【ITニュース解説】One-Day Builds: From Stagnation to Skill Mastery
2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「One-Day Builds: From Stagnation to Skill Mastery」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
エンジニアの停滞感を打破するスキルアップ手法「1日ビルド」を紹介。Eコマースの決済機能を題材に、AWS LambdaとServerless Frameworkでサーバーレス開発を実践。Stripe利用の容易さと、自前実装時のセキュリティ基準の重要性を解説する。
ITニュース解説
システムエンジニアとしてキャリアを歩む中で、日々の業務がルーティン化し、成長が停滞していると感じる時期が訪れることがある。新しい技術を学びたいと思っても、業務で最適なプロジェクトに巡り会えるとは限らない。このような状況を打破するためには、受け身の姿勢ではなく、自ら学びの機会を創出する主体的な行動が求められる。その有効なアプローチの一つが「1日開発(One-Day Builds)」である。これは、特定のスキル習得を目的とし、実用最小限の製品(MVP)を1日で構築するという学習方法だ。ここでは、ECサイトの決済機能をテーマにした「1日開発」の実践例を通して、新しい技術を学び、スキルを習得していくプロセスを解説する。
今回の開発では、将来のより大きなプロジェクトで必要となるスキルを磨くため、ECサイトの中でも特に複雑で学びの多い「決済チェックアウト機能」に焦点を当てた。システムは、ユーザーが直接触れるフロントエンドと、その裏側でデータ処理を担うバックエンドに分かれている。フロントエンドには、現代的なWebアプリケーション開発で広く採用されているJavaScriptライブラリのReactと、コードの品質と保守性を高めるTypeScriptが採用された。開発環境の構築にはViteという高速なビルドツールが使用され、効率的な開発が目指された。一方、バックエンドにはAWS Lambdaを中心としたサーバーレスアーキテクチャが選択された。サーバーレスとは、開発者がサーバーの存在を意識することなく、プログラムコードの実行に集中できる仕組みである。物理的なサーバーの購入やOSの管理、セキュリティパッチの適用といった煩雑な作業をクラウドサービス提供者(この場合はAWS)に任せられるため、開発者はアプリケーションのロジック開発に専念できるという大きな利点がある。
AWS Lambdaを利用した開発には、AWSが提供するオンライン開発環境のCloud9を使ったり、作成したコードをZIPファイルにまとめてアップロードしたりする方法がある。しかし、これらの方法にはいくつかの課題が存在する。例えば、開発中のコードがGitのようなバージョン管理システムの管理下に置かれず、変更履歴の追跡が難しくなることや、自分の開発用PC(ローカル環境)で手軽にプログラムを実行したりデバッグしたりすることが困難であるという点だ。これらの課題を解決するために導入されたのが「Serverless Framework」というツールである。このフレームワークを使うと、どのようなインフラ(サーバー構成やデータベースなど)が必要かを設定ファイルにコードとして記述することができる。これは「Infrastructure as Code(IaC)」と呼ばれる考え方で、インフラの構成をコードで管理することで、誰が作業しても同じ環境を正確に再現でき、変更管理も容易になる。Serverless FrameworkはAWS Lambdaとスムーズに連携し、バックエンドのコードをフロントエンドのコードと同じリポジトリで一元管理することを可能にする。さらに、ローカル環境でのテストもサポートしているため、開発者はクラウドにデプロイする前に、手元のPCで迅速に動作確認とデバッグを行うことができる。
決済機能の実装には、世界中で広く利用されているオンライン決済サービス「Stripe」が採用された。Stripeを導入する最大のメリットの一つは、開発者がクレジットカード情報の取り扱いに関する複雑なセキュリティ要件から解放される点にある。クレジットカード情報を自社のサーバーで直接扱う場合、「PCI DSS」という非常に厳格な業界データセキュリティ基準に準拠する必要がある。これには、カード情報の暗号化、サーバーの物理的・論理的なセキュリティ対策、アクセスログの監視など、多岐にわたる専門的な知識と継続的な運用が求められ、スタートアップや小規模な開発チームにとっては大きな負担となる。Stripeは、これらの処理をすべて代行してくれる。Stripeが提供する「Stripe Elements」のようなUIコンポーネントやホスト型決済ページを利用することで、ユーザーが入力したカード情報は開発者のサーバーを経由することなく、直接Stripeの安全なサーバーに送信される。これにより、開発者はPCI DSS準拠の負担を大幅に軽減でき、アプリケーション本来の機能開発に集中できる。また、Stripeは非常に優れたテスト環境を提供しており、実際のお金が動くことなく、決済フロー全体をシミュレートできるテスト用のクレジットカード番号が多数用意されている。これらを使えば、決済が成功する正常なケースはもちろん、カードの有効期限が切れている、残高が不足しているといった異常系のシナリオも簡単にテストすることが可能だ。決済が失敗した際に、ユーザーに対して分かりやすく、適切なエラーメッセージを表示できるかといったUIの挙動まで含めて、本番リリース前にアプリケーションの品質を徹底的に検証することができる。
この「1日開発」を通じて得られた最も重要な教訓は、Stripeのような外部サービスを賢く利用することで、決済機能の実装は想像以上にシンプルになるということ、そして、その背景にあるセキュリティの重要性を理解することであった。自ら課題を設定し、手を動かして小規模なプロジェクトを完成させる経験は、断片的な知識を実践的なスキルへと昇華させる。日々の業務に満足できない時こそ、このような挑戦を通じて新しい技術を学び、自身のポートフォリオを充実させることが、キャリアを切り拓く上で極めて重要である。ここで得られたスキルと自信は、社内での新しいプロジェクトへの抜擢や、より魅力的な仕事への転職につながる可能性を秘めている。エンジニアとしての成長は、常に自らの手で掴み取るものなのである。