Async アノテーションを付けた非同期メソッドなどが自動的に仮想スレッドで実行されるようになる。これにより、WebアプリケーションのAPIエンドポイントでデータベースアクセスや外部サービス呼び出しのような時間のかかる処理を行う際に、簡単にスケーラビリティを確保できる。
ただし、仮想スレッドは万能ではない。その真価が発揮されるのは、ネットワーク通信やファイルアクセスといったI/O処理が中心のタスク(I/Oバウンドなタスク)である。一方で、純粋な計算処理のようにCPUを継続的に使用するタスク(CPUバウンドなタスク)の場合、仮想スレッドのメリットは少なく、むしろ従来のプラットフォームスレッドを使用する方が適している場合がある。
総括すると、仮想スレッドはJavaにおける並行処理の常識を覆す技術であり、ブロッキング処理のコストを劇的に下げることで、シンプルで直感的なコードのまま、極めて高いスケーラビリティを持つアプリケーションを構築することを可能にする。これにより、多くの開発者が複雑な非同期プログラミングから解放され、より本質的なビジネスロジックの実装に集中できるようになるだろう。