【ITニュース解説】Kiro Agent Orchestration Patterns
2025年09月16日に「Dev.to」が公開したITニュース「Kiro Agent Orchestration Patterns」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
イベント駆動型アーキテクチャと専用フレームワークを活用し、複数のAIエージェントが独立して連携するシステムを構築した。これにより、従来の複雑なシステムや多数のマイクロサービスに比べ、効率的でスケーラブルなシステムを低コストで実現できることを示した。
ITニュース解説
このニュース記事は、イベント駆動型アーキテクチャを用いて複数の独立したソフトウェアエージェントを連携させる「マルチエージェントシステム」の構築方法と、その利点について解説している。特に、ハッカソンという短期間のイベントで複数のアプリケーションを開発した経験を通じて、従来のシステムが抱える問題点と、イベント駆動型が提供する解決策を具体的に示している。
従来のマルチエージェントシステムは、各エージェントが直接互いに通信し、共通のデータを共有したり、相手の応答を待って処理が停止したりする構造が一般的であった。これは、まるでスパゲッティのように絡み合ったコードになりやすく、システムが大規模化したり、負荷が高まったりすると、問題が発生しやすかった。例えば、一つのエージェントの変更が他のエージェントに予期せぬ影響を与えたり、システム全体の処理速度が低下したりすることが挙げられる。
これに対し、記事ではイベント駆動型アーキテクチャがこの問題を解決すると述べている。イベント駆動型では、各エージェントは直接互いに呼び出し合うのではなく、「イベント」と呼ばれるメッセージを通じて間接的に通信する。例えば、市場データが更新されたら「市場データ受信イベント」が発生し、ユーザーが質問したら「ユーザー質問イベント」が発生する。各エージェントは、自身が関心のある特定のイベントが発生するのを待ち受け、そのイベントが発生したときにのみ反応して処理を実行する。
この方式の最大の利点は「疎結合」である。各エージェントは他のエージェントが何をしているかを知る必要がなく、ただ特定のイベントに反応するだけでよい。これにより、エージェント間の依存関係が極めて少なくなり、それぞれのエージェントを独立して開発、テスト、デプロイできる。また、処理が非同期で行われるため、一つのエージェントが別のエージェントの応答を待つことでシステム全体が停止することがなくなる。複数のエージェントが同時に並行して動作し、全体の効率が向上する。
記事の筆者は、金融市場分析を行う「FinAgent2」というアプリケーションを構築する際に、MotiaというフレームワークとMastraというオーケストレーションフレームワークを活用した。Motiaは非同期のイベントトリガーによるワークフロー管理を可能にし、Mastraはエージェント間の協調を容易にする。具体的には、市場アナリストエージェントが市場イベントを監視して分析結果をイベントとして発行し、リスクマネージャーエージェントがポートフォリオの変更イベントを購読してリスク評価を行うといった具合に、各エージェントが自身の役割に特化し、イベントを通じて連携する。さらに、Mem0という仕組みを導入することで、各エージェントが独自の記憶(コンテキスト)を保持し、過去の分析結果を覚えておくことが可能になり、より高度な判断ができるようになった。
イベント駆動型アーキテクチャは、しばしば「マイクロサービス」と比較される。マイクロサービスもシステムを小さな独立したサービスに分割するが、多くの場合、サービス間は直接的なAPI呼び出しで連携する。筆者は、自身のハッカソン経験から、イベント駆動型であれば、マイクロサービスのように多数のコンテナを立ち上げる必要がなく、より少ないリソースと運用コストで同様の機能を実現できることを示唆している。実際に、マイクロサービス版が8つ以上のコンテナを必要としたのに対し、イベント駆動型ではわずか2つのコンテナで運用できたという。
開発過程ではいくつかの課題にも直面した。例えば、クラウド環境(Azure App Service)でのリアルタイム通信の制約や、使用したフレームワークのドキュメント不足、さらには多数のエージェントがそれぞれ記憶を持つことによるメモリ消費量の増大といった問題である。これらの課題に対しては、代替通信手段の導入や、オープンソースへの貢献、メモリの積極的なクリーンアップといった工夫で対応した。
最終的に構築されたシステムは、Alpacaというサービスからリアルタイムの市場データを取得し、複数のエージェントが連携して複雑な分析ワークフローを実行し、200ミリ秒以内の応答時間で有用な情報を提供できるまでに至った。このシステムは、必要に応じて水平にスケール(拡張)することも可能である。
この経験から得られた教訓として、記事は以下の点を挙げている。多くのユースケースではイベント駆動型アーキテクチャがマイクロサービスよりも適していること、車輪の再発明を避けて既存のフレームワークを活用することの重要性、クラウド利用料がアーキテクチャの選択に影響を与えうること、マルチエージェントオーケストレーションではエージェントを自律的にさせイベントを通じて協調させることが重要であること、そしてエージェントが記憶を保持すること(メモリ永続化)が不可欠であることなどである。
記事の筆者は、このシステムをオープンソース化し、コミュニティでさらに発展させていきたいという展望を述べている。将来的には、市場の暴落や規制変更など、より多様なイベントに対応できるように機能を拡張し、イベントリプレイ機能を使って過去の市場データをシステムで再現し、その性能を検証するバックテストの仕組みも提供したいと考えている。
このように、イベント駆動型マルチエージェントシステムは、従来の密結合なシステムが抱える課題を解決し、より柔軟でスケーラブルなアプリケーション構築を可能にする強力なアプローチであると、このニュース記事は伝えている。